労災保険の「特別加入制度」


労災保険は原則として、労働者に該当しない者や海外派遣者には適用されません。ただ、これらの者が労働者と同じような業務に従事する場合には、同じような業務災害や通勤災害を被るおそれがあります。その場合に備えて、そのような者にも労災保険に任意加入できることを認めています。これを「特別加入制度」と言います。

【特別加入者の種類】
①第一種特別加入者→中小事業主等<下記に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)及び労働者以外(労働者であれば、当然に労災保険の対象になるから)で当該事業主の事業に従事する者(労働者に該当しない 、家族従事者や当該事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の役員等)>「特別加入者制度(中小事業主等用)」(19_1.pdf へのリンク)
(中小事業主等と認められる企業規模)
・業種→金融業、保険業、不動産業、小売業  常時使用する労働者数→50人以下
・業種→卸売業、サービス業  常時使用する労働者数→100人以下
・業種→上記以外の事業  常時使用する労働者数→300人以下
②第二種特別加入者
・一人親方等<労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者およびその事業に従事する者で、代表的なものとして、個人タクシー業者や個人貨物運送業者(例えば、「赤帽」など)、大工・左官・とび職人など>「特別加入制度(一人親方等用)」(19_2.pdf へのリンク)
・特定作業従事者「特別加入制度(特定作業従事者用)」(19_3.pdf へのリンク)
(1)特定農作業従事者
(2)指定農業機械作業従事者
(3)国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
(4)危険有害作業を行う家内労働者及びその補助者
(5)常時労働者を使用しない労働組合等の一人常勤役員
(6)介護作業従事者

※なお、家政婦紹介所の紹介等により個人家庭に雇用され、家事、育児等の作業に従事する者(「家事支援従事者」と言います)について、H30年度から、特定作業従事者の対象のひとつとされました。従来、家政婦紹介所からの紹介等により個人家庭において雇用される「家事使用人」については、労働基準法上の労働者とされておらず、労災保険の適用対象でもありませんでしたが、今回の改正により、労働者に準ずる扱いとなり、特別加入制度の対象にするということになりました。「家事支援従事者」として「介護作業従事者」と同じ保険分類とされます。その保険料率は0.5%(5/1000)となります。

③第三種特別加入者→海外派遣者「特別加入制度(海外派遣者用)」(19_4.pdf へのリンク)

なお、以下では、①と②について確認したいと思います。

【特別加入するための要件】
①中小事業主等の場合「特別加入申請書(中小事業主等)」(19_5.pdf へのリンク)
・その雇用する労働者について労災保険関係が成立していること
・労働保険の事務処理を労働保険事務組合*に委託していること
・その事業に従事する者を包括して加入すること
・当該事業主が労働保険事務組合を通じて申請し、所轄の都道府県労働局長の承認を受けること

*当該労働保険事務組合については、弊職が所属する兵庫県社会保険労務士会の関連団体である「兵庫SR経営労務センター」がその機能を有することとなっており、加入をお考えの事業主様がいらっしゃいましたら、同センターをご活用いただきたいと思います。詳細につきましては、「兵庫SR経営労務センター ホームページ」をご参照下さい。

②一人親方等の場合「特別加入申請書(一人親方等)」(19_6.pdf へのリンク)
一人親方等の団体(特別加入団体)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。その加入手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体*が行うことになっています。

*当該特別加入団体については、「兵庫SR経営労務センター」の中に併設された、建設業の一人親方を対象とした「兵庫SR建設業労災協会」がその機能を有することとなっており、加入をお考えの方がいらっしゃいましたら、同協会をご活用いただきたいと思います。詳細につきましては、 「兵庫SR建設業労災協会 特別加入のしおり」(19_7.pdf へのリンク) をご参照下さい。

③特定作業従事者の場合「特別加入申請書(特定作業従事者)」(19_6.pdf へのリンク)
特定作業従事者の団体(特別加入団体)を事業主、特定作業従事者を労働者とみなして労災保険の適用を行います。その加入手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体*が行うことになっています。

*当該特別加入団体については、例えば、兵庫県内の当該特別加入団体のひとつである「JA兵庫六甲」を例に取れば、その組合員であることが必要ですが、特定農作業従事者を対象としたものであれば「JA兵庫六甲農作業安全協議会」に、指定農業機械作業従事者を対象としたものであれば「JA兵庫六甲農業機械安全使用協議会」に加入する必要があります。詳細につきましては、 「農業者のため労災保険ご案内(JA兵庫六甲)」 (19_8.pdf へのリンク)をご参照下さい。

【特別加入の主な効果】
・特別加入者にも通勤災害制度は適用されますが、第二種特別加入者のうち、個人タクシー業者や個人貨物運送業者、漁船による水産動植物の採捕の事業を行う者(船員が行う事業は除き、いわゆる漁船による自営漁業者)、特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者、危険有害作業を行う家内労働者及びその補助者については、通勤の実態がないという事情から当該制度は適用されません。
・保険給付の中の、「二次健康診断等給付」や「ボーナス特別支給金」といったものは支給されません。
・労災保険の給付額を算定する基礎となる「給付基礎日額」については、特別加入者が希望する額に基づいて都道府県労働局長が決定した額がその額となります。「給付基礎日額」は3,500円~25,000円まで16階級あり、その中から特別加入者が選択することになります。家内労働者については、さらに、下限を2,000円とし、2,500円・3,000円の3段階と合わせ19階級用意されています。
・年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に それぞれの事業に定められた保険料率( 「労災保険率表」(19_9.pdf へのリンク)・「第二種・第三種特別加入保険料率表」(19_10.pdf へのリンク)をご参照下さい)を乗じたものとなります。

【平成30年度からの改正点】
①上記しました「家事支援従事者」を特定作業従事者の対象に追加しました。
②労災保険率*1及び第1種特別加入保険料率が改定されました。
③第二種特別加入保険料率*2が改定されました。
④労務費率*3が改定されました。
*1 平成30年度からの労災保険料率は全業種平均で0.02%(0.47%(4.7/1000)→0.45%(4.5/1000))引き下げるられています。なお、その他の各種事業は0.3%(3/1000)で据置きとなりました。
労災保険率は、厚生労働大臣が業種ごとに定めているもので、各業種の過去3年間の災害発生状況等を考慮して、原則3年ごとに改定されています。従って、次回改定は平成33年度の予定です。
*2 一人親方等の特別加入保険料率である第二種特別加入保険料率は18業種のうち9業種が引き下げられています。
*3 労災保険料の算定に当たって使用する「賃金総額」を正確に算定することが困難な「請負による建設の事業」では、簡易的に、請負金額に所定の「労務費率」を乗じた額をもって「賃金総額」とする特例が認められていますが、一部の事業につき、その労務費率が引き下げられています。
※②~④の改定表(19_11.pdf へのリンク)はこちらから

⑤労働者が労働災害等で死亡又は4日以上休業した時に、事業者が遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなければならないと定められている「労働者死傷病報告」(19_12.pdf へのリンク)が平成31年1月8日から改正されています。ご留意下さい。
外国人労働者数の増加傾向を踏まえ、外国人労働者に係る労働災害の正確な把握のため、労働者死傷病報告(様式第23号)(現行)(19_13.pdf へのリンク)に国籍・地域及び在留資格を記入する欄を設けるとともに、職員記入欄、備考等について所要の改正が行われています。

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