働き方改革


令和2年4月3日更新



全国社会保険労務士会連合会作成のリーフレット『働き方改革 法改正で何が変わるの?』(長時間労働是正編)

「人を大切にする」職場づくり、それが働き方改革の意図するところではないでしょうか?何も難しく考える必要はありません。先ずはできるところから始めてはいかがでしょうか?社労士会では様々な取組を企画しています。全国社会保険労務士会連合会のホームページ内にある特設サイトを是非ご覧下さい!!URLは下記となります。
➣ https://www.shakaihokenroumushi.jp/organization/tabid/277/Default.aspx
➣ リーフレットはこちら(hatarakikatakaikaku_21.pdf へのリンク)からどうぞ!!
➣ 『社労士は中小企業の「人を大切にする」働き方改革を支援します!!』として、「労務診断ドック(無料)」と「経営労務診断サービス(有料)」を簡単に紹介したリーフレットがあります。是非ご覧下さい。こちら(hatarakikatakaikaku_29.pdf へのリンク)からどうぞ!!


※厚生労働省ホームページ内にある特設サイト「働き方・休み方改善ポータルサイト」よりリンクしています。是非ご覧下さい。

<働き方改革関連ページ>
【人事労務トピックス一覧表】
労働契約法の改正について
改正労働者派遣法について

【Information一覧表】
時間外労働・休日労働に関する協定届について
年次有給休暇取得について
法定休暇付与の早期化の検討について

【プログ一覧表】
「時間外労働の上限規制」についての雑感
医師の時間外労働の上限規制について
建設業の時間外労働の上限規制について

<働き方改革関連法の内容について>
【資料等】
(パンフレット・リーフレット)

●『「働き方」が変わります!!』(厚生労働省及び中小企業庁連名)(hatarakikatakaikaku_3.pdf へのリンク)
●『働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~』(hatarakikatakaikaku_6.pdf へのリンク)

『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』(hatarakikatakaikaku_471.pdf へのリンク)
『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』(hatarakikatakaikaku_48.pdf へのリンク)
●『年次有給休暇時季指定義務』(hatarakikatakaikaku_16.pdf へのリンク)
●『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』(hatarakikatakaikaku_50.pdf へのリンク)
●『労基法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針』(hatarakikatakaikaku_15.pdf へのリンク)

●『働き方改革関連法が成立しました(正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されます!』(hatarakikatakaikaku_19.pdf へのリンク)*
●『雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法の改正)』(hatarakikatakaikaku_20.pdf へのリンク)*
●『パートタイム・有期雇用労働法が施行されます』(hatarakikatakaikaku_54.pdf へのリンク)
●『平成30年度労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>』(hatarakikatakaikaku_55.pdf へのリンク)
(法令)
●『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律』の概要(データに異常値があることが判明した「裁量労働制」に関する部分が削除されたものです)(平成30年7月6日公布)(hatarakikatakaikaku_1.pdf へのリンク)
●『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(新旧対照条文)(抄)』(平成30年7月6日公布)(hatarakikatakaikaku_12.pdf へのリンク)
労働基準法(抄)(hatarakikatakaikaku_40.pdf へのリンク)
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(抄)(hatarakikatakaikaku_41.pdf へのリンク)
労働安全衛生法(抄)(hatarakikatakaikaku_42.pdf へのリンク)
(厚生労働省令)
●『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(=労働基準法等施行規則)(平成30年9月7日公布)』(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)
●『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備及び経過措置に関する省令(=労働者派遣法、パートタイム・有期雇用労働法等施行規則)(平成30年12月28日公布)』(hatarakikatakaikaku_51.pdf へのリンク)
(通達)
●『働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30年12月28日)』(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)
●上記解釈にリンクする形で、『改正労働基準法に関するQ&A(平成31年3月)(厚生労働省労働基準局)』(hatarakikatakaikaku_57.pdf へのリンク)が公開されました。合わせて、ご参照下さい。
●『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日)』(hatarakikatakaikaku_52.pdf へのリンク)
●『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(平成31年1月30)』(hatarakikatakaikaku_53.pdf へのリンク)
(指針(ガイドライン))
●『労基法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針』(平成30年9月7日公布)(hatarakikatakaikaku_14.pdf へのリンク)(hatarakikatakaikaku_14_1.pdf へのリンク)*
●短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)(平成30年12月28日公布)(hatarakikatakaikaku_2.pdf へのリンク)
・ ただ、「第2 基本的考え方」において記載された下記部分は注目すへき内容であり、留意すべきであると考えます。
-P5後方-
『なお、短時間・有期雇用労働法第8条及び第9条並びに労働者派遣法第30 条の3及び第30条の4の規定は、雇用管理区分が複数ある場合であっても、通常の労働者のそれぞれと短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等を求めるものである。このため、事業主が、雇用管理区分を新たに設け当該雇用管理区分に属する通常の労働者の待遇の水準を他の通常の労働者よりも低く設定したとしても、当該他の通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間でも不合理と認められる待遇の相違の解消等を行う必要がある。また、事業主は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間で職務の内容等を分離した場合であ っても、当該通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の 不合理と認められる待遇の相違の解消等を行う必要がある。』
・さらに、平成30年6月1日に最高裁判決があった「長澤運輸訴訟」を踏まえて、「2 定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱い」において言及されている下記部分も注目すべき内容であり、通常の労働者と定年後に継続雇用された有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理であるか否か判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条の「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲」、さらに「その他の事情」というものもその判断において重要な要素になりうるとされており、不合理であると判断されるに至るまでのハードルが上がることになったのではないでしょうか?
-P13後方-
『さらに、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、 当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない。』

※いずれも、厚生労働省ホームページ内特集ページ『「働き方改革」の実現に向けて』より
URL➣https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

【雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保】
「働き方改革(雇用形態に関わらない公正な待遇の確保)」へ移動します。
>>改正労働者派遣法 派遣労働者の待遇決定方式(労使協定方式)について

【労働時間法制の見直しについて】施行日平成31年4月1日(原則)
※新労働基準法(抄)はこちら(hatarakikatakaikaku_22.pdf へのリンク)から

