建設業に係る社会保険等加入について


建設業においては、健康保険・厚生年金保険及び雇用保険(以下「社会保険」という)について、法定福利費(事業主が負担する社会保険料)を適正に負担しない事業主(「保険未加入企業」)が存在していることから、建設業における社会保険の加入について、元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にするために、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」が策定され、平成24年11日1に施行されたものである。なお、その後の社会保険未加入対策の取組状況を踏まえ、同ガイドラインが改訂(平成28年7月28日から施行)され、その改訂版(21_1.pdf へのリンク)の中でその取扱いについて明確化されたものである。

※ 改定版の概要についてはこちら(社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの改訂等について(概要))(21_2.pdf へのリンク)から

【同ガイドライン改訂の主な内容】
建設業者が義務的に負担しなければならない社会保険料たる法定福利費は「通常必要と認められる原価」つまり必要経費として適正に確保されなければならないものである。下請負人の見積書に法定福利費が明示され又は含まれているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、法定福利費相当額を一方的に削減したりして「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあるので、そのようなことがないよう、元請・1次下請け間のみならず、再下請負の場合でも、法定福利費が内訳明示された見積書は尊重されなければならない。

【同ガイドラインの取扱いについて】
①適切な保険への加入が確認されない作業員の扱いについて
同ガイドラインでは、遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由(例えば、伝統建築の修繕など、当該未加入の作業員が工事の施行に必要な特殊な技能を有しており、その入場が認められなければ工事の施行が困難となる場合など)がない限り現場への入場を認めないとすべきであるとしている。
②雇用と請負の明確化
・元請企業は、「作業員名簿」に記載された作業員が「雇用されている労働者*1」か、「企業と請負関係にある者*2」か疑義がある場合は、作成した下請企業に確認を求めるなど行うこと。
・下請企業は、労働者である社員については保険加入を適切に行うとともに、請負関係にある者については、当該の者と「請負契約」を締結するとともに、「再下請負(つまり、外注になる)通知書」(21_6.pdf へのリンク)を適切に作成すること。

*1→雇用保険についてはすべての労働者につき保険に加入させる必要がある。また、健康保険・厚生年金保険については、従業員5人未満の個人事業主に使用される者や法令上の「適用除外」に該当する者を除き、保険に加入させる必要がある。

<雇用保険>
労働者を1人でも使用する事業は、雇用保険が強制的に適用される「強制適用事業」となるからである。建設業もそのひとつである。
<健康保険・厚生年金保険>
国・地方公共団体及び法人は業種にかかわらず、常時1人でも使用すれば、「強制適用事業所」に、さらに、個人経営で農林水産業、飲食業や理美容業といったサービス業、自由業及び宗教業以外の業種(「適用業種(16業種)」)の事業で常時5人以上の従業員を使用する事業の事業所はやはり「強制適用事業所」になるからである。したがって、個人経営で「適用業種」(つまり、建設業)であっても5人未満の従業員の場合は原則として、健康保険・厚生年金保険の適用はありません。この場合には、当該従業員は個人で「国民健康保険」「国民年金」に加入することになります。ただし、この場合でも、厚生労働大臣の認可(他にも要件があります)を受けることで、当該事業所を「任意適用事業所」とすることで当該従業員に健康保険・厚生年金保険の適用を受けさせることができます。

*2→この場合は、個人で「国民健康保険」「国民年金」に加入することになります。

【まとめ】
下請企業は労働者である社員と請負関係にある者の二者を明確に区分し、労働者である社員についての保険加入手続を適切に行うことが求められます。今後は、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いをすることになります。くれぐれもご留意下さい!!

※ 国交省が公表している「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」における現場入場等の取扱いについてと題する文書はこちら(21_3.pdf へのリンク)から、またその文書に添付されている資料1・資料2はこちら(21_4.pdf へのリンク)から

※また、国交省より、本課題の対応策として、元請企業が作業現場において下請企業の作業員が労働者に該当するか否かについて判断をし、当該作業員が社会保険の適用対象かどうかを判断するためのツールが建設業団体等を通じて建設業者に配付されることになりました。これは、国交省と全国社会保険労務士会連合会連名による『「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」における「適切な保険」の確認シート』(21_10.pdf へのリンク)というものです。是非ご活用下さい。

※人事労務トピックスにある『労災保険の「特別加入制度」について』はこちらのページから

【社会保険の適用促進対策について】
厚労省において現在取り組まれている対策として、建設業、貨物自動車運送業、旅客自動車運送業、労働者派遣業について、それら業種への国交省、都道府県、都道府県労働局による事業許可等の際に、これら許可行政庁において社会保険の加入状況について確認し、加入が確認できない場合には、日本年金機構等への情報提供が行われているところである。参考までに、兵庫県作成の「健康保険等の加入確認書類等について(お知らせ)」(21_7.pdf へのリンク)と題する文書を掲載します。また、提出が求められている様式二十号の三(第四条関係)「健康保険等の加入状況」(21_8.pdf へのリンク)についても掲載します。
<新たな取組として>
同省所管の飲食店営業、食品製造業、理容・美容業、社会福祉事業等の業種が事業を開始するに当たっては、地方自治体等への新規営業許可申請時等の際に、地方自治体等に社会保険への加入状況について確認していただき、その確認ができなかった場合には、厚労省への事業所情報の提供を求める取組が平成29年7月から実施されているとのことである。
※詳細については、同省作成の「社会保険の適用促進対策について」(21_9.pdf へのリンク)と題する文書をご参照下さい。

なお、厚生労働省職業安定局委託事業として「雇用管理研修」が実施されます。建設業において選任義務のある「雇用管理責任者」等を対象としたもので、建設労働者雇用改善法に基づき、労働者の募集、雇い入れ、配置から退職に至るまでの雇用管理に必要な知識を習得することを目的とした講習である「基礎講習」と、若年労働者と熟練労働者が円滑なコミュニケーションを取りながら働くことのできる環境づくりの手法や、技術や技能を習得する前に離職する若者の多い建設業の職場におけるモチベーションの維持・向上の手法を習得することを目的とする「コミュニケーションスキル等向上コース」があります。参考までに。
※委託先である株式会社労働調査会の「リーフレット」はこちら(雇用管理研修のご案内(平成29年度))(21_5.pdf へのリンク)から

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