子育て支援制度Ⅲ


令和1年8月29日更新

第1子の育児休業中に妊娠し、その後、第2子が誕生するケースはよくあることだと思われます。少子化という世の趨勢からすれば、むしろ歓迎すべきことかもしれません。事例を挙げ、その実務的な対応につき説明させていただきます。なお、理解を深めていただくためにも、下方の【時系列表】をご覧いただくか、出力の上、お手元に置いて照合しながら読み進めていただければ幸いです。

【第1子の経緯】
(産前産後休業)
●出産予定日→H27.11/20  出産日→H27.11/10
●出産予定日を基準とした「産前休業」→H27.10/10から11/20(42日間) 「産後休業」→H27.11/21からH28.1/15
●出産日を基準とした「産前休業」→H27.9/30から11/10(42日間) 「産後休業」→H27.11/11からH28.1/5
なお、当該産婦は、H27.10/10から10/31までは有給休暇の取得や公休を織り交ぜることで無給を回避し、H27.11/1から産休(無給)(つまり、11月を「産前産後休業」開始月とし、11月分から健康保険・厚生年金保険の保険料免除の対象とする旨の取扱いとしたもの)となったもの。ただ、「産前産後休業」に伴う健康保険・厚生年金保険の保険料免除制度においては、当該期間中における給与が有給、無給であるかは問われないことから、当該事務処理は適切ではなく、出産日を基準とした「産前休業」期間となるH27.9/30から11/10を対象とするべきであったと思われます。ただし、上記の状況によると、H27.9/30から10/9までは「労務に服さなかった期間」ではなかったと思われることから、実際の「産前休業」期間としては、H27.10/10から11/10までになり、「産前産後休業」開始月がH27.10月となり、免除月数が1箇月増えていたことになるわけです。
●出産予定日前の出産(H27.11/10)となったことから、実際の「産前休業」はH27.10/10から11/10になるわけです。
●強制的な「産後休業」→H27.11/11からH28.1/5(56日間)
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」への記載内容はこちら(23_3.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。なお、この事例は出産予定日より前に出産した場合に当てはまり、出産年月日はもちろんのこと、、産前産後休業終了予定年月日も、そして、本来であれば、産前産後休業開始年月日も変わってきますので、出産後に、「共通記載欄(取得申出)」➈から⑩及び「A.変更」欄に記載の上、提出する必要があります。

(育児休業)
●「育児休業」開始日→H28.1/6 
●育児休業法の育児休業終了日(原則)→子が1歳に達する日(誕生日の前日)であるH28.11/9
なお、雇用保険法の「育児休業給付金」の支給終了日(原則)はH28.11/8となります。1日の違いがありますのでご注意下さい(以下同じ)。
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」への記載内容はこちら(23_4.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、育児休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。

●その後、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により、「育児休業」の延長の申請を行い、子が1歳6箇月に達する日(H29.5/9)まで延長されています。
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」への記載内容はこちら(23_5.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、育児休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。なお、この場合は、「延長」ではなく「新規申出」になることから、「共通記載欄(取得申出)」に改めて記載することになるとのことです。

【時系列表】


【第2子及び第3子(多胎)の経緯】
(産前産後休業)
●出産予定日→H29.6/13  出産日→H29.6/20
●出産予定日を基準とした「産前休業」→H29.3/8から6/13(98日間 多胎のため)+7日間 「産後休業」→H29.6/14からH29.8/8
つまり、第1子の育児休業中に妊娠し、その延長後の育児休業終了日(H29.5/9)後に出産したケースで、H29.3/8から第1子の延長後の育児休業終了日(H29.5/9)までの間が重複(第1子の「育児休業」の残りの期間と第2子及び第3子の「産前休業」の一部の期間が重なっている)期間となるものである。ということは、第2子及び第3子の「産前産後休業」が開始(H29.3/8)することで、第1子の「育児休業」はその前日(H29.3/7)に終了することを意味し、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」(23_10.pdf へのリンク)にある「B.終了」欄に育児休業等終了年月日(H29.3/7)を記載した上で提出する必要があります。なお、雇用保険法の「育児休業給付金」の支給終了日(延長後)はH29.3/6となります。
予定より早く「育児休業」を終了した場合には、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」(記入例)(23_11.pdf へのリンク)にある「B.終了」欄に育児休業等終了年月日を記入する理由のひとつとして、「第2子」以降の子の産前産後休業を申し出た場合が挙げられており、その場合には、産前産後休業開始年月日の前日を記入することになっているためです。当該理由以外には、子の死亡等により養育しなくなった場合などがあります。詳細は当該記入例をご参照下さい。
●強制的な「産後休業」→H29.6/21からH29.8/15(56日間)
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」への記載内容はこちら(23_6.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。なお、この事例は出産予定日より後に出産した場合に当てはまり、出産年月日はもちろんのこと、産前産後休業終了予定年月日も変わってきますので、出産後に、「共通記載欄(取得申出)」➈から⑩及び「A.変更」欄に記載の上、提出する必要があります。