1.残業時間の上限規制(新労基法36条)➣中小企業への適用は令和2年4月1日
●かつての厚生労働大臣告示(時間外労働の限度に関する基準)では1箇月については45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)かつ1年については360時間(同320時間)(原則)と定められ、三六協定の締結当事者(労使)は労働時間の延長を定めるに当たり、同協定の内容が同基準に適合したものとなるようにしなければならないとされていました。ただし、「特別条項付協定」(特例)を締結すれば、当該限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない「特別の事情(臨時的なものに限る)(※1)」が生じた場合に限り、一定期間(年6回まで)について当該限度時間を超える時間外労働をさせることができるとされ、特別条項付協定を使えば、一定期間(年6回まで)については時間外労働が青天井になっていました。
(私見)
そこに新たに上限規制ができたことは評価できるものと考えますが、下記新協定届のうち一般条項のみの場合、つまり当該限度時間までの協定であっても、下記新協定届にあるチェック欄にチェックが求められているように、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1 箇月について100 時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80 時間を超過しないこと(※2)が有効な協定成立の条件とされることからすると、当該条件をクリアーさえすれば、また、一般条項のみの場合にある1箇月については45時間(同42時間)かつ1年については360時間(同320時間)(原則)には休日に出勤して働く時間が含まれていないことからすると、極論すれば、1年については最大960時間まで労働させることができてしまうかもしれません。つまり、休日に出勤して働く時間とあわせて過労死ラインぎりぎりの「80時間/月」の時間外労働を12箇月続けることが可能な制度設計になっているのでないでしょうか?
ただ、そのような制度設計はさておき、今般の働き方改革関連法(新労基法第36条)により、かつての厚生労働大臣告示という形から法律に格上げして罰則による強制力を持たせたことに加えて、さらに「特別の事情(臨時的なものに限る)」がある場合として労使による合意があったとしても、超えることができない残業時間の上限を定めることになった意義は極めて大きいものと考えます。
※1 例えば、自動車メーカーにおけるリコール対応、大規模なシステム障害、想定外の大量受注といったことが挙げられるのではないかと思われます。
※2  上記赤字下線部分について、参考事例で示すと、下記図表のようになります。参考事例において、4箇月平均では80H以下となるものの、3箇月目と4箇月目の2箇月間で見ると、平均して85Hとなり、80Hを超えてしまい、新労基法に抵触することになってしまいます。このように、場合によっては、労働時間管理が極めて煩雑(※3)になることも特記しておかなければなりません。
※3 厚生労働省作成の「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(hatarakikatakaikaku_47_1.pdf へのリンク)P15からP18までの「上限規制への対応」の中で「労働時間管理の実務イメージ」として、Step1からStep5までの段階的な実務対応を比較的分かり易く解説されています。ただ、このような作業を遺漏なくしかも限られた時間の中でミスなく行うには、やはり、当該作業のシステム化は避けて通れないところだと思われます。だとしても、理屈は理解する必要がありますので、ポイントについて、Excel(hatarakikatakaikaku_47_2.pdf へのリンク)にて解説を加えていますので、ご参考にしていただれば幸いです。
(参考事例図表)

●平成30年8月9日に開催された第145回労働政策審議会労働条件分科会において、厚生労働省が示した、省令で定める「36協定の様式(案)」に対しては、労使により概ね了承されたことを踏まえ、同省は省令をもって、時間外労働の上限規制に対応した36協定の新様式を公表・周知しています。
「時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)」(一般条項のみの場合)(hatarakikatakaikaku_7.pdf へのリンク)
➣これは、時間外労働に係る限度時間に関しては、1箇月については45時間(同42時間)1年については360時間(同320時間)とするもので、休日労働に関しては、労働させることができる法定休日の日数及び労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻を定めるもので、ただし、下記赤字下線部分の制約があるということです。
「時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号の2)」(一般条項のみならず特別条項も締結する場合)(hatarakikatakaikaku_8.pdf へのリンク)
➣この特別条項付協定を締結し、上記限度時間を超えて労働させる必要がある場合においても、1箇月については、休日に出勤して働く時間を含めて45時間(同42時間)超100時間未満、1年については、休日に出勤して働く時間を含めず360時間(同320時間)超720時間以下の範囲内に限るというものです。ただし、1箇月について45時間(同42時間)を超えることができる月数を定めなければならず、それは1年について6箇月以内に限るということになります。さらに、下記赤字下線部分の制約があるということです。

※上記いずれの新協定届にも、
『上記で定める時間数にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1 箇月について100 時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80 時間を超過しないこと。□(チェックボックスに要チェック)』という欄が設けられ、チェックがなければ、有効な協定にならないとされています。
●労働基準監督署の下請事業者等に対する監督指導の実施結果によると、違法な長時間労働等の労働基準法令違反が認められ、その背景としては、親会社や元請事業者といった力関係において優位に立つ者からの納期直前の発注(短納期)や仕様の頻繁な変更等といった下請法等の違反行為により、やむを得ず長時間労働をせざるを得なかった特徴的な事例もあったとされています。
厚生労働省では、上記のような事例については、下請法等の違反行為に対する指導を担当する公正取引委員会や中小企業庁に通報する制度があり、中小企業や小規模事業者が「働き方改革」に取組みやすい環境作りのために、関係省庁と連携した取組を行っているとのことである。
このような中小企業や小規模事業者の皆様に置かれて、労務管理の改善に関するご相談を希望される場合には、公正取引委員会や中小企業庁において相談窓口(hatarakikatakaikaku_33.pdf へのリンク)が設置されているとのことですので、是非ご相談されることをお勧めします。
なお、厚生労働省は令和1年6月26日、中小企業庁と公正取引委員会とともに、『大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策』(しわ寄せ防止総合対策)を策定したとのことです。参考までに、厚生労働省のプレスリリース(hatarakikatakaikaku_62.pdf へのリンク)を掲載します。是非ご確認下さい。

※厚生労働省ホームページ内に「しわ寄せ」防止特設サイトが設けられています。また、『11月は「しわ寄せ防止キャンペーン期間」です。』とするポスターはこちら(hatarakikatakaikaku_76.pdf へのリンク)から。


(参考)➣ここを読み飛ばす場合には、下記2.「勤務間インターバル」制度の導入促進へお進みください。
労働時間法制の見直しとは直接的には関係がありませんが、時間外手当等の計算式につき、再認識していただくための材料として、下記判例の中で示された、賃金規則における賃金構成を見ることで、その理解を深めていただけるのではないかと思われ、参考までに掲載させていただくことにしました。
➣ 詳細に関しては、別ページにて掲載しています。

※判例Ⅰ➣「国際⾃動⾞事件」の第1次上告審(最⾼裁)判決(平成29年2月28日)(hatarakikatakaikaku_38.pdf へのリンク)の内容(概要)について
-争点-
歩合給を計算するに当たって、残業代相当額を控除する仕組みを規定した賃金規則の違法性について
-結論-
第1次上告審(最高裁)は、そのような賃金規則は公序良俗に反し無効と判示した原審となる第1次控訴審(東京高裁)判決を取消し、東京高裁に差し戻し(平成29年2月28日)ました。
-差戻した理由-
『労基法37条は,時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定め,割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令(労基法37条等)に具体的に定められている。ただ、同条は,労基法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり,使用者に対し,労働契約における割増賃金の定めを労基法37条等に定められた算定方法と同一のものとし,これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されていない』とした。
そして,『使用者が労働者に対し,時間外労働等の対価として同条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには,労働契約における賃金の定めにつき,それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で,そのような判別をすることができる場合に,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に当たる部分の金額を基礎として,労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきである』とした。
また、『第1次控訴審(東京高裁)は、労働契約において売上高(揚高)等の一定割合に相当する金額(それを同社賃金規則では「対象額A」としている)から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金(それを同社賃金規則では「歩合給(1)」としている)とする旨が定められていたことをもってのみで,当該定めは当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し,無効であると断じているが、同社賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か,また,そのような判別をすることができる場合に,同社賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく,被上告人ら(労働者側)の未払賃金の請求を一部認容すべきとしたものであり、それは、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない』とした。つまり、審理を尽くさなかったという面での差し戻しであり、単に、上告人(使用者側)の主張に沿った形の一方的な判示をしたわけではなかったと言えます。

