雇用保険 特定受給資格者及び特定理由離職者に係る件について


令和2年6月12日更新

始めに
人事労務トピックス一覧表にある「失業等給付の拡充について」も是非、ご参照下さい。

また、令和2年5月27日に閣議決定された2020年度第2次補正予算案が第201回通常国会において可決成立(令和2年6月12日)しましたので、下記事項が実施されることになります。

●新型コロナウィルス感染症に伴い、雇用保険の「失業等給付」の中の「求職者給付」のうち「基本手当」の特例で、新型コロナウィルス感染症の影響による自己都合での離職については、「正当な理由のある自己都合による離職」として「給付制限」を課さない措置が講じられることになります。(なお、この事項についてだけは、既に実施されている模様です)

新型コロナウイルス感染症の感染予防を理由としてやむを得ず離職した者について、「特定受給資格者」として規定されることになります。
新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により休業を強いられた労働者のうち、休業中に賃金を受けることができなかった者(つまり、事業主から休業手当が支給されなかった者)に対して、雇用保険法に基づく「雇用安定事業」として、当該労働者の失業の予防を図るための必要な事業(「新型コロナウィルス感染症対応休業支援金」を支給する事業)や当該事業に準ずるものとして、雇用保険の被保険者でない者を対象に特別の給付金を支給することができる措置が講じられることになります。

●当該影響に対応するため、基本手当の所定給付日数を延長する雇用保険法の特例措置が講じられることになります。

が実施されることになります。その詳細については、Information一覧表にある「雇用保険法の特例措置について」において掲載しています。是非、ご覧下さい。
また、厚生労働省第140回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において配布されました上記実施事項に係る資料が公表されています。合わせて、ご参照下さい。


では、本題に戻ります

雇用保険の基本手当は、一般被保険者が離職により失業した場合の生活保障として支給されるものですが、その中でも、倒産や解雇等の理由により離職を余儀なくされた者(特定受給資格者)を対象とするものや、特定受給資格者以外のものであって、①期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者②正当な理由のある自己都合により離職した者(いずれも特定理由離職者)を対象とするものについては、様々な配慮がなされていますので、ここで整理しておきたいと思います。なお、今回は「有期労働契約」に係る部分に特化して整理することとします。

※特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準はこちら(16_1_1.pdf へのリンク)から

【特定受給資格者(※)の場合で有期労働契約に係るもの】➣A
●期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されず、かつ、当該労働者が当該労働契約の更新を希望していたにもかかわらず更新されなかったこと。

●期間の定めのある労働契約の締結に当たって、当該労働契約が更新されることが明示され、なおかつ、確約されていた場合において、当該労働契約が更新されず、かつ、当該労働者が当該労働契約の更新を希望していたにもかかわらず更新されなかったこと(前記に該当する場合を除く)。
特定受給資格者には、上記2種類以外に、倒産(破産、⺠事再⽣、会社更⽣等の各倒産⼿続の申⽴て⼜は⼿形取引の停⽌等)に伴い離職した者や解雇(⾃⼰の責めに帰すべき重⼤な理由による解雇を除く)により離職した者など多くの種類がありますが、今回は倒産や解雇等については言及しません。

【特定理由離職者の場合で有期労働契約に係るもの】➣B
●期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した場合で、当該労働者が当該労働契約の更新を希望していたにもかかわらず更新されなかった場合に限ります。当該労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など契約の更新について明⽰はあるが、更新することの確約まではなかった場合が当てはまります(上記Aに該当する場合は除く)。

【基本手当の所定給付日数】
●「特定受給資格者」となるAの場合と、「特定理由離職者(正当な理由のある自己都合により離職した者(※補足1)を除く)」となるBの場合で平成21年3月31日から令和4(2022)年3月31日までの間に受給資格に係る離職の日がある場合において、基本手当の所定給付日数は下記の(表1)の通りとなり、一般の受給資格者のそれ(表2)よりも手厚くなっています。
(表1)

