成年後見人等業務


【成年後見制度について】
認知症、知的・精神障害等の理由により、それら判断能力が不十分な方々は、不動産や預貯金等の財産管理、介護サービスの利用や施設への入所といった場面において、自身にとって不利益な契約を結んでしまう場合もあり、また、口車に乗せられて悪徳商法等の被害に遭うこともあります。そのような判断能力が不十分な方々の財産や権利を守るために、法律面や生活面から保護支援する仕組みのことを言います。

なお、当該制度については、裁判所(裁判所WEBサイトへリンク)を始め様々な機関からリーフレット等が発行されており、詳細な解説に関してはそれらに譲り、本ページにおいては、その概要に留めることとし、むしろ、当該制度が抱える問題点やそれを踏まえての動向、当該制度の変更点、当該制度を利用するために用意されている様々な仕組み、さらには、当該制度において成年後見人等が担う「財産管理」と「身上監護」のうち「財産管理」を補完し、相続や遺言制度に替わり得る「家族信託」制度(準備中)についても言及したいと思います。また、肉親の死後において、残された遺族が行うべき様々な死後の手続のうち、社会保険労務士が関与(代行)できる部分についても紹介し、その一端を担えることをお伝えしたいと思います。

ある方からのお問い合わせに接したことに伴って、その方に向けて発した弊職作成の文書(seinenkoken_20.pdf へのリンク)を披露しておきます。成年後見制度のメリットだけでなく、デメリットも明らかにしておきます。その中で言及している悪弊はほんの一握りの成年後見人等を務める専門職がもたらしたものあることを重々ご理解いただいた上でお読みいただけれはと思います。世には、「成年後見制度の闇」ど題した書籍が発刊されるなど成年後見制度を取り巻く環境は逆風が吹く感がありますが、決して悪いことばかりではないよう、我々専門職は襟を正して職責を果たすべきだと思います。

【成年後見制度の種類】
1.法定後見制度

成年後見 保佐 補助
対象者 判断能力が
全くない
判断能力が
著しく不十分な人
判断能力が
不十分な人
申立人 本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長、検察官など
申立についての本人の同意の要否 不要 不要 必要
同意権・取消権➣申立書本体下部にある「同意権付与申立書」参照 日常生活に関する行為以外のすべての法律行為(同意権はなし) ・日常生活に関する行為を除き民法第13条第1項に定める行為
本人の同意を前提に、申立により、同項に定める行為に追加して定めてもらうことができる行為
本人の同意を前提に、日常生活に関する行為を除き申立の範囲内で家裁の審判で定める特定の法律行為(同項に定める行為の一部)➣「同意行為目録」参照
代理権➣申立書本体下部にある「代理権付与申立書」参照 すべての法律行為 本人の同意を前提に、申立の範囲内で家裁の審判で定める特定の法律行為「代理行為目録」参照 本人の同意を前提に、申立の範囲内で家裁の審判で定める特定の法律行為「代理行為目録」参照
民法第13条第1項
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条但書に規定する行為(日常生活に関する行為)については、この限りでない。
1 元本を領収し、又は利用すること。
2 借財又は保証をすること。
3 
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 訴訟行為をすること。
5 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9 第602条に定める期間を超える賃貸借(短期賃貸借で、建物の賃貸借3年、動産の賃貸借 6箇月など)をすること。

<申立てに必要な書類一覧(中核機関のひとつである社会福祉法人神戸市社会福祉協議会_神戸市成年後見支援センターより配布された資料「成年後見制度の利用をお考えの方に-利用するための手続き案内-」から抜粋)(seinenkoken_6.pdf へのリンク)>
平成30年1月時点の情報です。その後、その必要書類の中で、
「診断書」(seinenkoken_4.pdf へのリンク)については、平成31年4月1日より書式の改定がなされています。
●また、医師による診断書作成の際の補助資料、裁判所の審判の際の資料、成年後見等の手続開始前での中核機関における支援内容の検討資料等の位置付けとして「本人情報シート」(seinenkoken_5.pdf へのリンク)という書式が同日より新たに設けられています。これは、福祉面において支援している福祉関係者(主に、ケアマネジャー)が作成するものとされています。