※「国際⾃動⾞事件」のその後の経緯
第1次上告審(最高裁)を受けての第2次控訴審(差戻審)(東京高裁)の判決(平成30年2月15日)を経て、第2次上告審(最高裁)判決(hatarakikatakaikaku_80.pdf へのリンク)が令和2年3月30日に言い渡されたものです


※判例Ⅱ➣「国際自動車事件」の差戻審(第2次控訴審)(東京高裁)の判決(平成30年2月15日)(hatarakikatakaikaku_81.pdf へのリンク)の内容(概要)について
-差戻審における争点について-
当該定めの同条違反の有無
②同社賃金規則において、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分との明確区分性の有無
③売上高(揚高)等の一定割合に相当する金額(それを同社賃金規則では「対象額A」としている)からの控除対象である賃金規則に基づいて支払われた割増賃金の額と同条に定める割増賃金に相当する額との比較において、金額面での適格性の有無(つまり、前者の金額が後者のそれを下回らないかどうかの検証)
-争点①について-
『「歩合給⑴」については,「対象額A」から割増賃金及び交通費を控除するものとされているが,同条は,労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定していないことに鑑みると,労働契約において「対象額A」から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合,当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し,無効と解することができない』とした。
そして、『歩合給は,成果主義に基づく賃金であるから,労働の成果に応じて金額が変動することを内容としており,労働の成果が同じである場合,労働効率性を評価に取り入れて,労働時間の長短によって歩合給の金額に差が生ずるようにその算定過程で調整を図ることは不合理なことではなく,当該定めにおいて,「歩合給⑴」の算定に当たって割増賃金相当額を控除する方法は,労働時間に応じた労働効率性を歩合給の金額に反映させるための仕組みとして,合理性を是認することができるというべきである』とした。
-争点②について-
『同社賃金規則においては,通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とが明確に区分されて定められているということができる』とした。
-争点③について-
歩合給制がある場合には、もし時間外労働等をしたのであれば、歩合給に対しても割増賃⾦を⽀払う必要があるとされています。その前提で、同社賃金規則における「深夜手当」「残業手当」「公出手当」のうち、例えば「深夜手当」を例にとると、
<(基本給+服務手当)/(出勤日数×15.5時間)>×0.25×深夜労働時間
●(対象額A/総労働時間)×0.25×深夜労働時間
上下2つの計算式の合計が「深夜手当」になります。上の計算式は一般的なものであり、労基法37条等に定める割増賃金に相当する額と言えます。また、下の歩合給(つまり、出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額)に対する割増賃金を求めるための計算式についても、同社賃金規則における「歩合給(1)」を総労働時間で除するのではなく、「対象額A」を総労働時間で除していること、さらに、そもそも「対象額A」≧「歩合給(1)」という形が維持されていることからも労基法37条等に定める割増賃金に相当する額以上になることが明らかであると考えられます。
そのことをもって、第1次控訴審(東京高裁)は、『同社賃金規則では,割増賃金として支払われる金額は,賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額(「歩合給⑴」)ではなく,割増賃金を控除する前の「対象額A」を計算の基礎とするから,それを控除した後の「歩合給⑴」に相当する部分の金額を基礎として算定する労基法37条等に定められた割増賃金の額を常に下回ることがないということができる』としました。

※判例Ⅲ➣「国際自動車事件」の第2次上告審(最高裁)の判決(令和2年3月30日)の内容(概要)について
-前提として-
第2次上告審(最高裁)は先ず、上記判例Ⅱ-争点①について-の中の下線部分については、同様の判断をしている。
-検討事項-
被上告人(使用者側)は,上告人ら(労働者側)が行った時間外労働等に対する対価として,同社賃金規則に基づく割増賃金(深夜手当,残業手当及び公出手当)を支払い,これにより労基法37条の定める割増賃金を支払ったものであるとの主張の当否につき、検討を加えている。
-検討した結果-
●割増賃金の額の位置付け➣『深夜労働,残業及び休日労働の各時間数に応じて支払われるものであると同時に、通常の労働時間の賃金とされる「歩合給(1)」の算定に当たり「対象額A(売上高(揚高)に応じて算出されるもの)」から控除される額としても使用されているものである』とした。
●あり得る現象として➣
・『売上高(揚高)を得るに当たり、時間外労働等を全くしなかった場合➣「対象額A」から交通費相当額を控除した額の全部が「歩合給(1)」になる』とした。
・逆に、『時間外労働等をした場合には,その時間数に応じて割増賃金が発生し,その一方で,この割増賃金の額と同じ額が「対象額A」から控除されて,「歩合給(1)」が減額されることとなる』とした。そして,時間外労働等の時間数が多くなれば,割増賃金の額が増え,「対象額A」から控除される額が大きくなる結果として「歩合給(1)」は0円になることもあり,この場合には,「対象額A」から交通費相当額を控除した額の全部が割増賃金となる』とした。
●歩合給の本質➣『出来高払制の賃金,すなわち,売上高(揚高)に一定の比率を乗ずることなどにより,売上高(揚高)から一定の経費や使用者の留保分に相当する額を差し引いたものを労働者に分配する賃金であると解される』とした。
-それらを踏まえた第2次上告審(最高裁)としたの判断-
・『割増賃金が時間外労働等に対する対価として支払われるものであるとすれば,割増賃金の額がそのまま「歩合給(1)」の減額につながるという上記の仕組みは,当該売上高(揚高)を得るに当たり生ずる割増賃金をその経費とみた上で,その全額を労働者に負担させているに等しいものであって,労基法37条の趣旨に沿うものとはいい難い』とした。
・さらに、『割増賃金の額が大きくなり「歩合給(1)」が0円となる場合(下方画像(PDF化しています)をご参照下さい)には,出来高払制の賃金部分について,割増賃金のみが支払われることとなるところ,この場合における割増賃金を時間外労働等に対する対価とみるとすれば,出来高払制の賃金部分につき通常の労働時間の賃金に当たる部分はなく,全てが割増賃金であることとなるが,これは,法定の労働時間を超えた労働に対する割増分として支払われるという労基法37条の定める割増賃金の本質から逸脱したものといわざるを得ない』と結論付けました。
・そして、最終的には、『「対象額A」から控除された割増賃金は,割増賃金に当たらず,通常の労働時間の賃金に当たるものとして,労基法37条等に定められた方法により上告人ら(労働者側)に支払われるべき割増賃金の額を算定すべきである。被上告人(使用者側)が上告人らに対して支払うべき未払賃金の額等についてさらに審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする』としたものである。

