老齢基礎年金の繰上げ・繰下げについて


※繰下げ受給については、厚生労働省年金局より第12回社会保障審議会年金部会に対して、その見直し案が提示(令和1年10月18日)されています。人事労務トピックスにある「在職老齢年金受給や繰下げ受給に係る見直し案について」もご参照下さい。

【老齢基礎年金に係る繰上⽀給と繰下⽀給の損益分岐表(Excel)】
ご自分が受ける年金額に基づき、適宜、カスタマイズしていただければ結構です。
ご参考までに・・・

【老齢基礎年金算出表(Excel)】
ご自身の年金記録をご入力いただき、ご活用下さい。また、適宜、カスタマイズしていただければ結構です。ご参考までに・・・

では、以下本題です。
【老齢基礎年金の繰上げについて】
⽼齢基礎年⾦は原則として65歳から受けることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間で繰上げ支給の老齢基礎年金を受けることができます。
昭和16年4月2日以後に生まれた者については、繰上げ請求をした時点(月単位)に応じて年⾦額が減額され、その減額率は⼀⽣変わりません。従って、当該選択には慎重な判断が必要とされています。
<繰上げの方法>
・繰上げの⽅法には「全部繰上げ(つまり、通常の繰上げ)」と「⼀部繰上げ」があります。
「一部繰上げ」が可能となるのは、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢(これを「特例支給開始年齢」と言います)が61歳から64歳とされている者(第1号厚生年金保険被保険者の女子以外の者の場合は昭和16年4月2日から昭和24年4月1日まで、第1号厚生年金保険被保険者の女子の場合は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた者)で、これらの者の場合には「全部繰上げ」又は「⼀部繰上げ」のいずれかを選べることになっています。下記に事例図を掲載しています。ご参照下さい。
<老齢基礎年金の全部繰上げの場合>

(全部繰上げの場合の留意点)
・全部繰上げの請求は65歳に達する前までに行うことが可能です。
・下記減額率によって計算(月単位)された年⾦額が算出されます。
減額率➣0.5%(5/1000)×繰上げ請求⽉から65歳に達する⽇の属する月の前⽉までの⽉数
(例)
60歳で繰上げ請求した場合➣5/1000×60=0.3(30%)
62歳6ヶ月目で繰上げ請求した場合➣5/1000×30=0.15(15%)
ただし、昭和16年4⽉1⽇以前に⽣まれた者については、月単位ではなく、年単位での計算になり、下記のようになります。
60歳0箇⽉から60歳11箇⽉ 42%
61歳0箇⽉から61歳11箇⽉ 35%
62歳0箇⽉から62歳11箇⽉ 28%
63歳0箇⽉から63歳11箇⽉ 20%
64歳0箇⽉から64歳11箇⽉ 11%
・特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給がある者(つまり、第1号厚生年金保険被保険者の女子以外の者の場合は昭和16年4月2日から昭和24年4月1日まで、第1号厚生年金保険被保険者の女子の場合は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた者)については、全部繰上げをすることで、定額部分の持つメリット(段階的であるとはいえ、65歳前に「老齢基礎年金相当額」を受給できる、しかも、その額は一般的には、原則65歳から受給できる老齢基礎年金の額よりも多いといったこと)を享受できなくなってしまいます。そのような弊害を回避するために、下記の「一部繰上げ」が制度化されているわけです。
・付加年金が支給される場合には、老齢基礎年金と同じく繰上げ支給され、減額率も同じく適用されます。
振替加算に関しては、65歳から減額されずに支給されます。
・国⺠年⾦任意加⼊被保険者は繰上げ請求ができず、また、繰上げ請求後に任意加⼊することもできません。保険料を追納(保険料納付の免除を受けた期間の保険料の遡及納付のこと)することもできなくなります。
・受給権は請求書が受理された⽇に発⽣し、年⾦は受給権が発⽣した⽉の翌⽉分から⽀給
されます。受給権発⽣後には繰上げ請求の取消しや変更をすることは一切できなくなります
繰上げ請求した後は、事後重症等による障害基礎年⾦を請求することができなくなります
当該繰上げ請求することで65歳に達している者と同様な扱いを受けることになり、
①原則的な障害基礎年金のうち被保険者であった者に支給される障害基礎年金
②事後重症による障害基礎年金
③基準障害による障害基礎年金
④事後重症型の20歳前の傷病による障害基礎年金
「その他の障害」による受給権者の改定請求
といったものには、
①初診日において、被保険者であった者で、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること
②③65歳に達する日の前日までに規定の障害の状態に該当すること
④初診日において20歳未満であった者(初診日において被保険者でなかった者に限ります。つまり、20歳前から就職し、国民年金の第2号被保険者(原則、20歳以上60歳未満という年齢要件がありません)となっていた者は対象外だということです)が、20歳に達した日(障害認定日が20歳に達した日後であるときは、その障害認定日)後65歳に達する日の前日までに規定の障害の状態に該当すること
⑤障害基礎年金の受給権者に、新たに障害等級(1級又は2級)に該当しない程度の障害(これを「その他の障害」と言います)が発生した場合に、「その他の障害」の障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間に、前後の障害を併合したものが従前の障害の程度より増進した場合に、その期間内に、障害基礎年金の額の改定請求ができるというもの。基本的には、従前が2級で「その他の障害」を併合することで1級程度になる場合が想定されると思われます。
といった要件があり、65歳に達している者と同様な扱いを受けることでそれら要件を満たせなくなるからです。
・繰上げ請求した後は、寡婦年⾦は⽀給されません。また、既に寡婦年⾦を受けている者については、寡婦年⾦の受給権がなくなります。寡婦年金の妻自身の要件のひとつとして65歳未満であることが求められており、65歳に達している者と同様な扱いを受けることでその要件を満たせなくなるからです。
・繰上げ請求した場合、65歳になるまでは遺族厚⽣(共済)年⾦を併給できません。
といった制約事項がありますので、十分ご留意下さい。
・上記各項目以外の留意点については、上記図表の中に注記していますので、是非ご確認下さい。
<老齢基礎年金の一部繰上げの場合>

