改正民事執行法について(主要な改正点)

特に、離婚後、親権を得ていない側(一般的には、夫(債務者となります))の養育費の不払い等に対する債権者(一般的には、妻)による強制手続きが強化・拡充される運びとなりました。なお、養育費の不払い等に対する債権に限らず、一般の貸金などの債権についても当てはまります。

1.債務者以外の第三者からの情報取得手続(新設)

現行の制度として、「財産開示手続」というものが存在します。これは、債務者を裁判所に呼び出して、「勤務先はどこですか?」「どこの金融機関に預貯金⼝座を有していますか?」「株式や不動産は有していますか?」といった質問をすることができるという⼿続なのです。しかし、質問できるだけで、例えば、債務者が当該質問を受けた翌日に、自身の取引金融機関に出向き、そこに有する預貯金口座を解約し別の金融機関に移し替えてしまえば、何ら実効性は伴わないと言えます。そこで、その実効性を担保するために、もう一歩踏み込んで、改正民事執行法において新設された「第三者からの情報取得手続」を活用することになります。

例えば、

①養育費を⽀払う義務がある者の勤務先に関する情報を裁判所が市町村(特別区を含む)や日本年金機構などに照会する。これは、要するに、債務者が勤務先から支給される給与(報酬)や賞与についての情報ということを意味しています。ただし、債務者が勤務先に対して有する給与債権についての情報取得手続は、養育費の不払い等の債権や人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみの申立に限られています。(第206条)

②養育費を⽀払う義務がある者が有する預貯金口座に関する情報を裁判所がその取引金融機関(支店名が不明であれば、その本店)に照会する。(第207条第1項)

③養育費を⽀払う義務がある者が有する有価証券(株式や投資信託)に関する情報を裁判所が証券会社(不明であれば、証券保管振替機構(ほふり))に照会する。(第207条第2項)

④養育費を⽀払う義務がある者が有する不動産に関する情報を裁判所が法務局に照会する。(第205条)

といったことが可能になるというものです。

なお、「第三者からの情報取得手続」を採る前提として、先ずは、「財産開⽰⼿続」を債務者の住所地を管轄する地⽅裁判所に申し⽴てる必要があります。また、「財産開⽰⼿続」の申⽴てをするためには、債権者が既に知っている債務者の財産について強制執⾏をしたとしても、完全な弁済を得ることができない旨を疎明(証明より低位性)する必要があります。さらに、上記のうち①と④については、「財産開⽰⼿続」が実施(財産開示期日)されてから3年以内に、別途「第三者からの情報取得⼿続」を申し⽴てる必要があります。

2.財産開示手続の見直し

①「財産開示手続」の申立ができるのは、法改正前までは「執⾏⼒ある債務名義(判決、和解調書(裁判上の和解)、調停調書、審判書等)」の正本を有する者のみで、公正証書と仮執⾏宣⾔付⽀払督促は対象外でしたが、改正民事執行法により、それらも対象となりました。養育費の支払いを確実なものとするために、公正証書をもって債権保全を図った者にとっては使い勝手が良くなったと言えます。

 「支払督促」は、相手方(債務者)の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てる法的手続きです。「支払督促」の申立書に不備等がなければ、簡易裁判所の書記官が相手方(債務者)に対して、「支払督促」を発付することになります。「支払督促」には訴額等に上限はありません。ただ、相手方(債務者)に「支払督促」の正本が送達された後、2週間以内(具体的に言えば、例えば、令和2年6月11日に同正本が送達されたとすると、その翌日の同年6月12日から6月25日までの間に相手方(債務者)から「仮執行宣言前の督促異議の申立て」がなされた場合には、訴訟手続きに移行することになります。その場合、紛争の対象が金額にして140万円以下の事件については簡易裁判所の扱いですが、140万円超の場合は地方裁判所の扱いになります。ただし、訴訟手続きへ移行後、「仮執行宣言付(勝訴)判決(債務名義のひとつで、仮執行宣言付支払督促もそのひとつ)」を得て、民事執行手続をとる場合には、紛争の対象額に関わらず、地方裁判所の扱いになります。なお、簡易裁判所の扱いの中で、60万円以下の金銭の支払いを巡るトラブルに限って利用できる手続きとして「少額訴訟」というものがあります。この「少額訴訟」によって「仮執行宣言付(勝訴)判決」を得て、民事執行手続きをとる場合には、その扱いは簡易裁判所になるとのことです。

「支払督促」手続きの流れについては、岡山簡易裁判所において公表されている文書(i_44_2)がありますので、ご参照下さい。また、「支払督促」の申立てに当たって必要となる費用については、訴額等に基づき定められた申立手数料(収入印紙)のほかに、相手方(債務者)が1人の場合には、相手方(債務者)に対する支払督促正本送達の費用として合計1,099円の郵便切手、債権者に対する支払督促発付通知の費用として84円の郵便切手などが必要となりますが、申立書作成及び提出費用として一律(800円)に認められているものも合わせ、それらは相手方(債務者)に対して請求できることになります。「支払督促」申立手続費用については、同じく岡山簡裁裁判所において公表されている文書(i_44_3)がありますので、合わせてご参照下さい。

②財産開示期日に債務者が不出頭や虚偽の陳述をした場合、改正前は30万円以下の過料に過ぎませんでしたが、改正後は、6箇月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するという具合に強化されました。

民事執行法の改正については、上記以外にも実施される予定です。その部分については、「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律の概要」(i_44_1)をご参照下さい。なお、施行は一部(1.④)を除いて公布日である令和1年5月17日から1年を超えない範囲内で政令で定める日である令和2年4月1日(1.④については令和3年4月1日になるものと思われます)です。

コメントを残す