-私見-
上記画像にある残業手当、深夜手当及び公出手当いずれについても、①の通常の支給形態と合わせて②の「歩合給対応部分」の割増賃金があるように、その計算式でその基礎になるものとして「対象額A」を用いていることからしても、本来の歩合給は「対象額A」そのものになると考えるところである。しかし、同社の賃金規則によれば、そこからさらに、割増賃金を控除したものが「歩合給(1)」だという。それでは、時間外労働等がある場合(全くない場合は「対象額A」から交通費を控除した後の額が「歩合給(1)」になるので、歩合給としては本来の姿に近づいているものと思えますが・・・)は、「歩合給(1)」の一部につき割増賃金にすり替えて支払っていることに他ならないものと考えるところである。また、時間外労働等がある場合には、結局のところ、「歩合給(1)(=「対象額A」-割増賃金-交通費)」+割増賃金+交通費=「対象額A」となり、「対象額A」(つまり、歩合給)のみが支払われていることになり、そのことは、歩合給対応部分の割増賃金はもちろんのこと、それを含むすべての割増賃金が吹き飛んでしまっていることを意味し、正に、割増賃金が売上高(揚高)を得るためのコストになっている、つまり、タクシー乗務員の方々に一方的に負担を強いる構造になっているものと考えざるを得ない。

※判例Ⅳ➣「トールエクスプレスジャパン事件」の大阪地裁判決(平成31年3月20日)(hatarakikatakaikaku_60.pdf へのリンク)内容(概要)について
-同事件の主な内容-
貨物自動車運送業等を営むトールエクスプレスジャパン株式会社(被告))(日本郵政グループの運送会社)との間で労働契約を締結し、集配業務に従事していた原告らが、それらに支給する下記「能率手当」の計算に当たって、下記「賃金対象額」から「時間外手当A」に相当する額が控除され、労基法第37条に定められた割増賃金の一部が未払いになっているなどと主張して、当該未払割増賃金等の支払を求めたものです。
-前提事実としての賃金制度-
同社は、平成26年12月16日に賃金規則及びその細則を改定したことから、同社の賃金制度は同日の前後で異なることになっている。
-旧賃金構成-
基準内賃金➣職務給・勤続年数手当・現業職地域手当・「能率手当(*1)」等
基準外賃金➣通勤手当・別居手当・時間外手当(A及びB)(*2)・宿日直手当・休暇手当・調整手当
*1 従事した業務内容(本人取扱重量や件数等)に基づき算出された「賃金対象額」と称する出来高(いわゆる、労働の成果)が時間外手当Aの額を上回った場合に支給されるもの。
*2 時間外手当Aは、「能率手当」を除く基準内賃金をベースにしたもの(1時間当たりの基準内賃金を算出する場合は年間平均所定労働時間で除する)。割増率に関しては月60時間までの時間外労働時間の場合は1.25、月60時間超の場合は1.5、深夜労働時間の場合は0.25、法定休日労働時間の場合は1.35となっていた。
一方、時間外手当Bは、「能率手当」のみをベースにしたもの(1時間当たりの能率手当を算出する場合は総労働時間で除する)
-新賃金構成-
基準内賃金➣旧賃金構成(注1)に加えて、独身手当・配偶者手当
基準外賃金➣旧賃金構成(注2)に加えて、時間外手当C(注3)・扶養手当
注1 当該基準内賃金に含まれている「能率手当」は、旧「賃金対象額」とはその構成要素が変更された新「賃金対象額(集配業務に係る取扱重量、伝票枚数、軒数及び走行距離等に基づき算出されている)」が時間外手当Aの額を上回った場合に支給されるもの。
注2 当該基準外賃金に含まれている時間外手当Aは、「能率手当」を除く基準内賃金をベースにしたもの(1時間当たりの基準内賃金を算出する場合は年間平均所定労働時間で除する)である。割増率に関しては月60時間超の時間外労働時間も含めてすべての時間外労働時間については1.25、深夜労働時間の場合は0.25、法定休日労働時間の場合は1.35となっている。
同じく時間外手当Bは、「能率手当」のみをベースにしたもの(1時間当たりの能率手当を算出する場合は総労働時間で除する) 。
注3 新たに設けられた時間外手当Cは、「能率手当」を除く基準内賃金をベースにしたもの(1時間当たりの基準内賃金を算出する場合は年間平均所労働定時間で除する)で、月60時間超の時間外労働時間(ただし、割増率0.25)のみを対象とするもの。
-主な争点-
・原告らの賃金は、職務給・「能率手当」・時間外手当A・その他各種手当を合計したものであるが、「賃金対象額」から時間外手当Aを控除したものが「能率手当」とされることにより、実際に支給される賃金は、職務給・「賃金対象額」・その他各種手当の合計額ということになり、当該「賃金対象額」が集配業務に係る取扱重量、伝票枚数、軒数及び走行距離等に基づき算出されて、それは労働時間の長短ではなく、労働の成果のみを測るものであることから、労基法第37条の割増賃金が支払われたことにはならない旨の原告らの主張の当否。
・成果主義賃金的な要素によって構成され、「能率手当」を算出するためだけの物差しとして位置付けられる「賃金対象額」が、時間外手当Aを上回った場合に限り、その超過額を「能率手当」として支給するものであり、賃金そのものから時間外手当Aを控除するものでなく、従って、原告らが漫然と時間外労働を増やしても「能率手当」は支給されないことになり、それは原告らに、業務の能率を向上させることで長時間労働の抑制化を働きかける動機付けになるものだとする被告の主張の当否。
-結論-
大阪地裁は、『当該「能率手当」は、労働の成果に応じて金額が変動することを内容とした出来高払制賃金であると解されるところ,出来高払制賃金の定め方を指定し,あるいは規制した法令等は特に見当たらず,出来高払制賃金について,いわゆる成果主義の観点から労働効率性を評価に取り入れて,労働の成果が同じである場合に労働時間の長短によって金額に差が生ずるようにその算定過程で調整を図ること自体は特段不合理なものであるとはいえない』と判示して、原告らの訴えを全⾯的に退けました。

-私見(国際自動車事件とも共通しますが・・・)-
労働の成果が同じ労働者が二人いた場合で、一方が他方より短時間で同じ成果を上げているとしたら、そこには自ずと処遇面で差が生じることは成果主義からすると至極当然の帰結であろうと考える。ただ、当該「能率手当」が「賃金対象額」から時間外手当Aを控除して算出されるものであることから、時間外労働をどれだけしても、労働の成果が上がらなければ、結果として、「能率手当」の支給額は少なくなる、あるいは、支給されない場合(つまり、「賃金対象額」<時間外手当Aの場合。ただ、この場合の時間外手当Aの取扱いについては判決文からは判然とせず不詳である)もあり得るわけであり、時間外手当Aが控除対象とされていることの適否については疑問の残るところではある。また、原告らの、結局のところは、「賃金対象額(=「能率手当」+時間外手当A)」が支給されていることになる旨の主張には一理あると思われる。むしろ、労働の成果に対して、時間外労働時間の長短に応じた所定の率を乗じることで「能率手当」を算出する方法であれば、労使双方に納得が得られるかもしれない。

