遺族基礎・厚生年金の「遺族の要件」や「年金額」等について


令和1年8月25日更新

●遺族基礎年金

遺族基礎年金の【死亡した者の要件】等は別ページに掲載しています。

【遺族の要件】
被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時、その者によって生計を維持※されていた下記の者が該当します。
①子のある配偶者(なお、夫が支給対象となるのは、平成26年4月1日以後に妻が死亡した場合)
死亡した者の子と生計を同じくする配偶者で、子の要件については下記の通りであり、子のない配偶者や子と生計を同じくしていない配偶者には支給されません。
<子の要件>
・18歳到達年度の末日までにある子(つまり、例えば、○年1月5日生まれであれば、○年3月31日までということになります) であり、かつ、現に婚姻(事実婚も含む)していないこと
又は
・20歳未満で障害等級1級又は2級の障害の状態にある子であり、かつ、現に婚姻(事実婚も含む)していないこと
②子(ただし、被保険者等の法律上の子(実子、養子縁組した子、認知した子)に限られています)
上記<子の要件>に記載の通り。

死亡当時、死亡した者と生計を同じくし、年収850万円(所得ベースで655.5百万円)以上の収入を将来にわたって得られないと認められる必要があります。

【年金額】
遺族基礎年金は定額支給となっており、
<基本額>
配偶者(子にも受給権(同順位)があっても、支給されるのは配偶者になります。つまり、配偶者への支給が優先されるわけです。従って、その間は、子への支給は停止されることになります)に支給されることになる遺族基礎年金の額は
779,300円(≒法本来の年金支給額780,900円×平成30年度の改定率0.998)+下記の子の数に応じて加算される額との合計額になります。
なお、令和1(2)年度の改定率は0.999(1.001)とされています。
<加算額>
・子が1人の場合➣779,300円+(法本来の加算額224,700円×平成30年度の改定率0.998≒)224,300円×1=1,003,600円
・子が2人の場合➣779,300円+<(法本来の加算額224,700円×平成30年度の改定率0.998≒)224,300円×2>=1,227,900円
・子が3人の場合➣779,300円+<(法本来の加算額224,700円×平成30年度の改定率0.998≒)224,300円×2>+<(法本来の加算額74,900円×平成30年度の改定率0.998≒)74,800円×1>=1,302,700円 なお、4人目以降は、各74,800円を加算した額になります。

【遺族基礎年金の支給停止についての特記事項】
(子に特有の支給停止事由)
・配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき(配偶者に対する遺族基礎年金が配偶者自らの申出又は所在不明(その期間が1年以上であって、同じく遺族基礎年金の受給権者である子が申請した場合には当該配偶者の遺族基礎年金は支給停止され、遺族基礎年金は当該子に支給されることになります)により支給を停止されているときは除く)。
・生計を同じくするその子の父又は母があるとき➣代表的な事例で言うと、父親が死亡した場合で、当該父親に子のいない後妻(当該父親とは生計維持関係があった)がいる場合で、当該子は先妻の子(当該父親とは生計維持関係があった=当該父親の生前、定期的に養育費が支払われていた場合など)で先妻(実母)と生計を同じくしている場合が当てはまります。なお、この場合、当該後妻は、子と生計を同じくしていないため、遺族基礎年金の受給権は発生しないことになります。
●遺族厚生年金

遺族厚生年金の【死亡した者の要件】等は別ページに記載しています。

【遺族の要件】
・被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時、その者によって生計を維持※されていた下記の者が該当します。
①配偶者(妻に関しては、年齢要件は問われませんが、夫に関しては、55歳以上である必要があり、また、60歳までは支給停止されます)と子(上記遺族基礎年金にある<子の要件>に記載のある通り)➣配偶者と子は同順位ですが、ただし、子のある配偶者(遺族基礎年金の受給権あり)、子(遺族基礎年金の受給権はあるが、子のある配偶者には劣後する)、子のない配偶者(遺族基礎年金の受給権がそもそもなし)という優先順位がある
夫に関しては、遺族基礎年の受給権を有する場合は、60歳前であっても支給されます。
②父母(55歳以上である必要があり、また、60歳までは支給停止されます)
③孫(上記遺族基礎年金にある<子の要件>に記載のある通り)
④祖父母(55歳以上である必要があり、また、60歳までは支給停止されます)
・遺族の順位
上記の順位になります。