(一部繰上げの場合の留意点)
・⼀部繰上げの請求は、特別⽀給の⽼齢厚⽣年⾦の定額部分の⽀給開始年齢(特例支給開始年齢)前まででなければ⾏うことができません。
・下記減額率によって計算(月単位)された年⾦額が算出されます。
減額率➣0.5%(5/1000)×繰上げ請求⽉から65歳に達する⽇の属する月の前⽉までの⽉数
全部繰上げに同じ。
・付加年金が支給される場合には、老齢基礎年金と同じく繰上げ支給され、減額率も同じく適用されます。
振替加算に関しては、65歳から減額されずに支給されます。
・国⺠年⾦任意加⼊被保険者は繰上げ請求ができず、また、繰上げ請求後に任意加⼊することもできません。保険料を追納(保険料納付の免除を受けた期間の保険料の遡及納付のこと)することもできなくなります。
・受給権は請求書が受理された⽇に発⽣し、年⾦は受給権が発⽣した⽉の翌⽉分から⽀給
されます。受給権発⽣後には繰上げ請求の取消しや変更をすることは一切できなくなります
繰上げ請求した後は、事後重症等による障害基礎年⾦を請求することができなくなります
全部繰上げに同じ。
・繰上げ請求した後は、「障害者の特例」及び「⻑期加⼊者の特例」を受けることができなくなります。
・繰上げ請求した後は、寡婦年⾦は⽀給されません。また、既に寡婦年⾦を受けている者については、寡婦年⾦の受給権がなくなります。理由は全部繰上げに同じ。
・繰上げ請求した場合、65歳になるまでは遺族厚⽣(共済)年⾦を併給できません。
・上記各項目以外の留意点については、上記図表の中に注記していますので、是非ご確認下さい。
・なお、一部繰上げの対象である、第1号厚生年金保険被保険者の女子以外の者の場合では昭和16年4月2日から昭和24年4月1日まで、第1号厚生年金保険被保険者の女子の場合では昭和21年4月2日から昭和29年4月1日までの間に生まれた者については、例えば、その中でも最年少となる昭和29年4月1日生まれの第1号厚生年金保険被保険者の女子の場合でも、平成31年3月31日に65歳に達することから、その後は、この一部繰上げの対象者はなくなってしまうことになります。

※上記各図表にある「経過的加算(相当額)」については、人事労務トピックスにある「老齢厚生年金に加算される経過的加算について」をご参照下さい。



【老齢基礎年金の繰下げについて】
昭和16年4⽉2⽇以後に⽣まれた者については、繰下げ申出をした時点(月単位)に応じて年⾦額の増額が⾏われることになります。また、その増額率は⼀⽣変わりません。
そして、下記増額率によって計算(月単位)された年⾦額が算出されます。
増額率➣0.7%(7/1000)×65歳に達した(受給権を取得した➣下記図表参照)月から繰下げ申出日(繰下げ申出があったとみなされる日➣下記図表参照)の属する月の前月までの⽉数
(例)
66歳で繰下げ申出をした場合➣7/1000×12=0.084(8.4%)
67歳6ヶ月目で繰下げ申出をした場合➣7/1000×30=0.21(21%)
ただし、昭和16年4⽉1⽇以前に⽣まれた者については、月単位ではなく、年単位での計算になり、下記のようになります。
66歳0箇⽉から66歳11箇⽉ 12%
67歳0箇⽉から67歳11箇⽉ 26%
68歳0箇⽉から68歳11箇⽉ 43%
69歳0箇⽉から69歳11箇⽉ 64%
70歳0箇⽉から88%