2.「勤務間インターバル」制度の導入促進(努力義務)(新労働時間等設定改善特別措置法第1条の2第2項・第2条第1項)
※新労働時間等設定改善特別措置法(抄)はこちら(hatarakikatakaikaku_23.pdf へのリンク)から
これは、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフバランスを保って働き続けることができるようにするための制度です。使用者には、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、一定時間の休息が確保できるように努めなければならない旨の努力義務が課せられるもので、具体的には、同法に基づく「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」(hatarakikatakaikaku_56.pdf へのリンク)に追加項目として挙げられています。
なお、当該制度に関しては、その普及促進を図るために、「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」が用意されています。詳細については、人事労務トピックスにある「働き方改革推進支援助成金(旧 時間外労働等改善助成金)(勤務間インターバル導入コース)」をご参照下さい。

※厚生労働省「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」からの報告書(概要)(hatarakikatakaikaku_44.pdf へのリンク)が公開(平成30年12月21日)されています。
厚生労働省ホームページ内に「勤務間インターバル」特設サイトがあります。


※「ワーク・ライフ・バランスの実現のためには労使の自主的な取組が重要です」とするリーフレット(hatarakikatakaikaku_58.pdf へのリンク)が厚生労働省より公開されています。労働時間等設定改善法、労働時間等見直しガイドライン、勤務間インターバル制度等について、分かり易く解説されています。ご参照下さい。

2_1. その他の労働時間等設定改善法の改正点(新労働時間等設定改善特別措置法第1条の2第2項・第2条第4項・第7条・第7条の2)

(第1条の2第2項)
同法の対象となる「労働時間等の設定」には、上記の「勤務間インターバル」(制度の導入)とともに、「「深夜業の回数」(制限)も追加するものとする。
(第2条第4項)
事業主は、他の事業主との取引において、短納期の設定や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮する努力義務をを設ける。

※働き方改革に関する下請等中小企業の生の声(中小企業庁)が届いています。また、労働基準監督署の監督指導を契機に取引環境の改善を⾏った事業者の事例(厚生労働省)が紹介されています。こちら(hatarakikatakaikaku_59.pdf へのリンク)からどうぞ
(第7条)
事業場ごとに設置されている「労働時間等設定改善委員会」における委員の4/5以上の多数による議決により,下記の事項に関しては、労基法上に規定された「労使協定」に代えることができる特例が設けられました。なお、改正(追加条項)の対象となるのは下線部分のみとなります。
①労基法第32条の2第1項(1箇月単位の変形労働時間制)
②同法第32条の3第1項(フレックスタイム制)➣第2項以降の新設に伴い、新たに第1項が設定されたことによるもの(改正前は同法第32条の3の本条のみ)
③同法第32条の4第1項(1年単位の変形労働時間制)
④同法第32条の5第1項(1週間単位の非定型的変形労働時間制)
⑤同法第34条第2項但書(休憩時間の一斉付与の例外)
⑥同法第36条第1項・第2項第5項(三六協定)➣第2項から第6項までの新設に伴うもの➣これについては、所轄労働基準監督署への届出が必要となります。
⑦同法第37条第3項(割増賃金の支払いに代わる代替休暇の付与(月60時間超の時間外労働))
⑧同法第38条の2第2項(事業場外労働のみなし労働時間制)
➈同法第38条の3第1項(専門業務型裁量労働制)
⑩同法第39条第4項(年次有給休暇の時間単位の付与)
⑪同法第39条第6項(年次有給休暇の計画的付与)
(第7条の2)
事業場ごとに、当該事業場における労働時間等の設定の改善に関する事項について、労使協定により、全部の事業場を通じて一の委員会(この委員会のことを「労働時間等設定改善企業委員会」と言います)に調査審議させ、事業主に対し意見を述べさせることを定めた場合には、その委員の4/5以上の多数による議決により,下記の事項に関しては、労基法上に規定された「労使協定」に代えることができる特例が設けられました。
①労基法第37条第3項(割増賃金の支払いに代わる代替休暇の付与(月60時間超の時間外労働))
②同法第39条第4項(年次有給休暇の時間単位の付与)
③同法第39条第6項(年次有給休暇の計画的付与)

3.年5日間の年次有給休暇の取得(企業への義務付け)(新労基法第39条)
年次有給休暇に関しては、平成31年4月から、10日間以上付与する労働者(管理監督者も含む)に対して、使用者(派遣労働者については、派遣元)に最大で年5日間の時季指定付与義務が課せられることになっています。そして、それは、平成31年4月以後、最初に年10日間以上の年休を付与する日(基準日)から義務化されるものです。

●なお、当該義務化に関して、平成30年8月9日に開催された第145回労働政策審議会労働条件分科会において、厚生労働省は年次有給休暇を前倒しで付与した場合等の年次有給休暇時季指定付与義務の特例(案)(厚生労働省ホームページより)(hatarakikatakaikaku_9.pdf へのリンク)について説明し、労使から特に異論が出なかったことから、同省は省令をもって、同特例の内容を規定しています。

(提示された4つの案)
①通常は、入社後6箇月経過した時点において、原則として、10日間以上の有休が付与されますが、その「基準日」(法定基準日)(H31.4.1入社の場合であれば、R1.10.1が「基準日」(法定基準日))よりも前の日、例えば、入社と同時に付与する場合、つまりH31.4.1に付与する場合には、当該日を「第一基準日」(基準日を前倒しして10日間以上の有休を付与する日)とし、「第一基準日」からR2.3.31までの間に5日間を取得させることになるというものです。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(=労働基準法等施行規則)(平成30年9月7日公布)」第24条の5第1項(新設)(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。

②入社した年とその翌年とで有休の付与日が異なる場合(入社(H31.4.1)した年は通常のR1.10.1(「基準日」(法定基準日))、その翌年は全社的な統一付与日となるR2.4.1という場合には、本来であれば、R2.9.30までに5日間、R3.3.31までに5日間取得させるということになるところを、そのような有休管理の煩雑さを避けるために、このような場合には、最初に10日間以上の有休を付与した日(R1.10.1)(「基準日」(法定基準日))から同日から1年以内に新たに10日間以上の有休を付与した日、つまり、全社的な統一付与日(R2.4.1)(「第二基準日」(基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日で、当該日に年休を付与するもの))から1年を経過するまでの間の長さ(この場合であれば、18箇月間、この期間のことを「履行期間」という)に応じた日数を当該期間中に取得させるというものです。
-②の事例-
R1.10.1~R3.3.31までの18箇月間/12×5=7.5(半日有休制度があれば、これでOK。当該制度がない場合では、端数は切り上げることが望ましいとされ、その場合には8)日間取得させることになります。
「同省令」第24条の5第2項(新設)(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。

③①における「第一基準日(つまり、H31.4.1)」から1年後の日を、②における「第二基準日(つまり、R2.4.1)」から1年後の日を、「基準日」とみなす(「みなし基準日(①においてはR2.4.1②においてはR3.4.1)」)ことになるというもの。従って、当該「みなし基準日」から1年以内の期間に、5日間について労働者ごとにその時季を指定して付与しなければならないというものです。
「同省令」第24条の5第3項(新設)(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。