※補足1➣体⼒の不⾜、⼼⾝の障害、疾病、負傷、視⼒・聴⼒・触覚の減退等により離職した者など多くの種類があり、給付制限を⾏う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。
※補足2➣受給資格に係る離職⽇が平成29年3⽉31⽇以前の場合の⽇数
「被保険者であった期間」とは「算定基礎期間*1とほぼ同じ意味となるもので、原則として同一の事業主の適用事業に被保険者として雇用されていた期間(つまり、入社日から退職日までの期間)のことを言い、所定給付日数を決めるための期間となるものです。
*1 なお、この「算定基礎期間」については、下記①②をすべて満たせば、複数の事業主の適用事業における被保険者であった期間を通算することができます。
①直前の被保険者資格の喪失から新たな被保険者資格の取得までの期間が1年以内の場合
②当該直前の被保険者資格の喪失の際に、基本手当や特例一時金(短期雇用特例被保険者に係るもの)等の支給を現実に受けていない場合(つまり、受給資格の決定を受けただけであって、それらの支給を受けていなければいい)
また、下記の場合にはそれらを「算定基礎期間」に含めることができません。ご留意下さい。
③育児休業給付金の支給に係る育児休業期間(ただし、そのうちの就業している日数分については除外されます)
④被保険者となったことの確認*2があった日の2年前の日より前の期間(原則)➣(例外=2年を超える場合の遡及適用))については、下記の通りです。
(例外)
当該2年前の日より前の期間(つまり、2年を超える期間)があるとされる者について、その者に係る被保険者資格取得届が事業主により提出されず、かつ、賃金台帳等の所定の書類により、当該2年前の日より前に被保険者が負担すべき雇用保険料の額に相当する額がその者に当時支給された賃金から控除されていたことが明白である場合には、当該明白となる最も古い日(当該古い日が特定できない場合には、当該明白となる最も古い月の初日)が、その者の被保険者資格取得日とみなされます。
*2 被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことを厚生労働大臣が確認するからです。当該確認は、事業主による(遡及)届出、被保険者又は被保険者であった者の請求(「雇用保険の被保険者となったこと(被保険者でなくなったこと)の確認請求(聴取)書」(16_1_10.pdf へのリンク)をもって行うことになります)及び厚生労働大臣の職権のうちいずれかの方法により行われます。
なお、当該被保険者となったことの確認の前提として、雇用保険被保険者資格取得届出の有無を照会する方法があります。被保険者からの照会手続きとしては、「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」(16_1_11.pdf へのリンク)もって、事業主からの照会手続きとしては、「事業所別被保険者台帳(写)交付請求書」(16_1_12.pdf へのリンク)をもって行うことができます。

●基本手当の所定給付日数(一般の受給資格者の場合)
(表2)


【有期契約労働者の離職理由の取扱いの変更について】(16_1_4.pdf へのリンク)
上記しましたA及びBについての取扱いとは別に、今般、平成30年2月5日以後の有期労働契約の更新上限(通算契約期間や更新回数の上限を言います)到来による離職の場合につき、離職証明書の記載において留意すべき事項が定められました。
何を意味するかと言えば、
①採用当初にはなかった契約更新上限がその後追加された、又は不更新条項が追加された場合
②採用当初の契約更新上限がその後引き下げられた場合
③平成24年8月10日以後に締結された「4年6箇月以上5年以下」が契約更新上限となる有期労働契約につき、その更新上限が到来したことで離職した場合
※なお、「平成24年8月10日以後」というのは、有期労働契約が、使用者の更新拒否により契約期間満了により終了した場合(つまり「雇止め」)について、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合にこのことを無効にする旨の判例上のルール(つまり、「雇止め法理」)を「労働契約法」に法定化し、当該法が施行された日が平成24年8月10日だということを意味しています。「雇止め法理」については、人事労務トピックス「労働契約法の改正について」の中の2.雇止めのルールに説明箇所がありますので、ご参照下さい。

いずれも、「無期転換ルール」(人事労務トピックス「労働契約法の改正について」の中の1.無期転換ルールに説明箇所がありますので、ご参照下さい)の回避を意図するための方策と位置付けられると思われますが、契約更新上限の追加や引き下げなどが就業規則に規定され、当該変更が合理的なものであり、変更後の就業規則を労働者に周知した上での措置であれば致し方ない面はあると考えられます。なお、今般の取扱いが上記しましたAあるいはBとしての取扱いを意味するのかは現時点では明らかになっておらず、その部分については情報を収集した上で別途報告したいと思います。

<具体的な記載方法について>
●上記①~③のいずれかに該当する場合には、離職証明書(雇用保険被保険者離職票-2)の「⑦離職理由欄」は「3労働契約期間満了等によるもの」➣「(1)採用又は定年後の再雇用時等にあらかじめ定められた雇用期限到来による離職」を選択し➣便宜的に「(2)労働契約期間満了による離職」中の『① 下記②(※)以外の労働者(1回の契約期間○箇月、通算契約期間○箇月、契約更新回数○回)』に契約に係る事実関係を記載するとともに、最下部の「具体的事情記載欄(事業主用)」にそれぞれ以下の通り記入して下さいとのことです。
※ちなみに、②は、『労働者派遣事業に雇用された派遣労働者のうち常時雇用される労働者(いわゆる、旧「特定派遣労働者」のことを言います)以外の者(いわゆる、旧「登録派遣労働者」のことを言います)』についてのものです。
Ⅰ 上限追加
Ⅱ 上限引下げ
Ⅲ 4年6箇月以上5年以下の上限
実際の離職証明書(雇用保険被保険者離職票-2)(16_1_5.pdf へのリンク)では、青色の下線部分のところが該当のところになります。