<繰下げの要件>
老齢基礎年金の受給権を有する者で、原則として66歳に達する前に老齢基礎年金の裁定請求をしていなかった者は繰下げの申出が可能です。
原則以外として、老齢基礎年金の受給権を取得した日から1年経過した日前に老齢基礎年金の裁定請求をしていなかった者も繰下げの申出が可能です。
<繰下げの場合の留意点>
●繰下げ申出ができるのは他の年金給付の受給権を取得するまでの間で、原則として、65歳に達した時点に他の年金たる給付の受給権者であったとき、又は65歳に達した日から66歳に達した日までの間に他の年金たる給付の受給権を取得した場合には、繰下げ申出ができなくなります
原則以外として、「当該老齢基礎年金の受給権を取得した時点に」、又は「当該老齢基礎年金の受給権を取得した日から1年を経過した日までに」に置き換えた場合が当てはまります。
●また、66歳に達した日(当該老齢基礎年金の受給権を取得した日から1年を経過した日)後であれば、他の年金たる給付の受給権を取得した場合でも、当該老齢基礎年金の繰下げ申出ができます。ただ、他の年金たる給付の受給権が発生した時点で増額率が固定され、その場合には、
①65歳からの本来支給の老齢基礎年金を遡及して請求する。この場合には、65歳まで遡及して当該時点までの分が一括支給され、当該時点からは、本来支給の老齢基礎年金を受給することになるわけです。
OR
②当該時点での増額率に基づき繰下げ支給の老齢基礎年金の申出をする(ただし、平成17年3月31日以前に他の年金たる給付の受給権が発生した場合には②の選択はできません)。
OR
③他の年金たる給付を請求する。この場合には、65歳まで遡及して当該時点までの本来支給の老齢基礎年金が一括支給され、当該時点からは他の年金たる給付を受給することになるわけです。
いずれかの選択になります。
繰下げ申出があったとみなされる場合があります。

上記3つの留意点については、上記図表にも注記していますので、是非ご確認下さい。

・付加年金が支給される場合には、老齢基礎年金と同じく繰下げ支給され、増額率も同じく適用されます。
振替加算に関しては、繰下げしても増額されません。また、老齢基礎年金が繰下げ支給されるときからの加算となります。なお、この「繰下げ支給されるときからの加算」については、振替加算がない場合の繰下げの申出との間で、損益分岐点の部分で、前者の場合の方が若干後ずれすることになるものと思われます。ご留意下さい。その表(Excel)(シート名_平成31年度(振替加算))を作成してみましたので、ご参考になさって下さい。

<70歳に達した後に繰下げの申出を行った場合についての特記事項>
平成26年3月31日までは、この場合には、申出月の翌月から年金支給の取扱いでしたが、平成26年4月1日からは、70歳到達月に遡及して支給する取扱いに改正されています。

例えば、72歳の時点で繰下げ申出(65歳で老齢基礎年金の受給権を取得した場合で、ただし、70歳以降の繰下げ申出の場合はどの時点てあっても、増額率は7/1000×60=0.42(42%)で固定されます)を行った場合には、70歳到達月まで遡及されますので、2年間分が72歳の時点で一括支給されることになるわけです。その場合の支給額(老齢基礎年金が満額支給される場合)を例示しますと、
・779,300円(平成30年度の満額の年金額)(令和1(2)年度の満額の年金額➣780,100(781,700)円)➣×1.42×2=2,213,212円
・その後は、増額率が反映された年金額1,106,606円が支給されます。

あるいは、72歳の時点で繰下げの申出を敢えてせず、遡及請求して、その遡及分の一括受給を選択することもできます。ただし、年金の請求に関しては、時効が5年とされていますので、5年分しか遡及できませんのでご留意下さい。その場合の支給額(老齢基礎年金が満額支給される場合)を例示しますと、
・779,300円(平成30年度の満額の年金額)×5=3,896,500円(令和1(2)年度の満額の年金額➣780,100(781,700)円)
・その後は、779,300円(平成30年度の満額の年金額)(令和1(2)年度の満額の年金額➣780,100(781,700)円)が支給されます。

となると、選択制故に、損益分岐点が気になるところですが、その表(Excel)を作成してみましたので、ご参考になさって下さい。上記事例で考えると、79歳辺りが損益分岐点になるものと思われます。男性の平均寿命との兼ね合いからすると、微妙な気もしますが・・・。なお、現実的には、女性は男性より長生きしますので、そのことだけを見れば、女性の場合は繰下げの申出を選択されるのがいいのかもしれません。
参考までに、70歳時点で繰下げ申出をせず、過去5年分を遡及請求し、当該部分を一括受給した場合と70歳時点で繰下げの申出をした場合を比較すると、80歳辺りまでは前者の方が有利なようですが、その後は逆転するようです。これまた、微妙ですね・・・
結論から言うと、長生きできる自信がある場合は、繰下げ申出の方が得策かもしれません。

【老齢厚生年金の繰上げ・繰下げについて】
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