④入社(H31.4.1)した時点(「特定日」という)で先ず10日間未満の日数の有休を付与し、その後、R1.7.1(これも「特定日」といい、遅い方の「特定日」となる)に残りの日数を付与することで、当該遅い方の「特定日」を「第一基準日」とし、10日間以上の有休を付与することになる「分割付与」の場合で、労働者自身がその「第一基準日」とされた日までの間に例えば2日間の有休(時季指定権の行使によるもの)を取得した場合は、その「第一基準日」とされた日から1年を経過するまでの間においては、5日間の有休を取得させる必要はなく、労働者自身が取得した2日間の有休を控除した残り3日間の有休を取得させることで足りることになるというものです。なお、例えば、入社(H31.4.1)した時点で10日間未満の年休を付与し、R1.10.1に残りの日数を付与し、10日間以上の有休を付与した場合でも「分割付与」のケースとされるものと思われます。
「同省令」第24条の5第4項(新設)(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。

なお、この④に関しては、下記図表(厚生労働省作成の「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」P10に掲載されている「ケース3」「10日のうち一部を法定の基準日より前倒しして付与した場合」(hatarakikatakaikaku_48_1.pdf へのリンク)の下部にある(補足)部分)に記載されていることに注意を要します。

初年度の法定の基準日(この事例では、R1.10.1)よりも前倒しして付与した場合には、次年度以後の有休の付与日についても、初年度と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日(この事例では、R2.10.1)より前倒ししなければならない旨の解説があります。その意味するところは、本来であれば、初年度の法定の基準日であるR1.10.1からR2.9.30までの間に、5日間の有休の付与義務があるわけですが、入社日(H31.4.1)に一部(5日間)とはいえ、しかも、初年度の法定の基準日前となるR1.7.1(=1年目の基準日)に残り(5日間)の有休を付与したという労働者にとっては法を上回る処遇を引き続き踏襲する必要があるということです。
従って、入社日の次年度における応当日であるR2.4.1を2年目の基準日として、当該日から1年後のR3.3.31までに5日間の有休の付与義務があるわけですが、1年目の基準日であるR1.7.1から1年後のR2.6.30までにも5日間の有休の付与義務があります。となると、R2.4.1からR2.6.30までの間が重複することになります。そのような場合には、上記②にも該当することから、その場合の有休管理の煩雑さを避けるために、1年目の基準日であるR1.7.1から2年目の基準日であるR2.4.1から1年後のR3.3.31までの21箇月間に応じた日数を当該期間中に取得させることも認められることになります。
-補足の事例-
21箇月間/12×5=8.75(この場合には、端数は切り上げることが望ましいとされ、その場合には9)日間取得させることになります。

●使用者に最大で年5日間の時季指定付与義務が課せられることになりますが、その前提として、この時季指定を行うために、その対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に規定しなければなりません。ご留意下さい。
また、労働者自身からの時季指定(新労基法第39条第5項)計画的付与制度(新労基法第39条第6項)(労使協定により、有休を付与する時季に関する定めをした場合には、その日数のうち5日を超える部分(前年度からの繰越分を含みます)については、事業場での一斉付与・交替制付与・個人別付与といった方法により、有休を付与することができるもの)半日単位の有休制度による取得日数分に関しては、その5日間の中に含める(ただし、時間単位の有休制度(新労基法第39条第4項)や使用者が独自に設定する特別休暇については、その対象に含めることはできないとされています)ことができます。ただ、そうなると、各労働者の有休の取得状況を確実に把握する必要も出てきます。そのための方策として、使用者には有休の管理簿の作成が義務付けられます。
なお、上記した「分割付与」の場合には、最初に分割付与された日から、当該年休の管理簿の作成が義務付けられるとされています。
「同省令」第24条の7(新設)(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。合わせて、平成30年12月28日付で厚生労働省労働基準局長名で都道府県労働局長宛に発出された通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問13/答13)(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)もご参照下さい。
また、参考までですが、福井労働局のホームページにおいて、「年次有給休暇取得管理台帳」なる様式が公開されていますので、様式の変更を行った上で利用されるのも一方法だと思います。

なお、全国社会保険労務士連合会から、業務ツールとして「年次有給休暇管理簿」が提供されました。これは、顧問先様などへの業務支援の一環として、我々社労士を介して顧問先様などに提供されるものであり、残念ながら一般公開されるものではありませんが、今般の労働基準法の改正により、平成31年4月1日から施行される「年次有給休暇(年5日間)の時季指定付与義務」に合わせて、「年次有給休暇管理簿」の作成及びその3年間の保存義務も課せられたことを踏まえ、主に、顧問先様などの人事総務部門の方々の年次有給休暇管理の効率化に資するためのツールとして開発されたものです。是非利用してみたいという意向がある顧問先様などに置かれましては、顧問社労士などを介し提供を受けられますようお願い申し上げます。

(新設条文)
新設された新労基法第39条第7項
『使用者は、第1項(初年度の年休)、第2項(次年度以後の年休)、第3項(比例付与)までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ)の日数のうち5日については、基準日(継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。 以下この項において同じ)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第1項から第3項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令(第24条の5第1項から第4項まで)で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。』
新設された新労基法第39条第8項
『前項の規定にかかわらず、第5項又は第6項の規定により第1項から第3項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。』

●平成30年12月28日付で厚生労働省労働基準局長名で都道府県労働局長宛に発出された通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)と題する文書を踏まえての主な留意事項について

①使用者による時季指定➣基準日からの1年間の期首に限らず、その途中でも構わない。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問1/答1)をご参照下さい。

②有休の日数が10日間以上である労働者の意味するところ➣あくまでも基準日に付与される年休の日数が10日間以上である労働者であることを規定したものであり、基準日に付与される年休の日数が10日間未満で前年度からの繰越分を合算して10日間以上となった労働者は対象外である。このことは、「比例付与」(新労基法第39条第3項)(短時間労働者等の、所定労働日数等が少ない労働者の年休の付与日数について、当該労働者の週所定労働日数に応じて付与する日数を定めたもので、週所定労働日数4日(年間所定労働日数を定めている場合は216日)以下かつ週所定労働時間30時間未満の労働者がその対象)の対象である労働者についても同様である。また、本来なら、基準日に付与される年休の日数が10日間未満である労働者に、法を上回って10日間以上の年休を付与した場合であっても、それは時季指定付与義務の対象にはならないとされています。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問2/答2)をご参照下さい。

③時間単位の年休制度(新労基法第39条第4項)(要労使協定)➣当該制度によって、労働者が時季指定により時間単位の年休を取得したとしても、使用者の時季指定付与義務が免除されるものではない。なお、労働者が同じく半日単位の年休(0.5日)を取得した場合には、使用者の時季指定付与義務が免除される。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問3/答3)(問11/答11)をご参照下さい。

④前年度からの繰越分の年休の取扱い➣その日数分については、使用者が時季指定すべき5日の年休から控除することができる。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問4/答4)をご参照下さい。

⑤基準日から1年間の期間(「付与期間」という)の途中に育休から復帰した労働者の取扱い➣原則として、5日間の年休を取得させる必要がある。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問6/答6)をご参照下さい。