(育児休業)
●「育児休業」開始日→H29.8/16
●育児休業法の「育児休業」終了日(原則)→子が1歳に達する日(誕生日の前日)であるH30.6/19となります。なお、雇用保険法の「育児休業給付金」の支給終了日(原則)はH30.6/18となります。
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」への記載内容はこちら(23_7.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、育児休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。

●なお、その後、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により、育児休業の延長の申請を行った場合は、子が1歳6箇月に達する日(H30.12/19)まで延長されることになります。なお、雇用保険法の「育児休業給付金」の支給終了日はH30.12/18となります。
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」への記載内容はこちら(23_8.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、育児休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。なお、この場合は、「延長」ではなく「新規申出」になることから、「共通記載欄(取得申出)」に改めて記載することになるとのことです。

●さらに、平成29年10月1日より、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により、当該子達が1歳6箇月に達する日後(つまり、H30.12/20以後)の期間に育児休業を取得する場合は、当該子達が2歳に達する日(R1.6/19)まで再延長することができる制度ができました。この場合の雇用保険法の「育児休業給付金」の支給終了日はR1.6/18となります。
※この事例に係る「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」への記載内容はこちら(23_9.pdf へのリンク)からどうぞ。この申出書により、育児休業開始月から終了予定日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までの期間の保険料が免除されます。なお、この場合は、「延長」ではなく「新規申出」になることから、「共通記載欄(取得申出)」に改めて記載することになるとのことです。

※リーフレットはこちら(育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長(平成29年10月~))から(23_1.pdf へのリンク)

【保険料の免除制度について】
育児休業等による保険料免除の期間は以下の4つの区分があります。4つの区分それぞれに申出が必要となります。
①1歳未満の子を養育するための育児休業
養育する子が0歳から1歳に達する日(誕生日の前日)まで
②保育所への入所待機等の特別な事情がある場合の1歳から1歳6箇月に達するまでの育児休業
養育する子が1歳の誕生日から1歳6箇月に達する日(同)まで
③保育所への入所待機等の特別な事情がある場合の1歳6箇月から2歳に達するまでの育児休業
養育する子が1歳6箇月の誕生日から2歳に達する日(同)まで
④1歳から3歳までの子を養育するための育児休業制度に準ずる措置*1によるもの
1歳(上記②の場合は1歳6箇月、上記③の場合は2歳)の誕生日から3歳に達する日(同)まで
*1 企業などが独自に、その従業員が3歳になるまでの子を養育するための育児休業制度を設けている場合を言います。

【留意すべき点】
前記しました、第1子の育児休業中に妊娠し、その延長(1歳6箇月まで)後の育児休業終了日(H29.5/9)後に出産したケースで、第2子及び第3子(多胎)に係る「産前休業」の初日となるH29.3/8から第1子の延長後の育児休業終了日(H29.5/9)までの間が重複期間になる旨につき、
●H29.3/8から5/9までの期間を、第1子の「育児休業」とせず、つまり、H29.3/7で第1子の「育児休業」が終了した旨の届出を行い、当該重複期間を第2子及び第3子(多胎)に係る「産前休業」の一部として届出を行った場合は、当該「産前休業」に係る健康保険法の「出産手当金」のみの支給となります。
●一方、当該重複期間を「育児休業」として継続した場合は、第1子の延長後の育児休業終了日(H29.5/9)の前日であるH29.5/8(なお、事例のような育児休業の延長ではなく、一般的な1歳に達するまでの育児休業の場合でその育児休業中に第2子を妊娠した場合では、単純に、第2子の出産日)まで「育児休業給付金」が支給されます。ただし、その間は「労務に服さなかった期間」であることから、「出産手当金」の支給要件も満たすことになり、従って、「出産手当金」も併給できることになると弊職は考えます。この併給の可否については、情報が錯綜している状況も見受けられますので、最終的には、ハローワーク及び協会けんぽに確認していただきたいと思います。
●なお、H29.5/9から6/20までの間は当然、「出産手当金」のみとなり、H29.6/21から8/15までの「産後休業」期間はやはり「出産手当金」のみとなります。そして、H29.8/16以後は、第2子及び第3子(多胎)に係る「育児休業給付金」の支給があるわけです。