※申立てに必要な書類に関しては、裁判所WEBサイトより「後見等関係手続の書類_成年後見等申立セット」として、一括してダウンロードできますのでご活用下さい。なお、当該ファイルはZIPファイルになっていますので、ダウンロードの際にはご留意下さい。
※法定後見制度については、親族が申立人となって、親族自身が申立書を作成するには多大な労力を要することになります。その場合には、当該作成を司法書士や弁護士に委任することができます。なお、社会保険労務士は残念ながら、当該作成そのものの受任については制限を受けていますが、その相談に乗ることはできますので、遠慮なくお申し付け下さい。なお、弊職は、神戸家庭裁判所の「成年後見人等候補者名簿」に登載されており、成年後見人等の業務を行うこと自体は差し支えありません。

<最高裁から各家裁への通知(平成31年1月発出)について>
(成年後見人等の選任について)
●成年後見制度において、現状、家裁が選定する成年後見人等は8割が司法書士や弁護士といった専門職が占めています。しかし、元々、それら専門職は「財産管理」が主体であった経緯もあり、ともすれば、「身上監護」に重きを置く状況ではなかったとされています。そのような中、例えば、知的障害者やその家族(特に、親)が成年後見制度を利用するに当たっては、その親亡き後に備え、「身上監護」への期待が大きいのは言うまでもありません。
●平成28年5月に施行された「成年後見制度の利用の促進に関する法律」に基づき、「成年後見制度利用促進基本計画」が策定され、その中では、「身上監護」が重視され、それを踏まえ、適切な成年後見人等の選任や成年後見等開始後の柔軟な成年後見人等の交代が謳われました。
●それらを踏まえ、最高裁では、成年後見人等の選任で相応しい親族がいれば「選任が望ましい」とする通知を発することになったものです。
(成年後見人等の報酬について)
●成年後見人等への報酬については、従来から、個々の裁判官が、業務量や難易度に問わず一律の額にしたり、利用者の資産額を考慮してその額を決めたりといった具合に、全国的に統一した基準が存在したわけではありませんでした。
●利用者側からは、「仕事をしていなくても報酬額が高い」といった批判が多く寄せられ、一方、専門職側からも、「業務量や難易度に応じた報酬額ではなく、割が合わない」といった不満が高まっていました。
●それら批判や不満を受け、最高裁では、業務量や難易度といった個別事情に配慮する、「身上監護」への取組重視に高い評価を与える等そうした算定方法への見直しを促したものです。

2.任意後見制度
●本人に十分な判断能力がある間に、判断能力が低下した時に備えて、あらかじめ、任意後見受任者(将来、任意後見人になる人)との間で、その任意後見人に代理権を付与する旨の契約(任意後見契約➞公正証書にする必要があります)をしておくものです。
●そして、その後、実際に判断能力が低下した時に、任意後見監督人の選任の申立てをすることで初めて、任意後見人による任意後見が開始されることになります。
●ただし、法定後見のように、任意後見人には同意権も取消権もありません。任意後見契約時に定めた代理権のみ(その部分において、問題点が指摘されています)の行使です。

<申立人>
本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者

<任意後見監督人の選任>
家裁が選任します。

<任意後見人の事務と報酬>
任意後見契約に基づき「財産管理」や「身上監護」等の事務を行います。報酬は、当該契約で定めた額が支払われます。

<任意後見監督人の事務と報酬>
本人に代わって任意後見人の事務を監督します。報酬は、家裁が決定します。

<任意後見監督人の選任の申立てに必要な書類一覧>
裁判所WEBサイトよりご確認下さい。

<任意後見契約との組み合わせについて>
(見守り契約)

・任意後見契約が始まるまでの間、任意後見受任者等に本人の生活や健康状態の把握を行ってもらうことで、任意後見の開始時期の相談をしたり、その判断をしてもらったりする契約です。従って、任意後見契約が開始されると見守り契約は終了します。
・任意後見契約と併用する場合は、任意後見受任者を契約相手とするのがいい。
・なお、信頼できる人であれば、契約相手は親族でも専門職でもいい。
(財産管理委任契約)
・任意後見契約と併用する場合は、任意後見受任者を契約相手とするのがいい。
・この場合も、任意後見契約が開始されると財産管理委任契約は終了します。
・なお、信頼できる人であれば、契約相手は親族でも専門職でもいい。
・基本的には、公正証書にします。
(死後事務委任契約)
・本人の死後に発生する医療関係の費用の清算や葬儀等の事務を委任する契約です。
・任意後見契約と併用する場合は、任意後見受任者を契約相手とするのがいい。
・なお、信頼できる人であれば、契約相手は親族でも専門職でもいい。
・基本的には、公正証書にします。