「履行期間」の月数算出の結果、算出月数に端数が出た場合、さらに、時季指定すべき日数に端数が出た場合➣前者の場合では1箇月未満については1箇月に切上げ、後者の場合では1日未満については1日に切上げ、といった処理が望ましいとされています。
(同解釈にある事例)
・「第1基準日」→10.22
・「第2基準日」→翌年4.1
・「履行期間」→10.22から翌々年3.31(17箇月+10日(翌々年3.22から3.31までの日数))
・「履行期間」の最終月である翌々年3.22から同4.21までの暦日数→31日
・上記端数日数10日の月換算→端数日数10日/暦日数31日=0.32258・・・箇月
・「履行期間」の月数→17箇月+上記端数日数10日の月換算0.32258箇月≒17.32箇月
・最終的な時季指定すべき日数→17.32箇月/12×5≒7.21日(切り上げて8日にすることが望ましい。半日単位の年休制度があって、労働者が当該制度を希望した場合は、7.5日でも構わない)
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問9/答9)をご参照下さい。

⑦使用者による時季指定に当たっての労働者からの意見聴取及びその尊重について→新労基法第39条7項の基準日から1年を経過するまでの間の適時に、労働者から年休の取得を希望する時季をヒアリングし、そのヒアリングの結果をできる限り尊重するよう努力義務が課せられることになりました。→⑦については、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(=労働基準法等施行規則)(平成30年9月7日)」第24条の6(hatarakikatakaikaku_13.pdf へのリンク)において、下記の通り、規定されています。
『使用者は、新労基法第39条第7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。
第2項 使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。』
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問10/答10)をご参照下さい。

⑧事業場が独自に設けた法定の年休とは別の「特別休暇」(例えば、夏季休暇)→当該「特別休暇」を取得した日数分については、新労基法第39条第8項の日数には含まれない。つまり、時季指定すべき日数には含まれず、使用者の時季指定義務が免除されるものではないとされています。さらに、今回の法改正を契機に、当該「特別休暇」を年次有給休暇に振り替えることは法改正の趣旨に沿わず、 労働者と合意をすることなく就業規則を変更することが労働者にとって不利益になる場合には、その不利益変更が合理的である必要があるとされています。
また、法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日を、使用者が年休とし時季指定することについては、望ましくないものとされています。ただし、例えば、時効が到来した年休であったも、取得事由及び時季を限定せずに、法定の年休を引き続取得可能としている場合のように、法定の年休日数を上乗せするものとして付与されるものは除くとされています。また、例えば、取得事由及び時季を限定せずに、しかも年休と同じ要件で同じ賃金が支給されるリフレッシュ休暇についても除くとされています。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問12/答12)をご参照下さい。
同解釈の第3_年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(問17/答17)をご参照下さい。

➈出向者(在籍・移籍出向)、契約社員から正社員に転換した場合の取扱いについては、「改正労働基準法に関するQ&A」(hatarakikatakaikaku_61.pdf へのリンク)内の3-18、3-23において解説されていますので、ご参照下さい。

4.月60時間超の残業に対する割増賃金率の引き上げ➣中小企業への適用は令和5年4月1日
平成22年に改正(hatarakikatakaikaku_34.pdf へのリンク)され、時間外労働が月60時間を超えた場合の割増賃金率を5割以上にするもので、中小企業についてはその適用が当面猶予されてきたものですが、今般、その猶予措置が終了となりました。ただ、やはり中小企業の経営環境に配慮し、施行期日は令和5年4月1日とされました。
※なお、事例(平成30年11月の1箇月間の残業一覧表)(hatarakikatakaikaku_35_1.pdf へのリンク)(hatarakikatakaikaku_35_2.pdf へのリンク)をもって、月60時間超の残業に係る割増賃金額を算出するに至るまでの過程を示しましたので、ご確認いただければと思います。さらに、参考までに、フレックスタイム制(1ヶ月)を採用した場合で、月60時間超の残業になった場合の割増賃金額算出表も付加しました。

5.労働時間の客観的な把握(企業に義務付け)(新労働安全衛生法第66条の8の3)
※新労働安全衛生法(抄)はこちら(hatarakikatakaikaku_24.pdf へのリンク)から
●過重な労働による過労自殺や脳・心臓疾患等の発症事例が数多く発生しています。今後、そのようなリスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、労働者の健康管理が強化されます。先ず、その労働時間の把握については、管理監督者も含むすべての労働者を対象とし、省令において、タイムカードやPCの使用時間の記録といった客観的な方法その他適切な方法をもって行うよう義務付けられます。
●そして、従来から、同法(第66条の8)には、1週間当たりの法定労働時間である40時間(原則)を超えて働いた場合におけるその超えた時間が1箇月当たり100時間(休日に出勤して働く時間を含む)を超えた労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を受けさせなけれならない旨規定されていましたが、当該時間を規定している省令を改正し、それを1箇月当たり80時間超とすることになりました。

6.「フレックスタイム制」の拡充(新労基法第32条の3)
「フレックスタイム制」とは、予め決められた総労働時間について、各日の始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる制度のことを言います。
(従前の要件)
・就業規則その他これに準ずるものにより、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定め、かつ労使協定を締結することが必要。
清算期間として1箇月以内の期間を定め、その起算日を明示すること。
・清算期間の1週間平均の労働時間が法定労働時間40時間(原則)を超えない範囲内において、清算期間内の総労働時間を定めること。
例えば、H30.11.1から30までを清算期間とした場合で、40時間×(当該月の歴日数30日/7)≒171.4時間を総労働時間とした場合は、それは「法定労働時間の総枠」ということになります。
(改正点)
清算期間の上限を3箇月以内としたこと。
(主な新設項目)
清算期間を1箇月を超える期間とした場合、例えば、3箇月とした場合には、先ずは、当該清算期間(例えば、H30.9から11月)を平均し1週間当たりの労働時間が40時間(原則)を超えないこと、次に、その開始の日(H30.9.1)以後1箇月ごとに区分した期間(区分期間)ごとに、当該各区分期間(H30.9.1から30・10.1から31・11.1から30)を平均し1週間当たりの労働時間が50時間(完全週休2日制の場合で、1日2時間相当の時間外労働を想定)を超えないようにすること。なお、50時間を超える区分期間については、当該区分期間における割増賃金の支払対象となります。
➣平成30年12月28日付で厚生労働省労働基準局長名で都道府県労働局長宛に発出された通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」の第1_フレックスタイム制(問1/答1)(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)をご参照下さい。
-①の事例-
●40時間(原則)×(H30.9.1から11.30までの歴日数91日/7)=520時間→これが、「法定労働時間の総枠」ということになります。この「法定労働時間の総枠」を超えた場合(※)には、割増賃金の支払対象になります。
●H30.9月➣仮に、実労働時間が140時間である場合→この場合、50時間×(当該月の歴日数30日/7)≒214.2時間を超えていないので割増賃金の支払対象ではない。
●H30.10月➣仮に、実労働時間が170時間である場合→この場合、50時間×(当該月の歴日数31日/7)≒221.4時間を超えていないので割増賃金の支払対象ではない。
●H30.11月➣仮に、実労働時間が240時間である場合→この場合、50時間×(当該月の歴日数30日/7)≒214.2時間を超えているので割増賃金の支払対象(240時間-214.2時間=25.8時間分)となる。
●従って、①については、
先ず、原則となる「法定労働時間の総枠」(つまり、40時間×清算期間における暦日数/7)を超えているかどうかの判定を行うことになります。その際の基準は下記表の通りとなります。
清算期間における暦日数 法定労働時間の総枠
89日の場合 40時間×89/7≒508.5時間
90日の場合 40時間×90/7≒514.2時間
91日の場合 40時間×91/7=520時間
 92日の場合  40時間×92/7≒525.7時間
次に、清算期間内の各区分期間(各月)を平均して1週間当たりの労働時間が50時間を超えているかどうかの判定を行うことになります。その際の基準は下記表の通りとなります。
 各区分期間(各月)の
暦日数
1週間平均の労働時間が50時間となる場合の
各区分期間(各月)の労働時間 
 28日の場合  50時間×28/7=200時間
 29日の場合  50時間×29/7≒207.1時間
 30日の場合  50時間×30/7≒214.2時間
 31日の場合  50時間×31/7≒221.4時間
 「総実労働時間550時間」と「法定労働時間の総枠520時間」とを比較した場合、「総実労働時間」が30時間多いので、その部分でも割増賃金の支払対象になるということになります。ただし、法定労働時間の総枠を超えた時間のうち、ある区分期間で50時間を超えて、当該区分期間における割増賃金の支払の対象になった時間分については、法定労働時間の総枠を超えた時間から控除する必要があり、上記事例によると、当該30時間からH30.11月における超過時間である25.8時間を控除する必要はあり、従って、控除後の4.2時間分がさらに割増賃金の支払対象になります。