【遺族厚生年金の支給停止についての特記事項】
(子に特有の支給停止事由)
配偶者が遺族厚生年金の受給権を有するとき(配偶者に対する遺族厚生年金が配偶者自らの申出又は所在不明(その期間が1年以上であって、同じく遺族厚生年金の受給権者である子が申請した場合には当該配偶者の遺族厚生年金は支給停止され、遺族厚生年金は当該子に支給されることになります)により支給を停止されているときは除く)。
(配偶者に特有の支給停止事由)
配偶者に国民年金の遺族基礎年金の受給権がない場合(つまり、子と生計を同じくしていない場合)で、子に当該遺族基礎年金の受給権があるとき。この場合には、配偶者には遺族厚生年金も支給されません。

※参考までに、遺族厚生年金の受給権を妻が取得した場合で、当該妻特有の失権事由として
・当該妻が30歳未満で子がなかった場合(この場合には、遺族基礎年金の受給権はなし)には、遺族厚生年金の受給権を取得後5年経過した時に、当該受給権は消滅します。
・また、同じく30歳未満で子があった場合で遺族基礎年金の受給権もある場合で、ただ、30歳に到達する前に、例えば子の死亡により、遺族基礎年金の受給権が消滅した場合には、当該受給権消滅後5年経過した時に、遺族厚生年金の受給権も消滅します。
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これらは、平成19年4月に改正されたもので、妻自身の就労可能性を考慮して、5年間の有期年金としたものです。

【上記した遺族基礎年金と遺族厚生年金の支給停止事由を受けての具体的な事例】
・夫が死亡(老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給資格期間(原則、25年以上)を満たしているものとします)した場合
・夫は妻との間に16歳になる子Aがいて、さらに、愛人との間にも10歳になる子B(認知済)がいた場合で、妻・子A・子Bいずれとも生計維持関係にあった場合
・子Bは愛人(実母)と生計を同じくしている場合
①子Aが高校卒業(18歳年度末)するまで
・妻➣遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。
・子A➣遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権がありますが、妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されている間は支給停止されます。なお、子Aを対象として遺族基礎年金の子の加算があり、当該加算額は妻の遺族基礎年金に加算されます。
・子B➣遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権がありますが、妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されている間は支給停止されます。また、愛人である実母と生計を同じくしていることからも、遺族基礎年金は支給停止されます。
②子Aが高校卒業したとき
・妻➣遺族基礎年金は失権(子のない妻になるから)し、遺族厚生年金は支給停止される。
・子A➣遺族基礎年金と遺族厚生年金が失権します。
・子B➣遺族厚生年金の支給停止は解除されます。ただ、愛人である実母と生計を同じくしていることから、遺族基礎年金の支給停止は継続されます。
③子Bが高校卒業したとき
・妻➣遺族厚生年金の支給停止は解除されます。
・子B➣遺族基礎年金と遺族厚生年金が失権します。

【年金額】
人事労務トピックスにある「年金受給資格期間短縮に伴う変更点等について」の中で掲載しています「遺族厚生年金の支給要件」において述べました「短期要件」「長期要件」ごとに、当該年金額の計算方法に違いがあります。
<短期要件の場合>
(原則=A)
<(平成15年3月までの平均標準報酬月額(標準賞与額を含んでいないから)を×7.125(給付乗率・定率)/1000×同月までの被保険者期間の月数)+(平成15年4月以後の平均標準報酬(標準賞与額を含んでいるから)×5.481(給付乗率・定率)/1000×同月以後の被保険者期間の月数)>×300/全被保険者期間の月数×3/4➣障害厚生年金の額(同じ算式となっています)×3/4相当となります