3.その他の仕組み
<後見制度支援信託について>(seinenkoken_7.pdf へのリンク)
●成年被後見人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭(金銭のみであって、不動産や動産、投資信託等の金融商品は対象外です)を預貯金として成年後見人が管理し、その他の通常使用しない金銭については信託銀行等(seinenkoken_8.pdf へのリンク)に信託する仕組みのことを言います。これは、成年後見のみが利用できるものであり、保佐・補助類型や任意後見では利用できません。
●当該制度は、家裁が当該制度を利用すべきであると判断した場合には、先ずは、専門職を後見人として選任(同時に、親族後見人を選任し役割分担させる場合もあるとのことです)し、その専門職の検討を経て、その専門職も当該制度の利用が適当であると判断した場合には、家裁に報告書を提出し、家裁の最終的な判断を仰ぐという段階を経ることになります。 そして、最終的に当該制度の利用が適当であるということになれば、家裁から専門職後見人に対して「指示書」が発せられ、専門職後見人は当該指示書をもって信託銀行等との間で信託契約を締結するという運びとなります。
●その後、専門職後見人としての関与の必要がなくなれば辞任し、以後は親族後見人(当初に選任されていなければ、当該時点で新たに選任されることになります)が当該財産を引き継ぐことになります。
●本人の収支状況がマイナスになることが見込まれる場合には,信託財産から必要な金額が定
期的に送金される仕組みにすることもできます。なお、当該設定時には、家裁の指示書が必要になります。
●また、信託契約締結後に,多額の支出を迫られたり、定期交付金額の変更,追加信託,信託契約の解約を行う場合には,その都度、家裁の発行する指示書が必要になります。
●報酬については、家裁が選任する専門職後見人に対する報酬とともに、信託銀行等に対する報酬も必要になります。
●本人の預貯金等の財産内容によっては、家裁から当該制度の利用検討を求められる場合があり、その求めに応じなければ、親族を成年後見人の候補にしたい旨の申立てがなされても、専門職後見人が選任されたり、親族後見人が選任されたとしてもその親族後見人を監督する後見監督人が選任される場合があります。

<後見制度支援預貯金について>➣東京家庭裁判所発行の「後見センターレポートvol.18(平成30年7月)」(seinenkoken_11.pdf へのリンク)をご参照下さい
●上記「後見制度支援信託」は信託銀行等を活用したスキームですが、「後見制度支援預金」とは、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金として成年後見人が管理し、通常使用しない金銭を信用金庫や信用組合で開設できる「後見制度支援預金口座」に預け入れるもので,当該口座に係る取引(出金や口座解約等)をする場合には,あらかじめ家裁の指示書が必要になる仕組みです。
●ただし、このスキームは、東京都信用金庫協会傘下の信用金庫の一部(seinenkoken_9.pdf へのリンク)及び東京都信用組合協会傘下の信用組合の一部(seinenkoken_10.pdf へのリンク)において取扱ができるものであって、まだまだ地域が限られており、全国的な広がりを見せるには相応の時間を要するのではないかと思われます。
●当該制度も、成年後見のみが利用できるものであり、保佐・補助類型や任意後見では利用できません。