なお、当該判定により、清算期間内の各区分期間(各月)を平均して1週間当たりの労働時間が50時間を超えた時間が60時間を超えた場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。
同解釈の第1_フレックスタイム制(問3/答3の前段)(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)をご参照下さい。
また、法定労働時間の総枠を超えた時間で、当該区分期間(各月)における割増賃金の支払の対象になった時間分を控除しても、なお、それが60時間を超えている場合には、やはり、5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。
-具体的な計算式-
・清算期間を1箇月ごとに区分した期間における実労働時間数―50×清算期間を1箇月ごとに区分した期間における暦日数/7=ア
・総実労働時間数-法定労働時間の総枠-ア=イ
最終的には、「ア+イ=法定時間外労働」となりますが、アについても、イについても、60時間を超えている場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。
同解釈の第1_フレックスタイム制(問3/答3後段)(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)をご参照下さい。また、弊職が作成した下記図表もご参照下さい。なお、画面の左端が欠落しているかもしれませんので、その場合にはPDFを立ち上げていただければと思います。


-新労基法第36条第6項第2号及び第3号の適用について-
すなわち、時間外労働及び休日労働を合算した時間数が、1箇月について100 時間未満で、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超えないとした規定については、上記算式アの場合にも、同イの場合にも適用されることになります。➣同解釈の第1_フレックスタイム制(問4/答4)(hatarakikatakaikaku_49.pdf へのリンク)をご参照下さい。

1週間の所定労働日数が5日(完全週休2日制)である労働者について、清算期間における総労働時間を法定労働時間とした場合(つまり、清算期間の1週間平均の労働時間を法定労働時間である40時間(原則)を超えない範囲内として、清算期間の総労働時間とした場合)には、それは「法定労働時間の総枠」ということになりますが、労使協定により、清算期間の総労働時間を清算期間における所定労働日数に8時間を乗じて得た時間(この時間を「法定労働時間の総枠」に扱えるということになります)とする旨を定めた場合には、下記の算式によって得られた時間を超えない範囲内で労働させることができることになります。
「清算期間における所定労働日数×8時間」/「当該清算期間における日数(暦日数)/7」
-②の事例(a)-
・清算期間(3箇月)における所定労働日数→67日(ただし、このような日数になる巡りあわせは稀であると思われますが・・・)であった場合
・清算期間(3箇月)における日数(暦日数)→92日であった場合
 ➣「67日×8時間」/「92日/7」≒40.7時間→つまり、1週間の法定労働時間である40時間(原則)を超えることになりますが、清算期間を平均し1週間当たりの労働時間として約41時間まで労働させることができるということになります。
-②の事例(b)(H29.6月の1箇月で見た場合)(清算期間を1箇月とした場合)-

・清算期間(1箇月)における所定労働日数→22日とした場合
・清算期間(1箇月)における日数(暦日数)→30日
 ➣「22日×8時間」/「30日/7」≒41.1時間→同上

②は、完全週休2日制の場合では、曜日の巡り合わせの関係で、所定労働日数22日×8時間=176時間働いた場合、法定労働時間の総枠=週の法定労働時間40時間(原則)×清算期間における日数30日(暦日数)/7≒171.4時間とした場合を上回ってしまうという問題が発生し、それを回避するために、従来からは「通達による特例」というものを適用していましたが、それでもなお弊害があったために、その解消策として生み出されたものです。

※ただし、弊職が作成した下記図によれば、単月OR3箇月を清算期間とし、さらに土日祝及び年末年始の6日間(12.28から1.3まで)を除く日を所定労働日として、それぞれの清算期間内の所定労働日数を計算した上で、所定労働時間(所定労働日数×8時間)を清算期間中の総労働時間とした場合に、当該時間が法定労働時間の総枠(原則)(つまり、40時間×暦日数/7)を上回るのは、平成30年8月単月のみで、当該時間が184時間、法定労働時間の総枠(原則)が177.1時間(40時間×31日/7)となる場合で、週の法定労働時間(特例)は41.5時間(=(所定労働日数23日×8時間)/(31日/7))となりました。このように、上回るケースは滅多に発生しないのではないかと思われます。なお、これはあくまでも一事例ですので、参考程度にして下さい。


1箇月を超える清算期間を定めた場合には、労使協定を所轄労基署に届け出る必要があります。

※「清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届(様式第3号の3)」(厚生労働省ホームページ内特集ページ『「働き方改革」の実現に向けて』より)(hatarakikatakaikaku_17.pdf へのリンク)

7.「高度プロフェッショナル制度」の創設(新労基法第41条の2)
※当該制度の概要については、平成30年10月15日に開催された厚生労働省第147回労働政策審議会労働条件分科会において配布された資料『「高度プロフェッショナル制」の創設について』(hatarakikatakaikaku_32.pdf へのリンク)をご参照下さい。
※当該制度の対象業務については、平成30年10月31日に開催された厚生労働省第148回同分科会において配布された資料(素案)(hatarakikatakaikaku_39.pdf へのリンク)、さらに、平成30年11月14日開催の第149回同分科会に提出された同資料(素案)の修正版が公開されています。ご参照下さい。
※平成30年12月21日に開催された同分科会において提示された『労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱』(hatarakikatakaikaku_45.pdf へのリンク)及び『労基法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針案』(hatarakikatakaikaku_46.pdf へのリンク)につき、いずれも同分科会において、「おおむね妥当と考える」の結論を得たとのことです。
なお、当該制度の対象業務は下記の通りとなっています。
①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
②資産運用(指図を含む)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産 運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

8.産業医・産業保健機能の強化

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