なお、実際の被保険者期間の月数が300に満たない場合には、300とみなす措置が講じられています。また、長期要件の対象となる老齢厚生年金の受給資格期間(つまり、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間が25年以上)を満たしている者が、短期要件の対象となる厚生年金保険の被保険者期間中(つまり、在職中)に死亡した場合は、両要件が重複しますが、その場合には、特に申出がなれれば、短期要件として計算されることになります。
(65歳以上(平成19年4月1日以後に65歳になる者が対象)の配偶者が自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合=B)
上記した(原則=A)以外の支給方式として、下記の方式があります。
原則の額×2/3+配偶者自身の老齢厚生年金の額(経過的加算を含む)×1/2=<(平成15年3月までの平均標準報酬月額(標準賞与額を含んでいないから)を×7.125(給付乗率・定率)/1000×同月までの被保険者期間の月数)+(平成15年4月以後の平均標準報酬(標準賞与額を含んでいるから)×5.481(給付乗率・定率)/1000×同月以後の被保険者期間の月数)>×300/全被保険者期間の月数×3/4×2/3(つまり、死亡した者の老齢厚生年金の1/2相当)+配偶者自身の老齢厚生年金の額(経過的加算を含む)×1/2
➣この場合には、「遺族厚生年金」の額としてはAかBかいずれか多い方の額となり、つまり、多い方の額全体が一旦「遺族厚生年金」の額とされますが、ただし、この場合には、配偶者自身の老齢厚生年金の額が算定されていることから、先ずその部分が優先的に支給されることになり、最終的な「遺族厚生年金」の額としては、その差額分のみが自動的に支給されることになります。Aの場合が多かろうが、Bの場合が多かろうが、65歳以上の配偶者自身に老齢厚生年金の額が算定された場合には、上記の措置が施されることになります。

なお、下記の「経過的寡婦加算」が加算される場合には、Aの場合であれば、原則=Aの額+経過的寡婦加算 という算式によって、Bの場合であれば、(原則=Aの額+経過的寡婦加算)×2/3+配偶者自身の老齢厚生年金の額×1/2 という算式によって求められたものが遺族厚生年金額となり、いずれか多い方の額ということになります。

※当該措置の目的は自身が納めた保険料を年金額に反映させるためのものとされています。ただ、あくまでも私見ですが、この措置の意味するところは、課税対象となる老齢厚生年金の額を確保するといった租税政策上の観点からのものではないかと思料するところです。ちなみに、障害年金や遺族年金は非課税になっているからです。

<長期要件の場合>
(原則=A)
<(平成15年3月までの平均標準報酬月額(標準賞与額を含んでいないから)を×7.125(昭和21年4月2日以後の生年月日の者の場合の乗率※)/1000×同月までの被保険者期間の月数)+(平成15年4月以後の平均標準報酬(標準賞与額を含んでいるから)×5.481(昭和21年4月2日以後の生年月日の者の場合の乗率※)/1000×同月以後の被保険者期間の月数)>×300/全被保険者期間の月数×3/4➣死亡した者の老齢厚生年金の額×3/4相当となります

なお、実際の被保険者期間の月数が300に満たない場合の300にみなす措置は講じられません。
乗率は、死亡した者の生年月日による読替えを行うことになっており、昭和21年4月1日以前の生年月日の場合の乗率は「年金給付の経過措置一覧(H30年度)」(7_1_1_1.pdf へのリンク)をご参照下さい。
(65歳以上(平成19年4月1日以後に65歳になる者が対象)の配偶者が自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合=B)
上記した(原則=A)以外の支給方式として、下記の方式があります。
原則の額×2/3+配偶者自身の老齢厚生年金の額(経過的加算を含む)×1/2=<(平成15年3月までの平均標準報酬月額(標準賞与額を含んでいないから)を×7.125(昭和21年4月2日以後の生年月日の者の場合の乗率※)/1000×同月までの被保険者期間の月数)+(平成15年4月以後の平均標準報酬(標準賞与額を含んでいるから)×5.481(昭和21年4月2日以後の生年月日の者の場合の乗率※)/1000×同月以後の被保険者期間の月数)>×300/全被保険者期間の月数×3/4×2/3(つまり、死亡した者の老齢厚生年金の1/2相当)+配偶者自身の老齢厚生年金の額(経過的加算を含む)×1/2
➣以下、<短期要件>に同じ。