【基本手当の延長給付について】
所定給付日数分の基本手当だけでは再就職に至らない場合も考えられるため、それを超えて基本手当を延長して支給する制度があります。これを「基本手当の延長給付」と言います。
①訓練延長給付②広域延長給付③全国延長給付④個別延長給付⑤地域延長給付(暫定措置)があります。このうち、今回は、平成29年4月1日から新設された④個別延長給付⑤地域延長給付について特記したいと思います。なお、従来からあった「個別延長給付(暫定措置)」は④⑤の新設に伴い廃止されています。
<個別延長給付>(16_1_7.pdf へのリンク)
上記AやBに該当する者のうち、下記の①~③のいずれかに該当し、かつ、再就職に必要な職業指導を行うことが適当であると認定された者が対象となります。
①心身の状況が以下のいずれかに該当する者➣原則60日分の延長(ただし、所定給付日数が270日又は330日である者は30日分の延長)
・難治性疾患者
・発達障害者
・障害者雇用促進法第2条1号に規定する障害者
②雇用されていた適用事業が「激甚災害」の被害を受けたため離職を余儀なくされた者等であって、かつ、所定給付日数分の受給終了日において、 これらの指定地域に居住している者➣原則120日分の延長(ただし、所定給付日数が270日又は330日である者は90日分の延長)
③雇用されていた適用事業が「激甚災害」その他災害救助法の適用となる災害等を受けため離職を余儀なくされた者等であること(上記②に該当する場合を除く)➣原則60日分の延長(ただし、所定給付日数が270日又は330日である者は30日分の延長)

<地域延長給付>(16_1_8.pdf へのリンク)
上記AやBに該当する者のうち、雇用機会が不足する地域として指定された地域内に居住する者で、かつ、再就職に必要な職業指導を行うことが適当であると認定された者が対象となります。➣原則60日分の延長(ただし、所定給付日数が270日又は330日である者は30日分の延長)
なお、地域延長給付は暫定措置であるため、令和4(2022)年3月31日以前に離職した者が対象となります。

【離職理由コードと国民健康保険の「非自発的失業者に対する保険料の軽減について」】
雇用保険被保険者離職票-2「⑦離職理由欄」の右端にある「離職区分」について、解説致します。( )は離職理由コード
1A(11) 1B(12) 2A(21) 2B(22) 3A(31) 3B(32) ➣「特定受給資格者」➣給付制限はなく、所定給付日数の優遇もあり ➣ 参考までに、弊職が実際に携わった事例(電子申請対応)(下記画像))で紹介しておきます。右端「離職区分」欄(ハローワークで記載する部分)の3Aの箇所に✔が記されているケースで、いわゆる事業主からの「退職勧奨」の場合に該当しています。つまり、「特定受給資格者」になっているわけです。なお、個人情報等の部分は黒塗りしています。

2C(23) ➣「特定理由離職者(期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した場合で、当該労働者が当該労働契約の更新を希望していたにもかかわらず更新されなかった場合)」➣給付制限はなく、所定給付日数の優遇もあり
3C(33) 3D(34) ➣「特定理由離職者(正当な理由のある自己都合により離職した者)」➣給付制限はないものの、所定給付日数の優遇もなし
●2D(24) ➣契約期間満了により退職(更新なしと明示があった場合)➣給付制限はないものの、所定給付日数の優遇もなし
●2E(25) ➣定年退職、移籍出向➣給付制限はないものの、所定給付日数の優遇もなし
●4D(40・45) ➣正当な理由のない⾃⼰都合退職給付制限は原則3箇月*3で所定給付日数の優遇もなし
●5E(50・55) ➣自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇➣給付制限は原則3ヶ月で所定給付日数の優遇もなし

※下線部分は、神戸市の国民健康保険の「非自発的失業者に対する保険料の軽減について」(16_1_9.pdf へのリンク)の対象者となります。国民健康保険料は前年の所得により算定されますが、これらの対象者に関しては、前年の給与所得を30/100として算定し、また、軽減期間は離職日の翌日の属する月から当該年度の翌年度末までとのことです。ご参考になさって下さい。

*3 なお、令和1年12月25日に開催された厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において公表された「雇用保険部会報告」によれば、この3箇月間の給付制限期間については、安易な離職を防止するという給付制限の趣旨に留意しつつ、転職を試みる労働者が安心して再就職活動を行うことができるよう支援する観点から、その給付制限期間を5年間のうち2回までに限り2箇月に短縮する措置を試行することとする旨の方針が示されています。


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