【育児休業給付の受給資格要件について】
本来は、第2子及び第3子(多胎)に係る育児休業を開始した日(H29.8/16)前、つまり、H29.8/15以前2年間に「みなし被保険者期間*」が通算して12箇月以上なければならない。本件の場合には、H27.8/16からH29.8/15ということになりますが、前記したように、H27.10/10から産休としていることから、12箇月以上という要件を満たさない。
●しかし、当該2年の間に、疾病又は負傷、事業所の休業、出産等やむを得ない理由により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった期間がある場合には、当該期間(最長2年間)を上記2年間に加算することができ、合計で最長4年間まで受給要件を緩和できることになっています。当該受給要件の緩和の対象となる期間には、「育児休業給付」を受けていた期間や、被保険者が女性である場合には、労基法上の「産前産後休業」期間も含まれるとのことです。
※「業務取扱要領 雇用継続給付関係(育児休業給付)」(抜粋➣「受給要件の緩和」)(厚生労働省職業安定局雇用保険課)はこちらから(23_2.pdf へのリンク)

本件で言えば、H27.10/10からH29.8/15までの676日間が受給要件の緩和の対象になる期間となり、具体的な期間を示せば、H27.8/16からH29.8/15までの2年間に、H25.10/9からH27.8/15までの期間(676日間)を加算した期間において「みなし被保険者期間*2」が通算して12箇月以上あるかを見ればいいことになります。
*2 被保険者であった期間(会社に入社したその日から離(退)職したその日までの期間のこと)のうち、育児休業開始日(H29.8/16)又は各月においてその日に応当(例えば、H29.7月であれば、H29.7/16になります)し、かつ、被保険者であった期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日)の前日(例えば、H29.8/15)からそれぞれ、その前月の応当日(H29.7/16)まで遡った各期間(賃金の支払の基礎となった日数が11 日以上あるものに限る)を1箇月として計算するものです。→本件で言えば、H29.7/16から8/15、6/16から7/15、5/16から6/15、・・・・といった具合になります。

なお、稀なケースで極論だとは思いますが、下記につきご留意下さい。ただし、難解な内容になってしまっています。ご容赦下さい。

第2子(及び第3子)の育児休業を開始する場合にももちろん、当該育児休業開始日前の2年間に「みなし被保険者期間*2」が通算して12箇月以上なければならないという要件をクリアーする必要がありますが、そのために、第1子の育児休業期間(H28.1/6からH29.3/7までとして)のうちH28.1/16からH29.2/15までの1箇月単位の各期間において、あらかじめ就業日数や就業時間などを取り決めず就業可能な日時に就業するという制約のない形での就業形態であるものの、11日以上就業していたことがある月が仮に当該13箇月間*3とし、ただし、第1子の育児休業期間であるH28.1/6からH29.3/7までのうちH28.1/6からH29.3/5までの1箇月単位の各期間(これを「支給単位期間」と言います)における就業時間は80時間以内*4だとすると、第2子(及び第3子)に係る育児休業開始時賃金月額(休業開始時賃金日額(休業開始時点から遡って直近の6箇月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額)×30日(原則))の算定においては、1箇月まるまるの賃金月額(例えば、20日間フルタイム勤務の場合の賃金月額)に比し極めて低い額になることが考えられます。そうなると、次の子となる第2子(及び第3子)に係る育児休業給付金の額が第1子のそれからはかなりの減額になるおそれがありますので、そのような影響も考慮した上で、就業のそのものの当否や就業時間の長短につきご判断いただきたいと思います。
*3 先ず、11日以上就業していたことがある月が仮に当該13箇月間という部分の意味するところは、育児休業を開始した日前2年間に、「みなし被保険者期間*2」という賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1箇月として計算したものが通算して12箇月以上なければならないという第2子(及び第3子)に係る育児休業給付金の受給資格要件を満たしているということを言っています。
*4 次に、第1子の育児休業期間であるH28.1/6からH29.3/7までのうちH28.1/6からH29.3/5までの1箇月単位の各期間(これを「支給単位期間」と言います)における就業時間は80時間以内という部分の意味するところは、第1子に係る育児休業給付金が支給されるためには、「支給単位期間」の各期間において、公共職業安定所長が就業していると認める日数が10日以内であることというその要件のひとつを満たす必要がありますが、ただし、10日を超える場合には、当該期間における公共職業安定所長が就業していると認める就業時間数が80時間以内であれば当該要件のひとつを満たすことになるということを言っています。従って、仮に、各「支給単位期間」において7時間/日で11日間働いたとしたら、合計77時間なのでOKということになります。要するに、当該77時間×6箇月/180日×30日=休業開始時賃金月額になりますので、第2子(及び第3子)に係る育児休業開始時賃金月額は低額になることが予想されるところです。

 なお、具体的な事例を人事労務トピックス「健康保険制度(高額療養費制度等)・子育て支援制度Ⅱ」にある【子育て支援制度Ⅱについて】5.育児休業給付金の支給額について において詳細に解説していますので、是非ご参照下さい。

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