なお、下記の「経過的寡婦加算」が加算される場合には、Aの場合であれば、原則=Aの額+経過的寡婦加算 という算式によって、Bの場合であれば、(原則=Aの額+経過的寡婦加算)×2/3+配偶者自身の老齢厚生年金の額×1/2 という算式によって求められたものが遺族厚生年金額となり、いずれか多い方の額ということになります。

<中高齢寡婦加算>
遺族厚生年金の受給権者である妻(のみです)が、下記のいずれかに該当するときに、当該妻が40歳から65歳(つまり、妻自身の老齢基礎年金が支給される)までの間、加算されます。
①夫の死亡当時、40歳以上65歳未満であって、遺族基礎年金の加算対象となる子がいないために遺族基礎年金を受けることができない妻の場合
遺族基礎年金を受けることができる子のある妻(つまり、当該妻は当該子と生計を同じくしていることが必要)であって、当該子が18歳到達年度の末日が終了したとき、又は、障害等級1級又は2級の障害の状態にある子が20歳に達したとき、40歳以上65歳未満の妻の場合➣この場合には、夫の死亡当時に当該妻が40歳未満であってもいい。ただし、遺族基礎年金を受けることができる間は、中高齢寡婦加算は支給停止され、例えば、子が18歳到達年度末日終了後65歳までは中高齢寡婦加算が支給されることになります。
また、中高齢寡婦加算は、死亡した夫が長期要件による遺族厚生年金を受給する場合には、当該夫の厚生年金保険の被保険者期間が240ヶ月(中高齢者の特例を含む)以上なければなりません。
(中高齢寡婦加算の額)
遺族基礎年金の額(基本額)の3/4相当額
779,300円(≒法本来の年金支給額780,900円×平成30年度の改定率0.998(令和1(2)年度の改定率は0.999(1.001)))×3/4≒584,500円(585,100円)(586,300)

<経過的寡婦加算>
妻が65歳に達すると妻自身の老齢基礎年金を受けることができるようなります。昭和61年4月1日からの「基礎年金制度(新法)」の導入により、その時点で20歳以上の者(例えば、昭和41年4月2日生まれの者であれば、昭和61年4月1日に20歳に達する)であれば、その後の20歳以上60歳未満(昭和61年4月からの国民年金への強制加入により、昭和61(1986)年4月から2026年3月までの40年間が保険料納付済期間であれば、満額の老齢基礎年金を受けることができるわけです。しかし、例えば、昭和31(1956)年4月1日生まれの者であれば、昭和61年3月31日に30歳に達することになりますが、国民年金への強制加入になるのは昭和61年4月からなので、この場合であれば、昭和61(1986)年4月から平成28(2016)年2月(平成28年3月に60歳に達するので、平成28(2016)年2月では60歳未満になります)までの29年11箇月ということで30年未満ということになり、当該期間が保険料納付済期間であれば、老齢基礎年金の額は779,300円(平成29(30)年度)×359/480≒582,851円となり、中高齢寡婦加算の額である584,500円を下回り、65歳からの老齢基礎年金を受けることで却って年金の額が減ってしまうという弊害が生じることになってしまいます。この弊害を避けるために設けられたものが「経過的寡婦加算」なのです。
なお、対象は昭和31年4月1日以前生まれの妻になります。
(経過的寡婦加算の額)
経過的寡婦加算の額=中高齢寡婦加算の額-(老齢基礎年金の満額×妻の生年月日に応じた乗率)

※平成30年度の「経過的寡婦加算」の表(7_1_1_2.pdf へのリンク)を作成していますので、ご参照下さい。
令和1年度の「経過的寡婦加算」の表(7_1_1_3.pdf へのリンク)はこちらからどうぞ。
令和2年度の「経過的寡婦加算」の表(7_1_1_4.pdf へのリンク)はこちらからどうぞ。

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