<代理出金機能付信託>
●取引金融機関に、例えば、自身の親が認知症であると分かってしまうと、その親が当該金融機関に持つ預貯金口座が凍結されてしまうということが往々にしてあると言われています。こうなると、口座名義人である親のために預貯金を使う場合であっても、例えば、介護費用の支払いや施設入所のための契約金だとしても、預貯金の引き出しや解約といったことが一切できなくなってしまいます。この解決策として「成年後見制度」があるわけです。しかし、当該制度は手続きが煩雑であり、しかも、家裁の審判が確定し成年後見登記が完了するまでには相当の時間を要し、緊急を要する場合では困り果ててしまう場合もあるかもしれません。
また、被相続人が死亡したことがその取引金融機関に分かってしまい、その時点で相続人間での遺産分割協議の成立前であると、その人が当該金融機関に持っていた預貯金口座が凍結されてしまうとされています。この場合については、今般の民法等改正に伴い、その前であっても、預貯金の引き出しが条件付ながら可能になります。施行は令和1年7月1日です。
●このような弊害を軽減してくれるものとして、三菱UFJ信託銀行が商品開発し既に平成31年3月から販売している「代理出金機能付信託」と言われるものがあります。これは、判断能力が低下してしまっても、従来通り、ご自身の口座から預金を引き出したりすることができるというものです。
●同行が独自に開発した商品で、契約者が判断能力が低下する前に契約をする必要がありますが、そのようになった場合でも、契約者が指定した代理人(三親等内の親族や専門職の中から1名)は契約者のために、同行専用のアプリを使用して預金の引き出し等を行うことができるものです。ただし、契約者に成年後見人等(当該商品に係る代理権が付与された保佐人・補助人、任意後見人も含む)が付いた場合には、代理人の任務は終了し、成年後見人等に引き継がれることになります。また、その他の親族(契約者、代理人、成年後見人が任意で指定することができ、閲覧者と言う)も含め契約者や代理人(成年後見人)全員(これらを口座メンバーと言うそうです)に、代理人によって実行された預金の引き出し等が当該アプリを介して通知され、全員がそれを確認することができるとのことです。
●その他詳細については、同行のホームページをご参照下さい。
URL_https://www.tr.mufg.jp/shisan/tsukaeteanshin_01.html

<神戸市成年後見制度利用支援事業について>
神戸市においては、成年後見制度の利用に当たり、必要となる費用を負担することが困難である者に対し,その助成を行う旨要綱(平成30年4月1日施行)(seinenkoken_12.pdf へのリンク)が定められています。ポイントだけを掲載します。詳細は当該事業Q&A(平成30年3月更新)(seinenkoken_13.pdf へのリンク)をご参照下さい。なお、同様な事業を兵庫県明石市においても実施しているようです。その要綱はこちら(seinenkoken_14.pdf へのリンク)から。
後見・保佐・補助開始の審判申立て費用や成年後見人等への報酬(家裁の報酬付与の審判を受けていることが条件)
(助成対象)
●市長が審判申立てを行う者
又は
●本人や親族等が審判申立てを行う者のうち、原則として神戸市内に住所を有する者
であって、
次のいずれかに該当する者となります。
①生活保護受給者
②その他当該審判申立てに要する費用等を負担することが困難であると市長が認める者
※ただし、後見等開始の審判申立てに係る費用の助成対象は市長申立ての場合に限るとのことです。
(報酬助成の上限)
限度額➣家裁が決定した成年後見人等の報酬額
ただし、
・特別養護老人ホーム等に入所している者(施設入所者(障害者のグループホーム入居者で、障害年金の受給者を含む))➣月額18,000円(上限)
・その他の者(居宅生活者(介護サービス付マンションやグループホーム入居者を含む))➣月額28,000円(上限)

4.死後の手続き
肉親の死後において、残された遺族が行うべき様々な手続のうち、自治体において行うべき手続きについては、例えば、神戸市(死亡に関連する届(seinenkoken_15.pdf へのリンク))やその周辺自治体である芦屋市(お亡くなりになった方の各種手続について(seinenkoken_16.pdf へのリンク))や西宮市(死亡に関する手続き(seinenkoken_17.pdf へのリンク))においては、それらのホームページにおいて、上記の名称の通りの手続き一覧(PDF)が用意されています。また、神戸市の各区役所においては、『おくやみ』と称する特別な窓口を設け、各種手続きの案内に当たっているとのことです。「おくやみコーナーのご案内(seinenkoken_18.pdf へのリンク)」と「おくやみ手続きのご案内(seinenkoken_19.pdf へのリンク)」をご参照下さい。このように、各自治体においては、ワンストップサービスに近い対応をすることで、ご遺族のための便宜を図っています。
ただ、亡くなられた肉親に係る年金や社会保険の手続については、別途、時間や労力を要することになり、そのご負担はかなりのものになろうと思われます。それらについては、弊職のような社会保険労務士が関与(代行)できる部分であり、是非、ご用命いただきたくお願い申し上げます。なお、代表的な手続きや必要となる添付書類等について、Excelの表(申し訳ございません。準備中です)にまとめる予定にしていますので、ご参考にしていただければと思います。

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