介護職員の処遇改善加算について(令和元年度介護報酬改定も含めて)


令和2年3月23日更新

団塊世代が後期高齢者とされる75歳以上になる2025年問題がマスコミ等で取り上げられいます。4人に1人が75歳以上という超高齢社会の到来は医療や介護を取り巻く環境の激変を想起させます。そうした超高齢社会を支えるべき介護人材の不足が早くから指摘されているところです。政府は、平成29(2017)年度の介護報酬(臨時)改定(10_1_1.pdf へのリンク)において、介護人材の職場定着を促すためには、それら介護人材に対するさらなる処遇改善が必要だとの観点から、介護サービス事業者等による昇給への取組強化の一環として、経験(勤続・経験年数など)若しくは資格(介護福祉士や実務者研修修了者など)等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準(実技試験や人事評価など)に基づき定期に昇給を判定する仕組みを取り入れるといった「キャリアパス要件Ⅲ」という新たな要件を設け、当該要件を、従来からの「キャリアパス要件Ⅰ(下記参照)」と「キャリアパス要件Ⅱ(下記参照)」に加え、賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施要件とする「職場環境等要件」と合わせた新たな「加算Ⅰ」という最高位の区分を設け、処遇改善加算の区分を従来の4区分から5区分に拡充したところである。その最高位の「加算Ⅰ」を取得すれば、介護職員1人当たり月額37,000円相当の加算が得られるであろうとのことで、それにより、月額平均10,000円相当※の増になるとされています。

平成24(2012)年度の介護報酬改定で、従来からあった「処遇改善交付金」から「処遇改善加算」という仕組みに改めら、現行の加算Ⅲという区分で月額15,000円相当の加算となりました。その後、平成27(2015)年度の介護報酬改定では、「加算Ⅲ(月額15,000円相当)」に月額12,000円相当が増額された「加算Ⅱ(月額27,000円相当)」という区分が追加され、さらに、平成29(2017)年度の介護報酬(臨時)改定では「加算Ⅱ(月額27,000円相当)」に月額10,000円相当が増額された「加算Ⅰ(月額37,000円相当」という区分が追加され、結果、現行の体系になっているものです。

「キャリアパス要件Ⅰ(職位(※1)・職責(※2)・職務内容(※3)等に応じた任用要件(※4)と、その任用要件に従った賃金体系(賃金規程)の整備、さらに、それらを就業規則などの書面に明確に定め、職員にそれらを周知することが求められるものです)」「キャリアパス要件Ⅱ(資質向上のための計画を策定して、研修の実施又は研修の機会を設けること)」「職場環境等要件」に加え、さらに「キャリアパス要件Ⅲ」という新たな要件をも必須とする「加算Ⅰ」をクリアーしたくともクリアーできない介護サービス事業者等は多く存在するのではないだろうか?日常の業務遂行に手一杯でそこまで手が回らない、つまり人手が足りないというのが現状ではないだろうか?そんな気がしてならないが・・・
※1→平たく言えば、組織があって、その中の縦の関係、つまり、施設長、その下に副施設長、事務(局)長、さらに主任(リーダー)、中堅(サブリーダー)、新人といった具合です。また、介護サービスごとの分担といったことも含まれます。
※2→職務上の責任のことで、ただ、責任だけではなく、相応の権限も付与されることになると思われます。さらに、専門性の有無というものも重要な要素になるものと思われます。
※3→難しく言えば、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」ということになります。 ※4→現在の職位からその上位の職位になるための条件のことで、「キャリアパス要件Ⅰ」を満たすためには、各々の職位の役割(責任)や業務内容、求められる能力、受けるべき研修といったことが職位ごとに定められ、制度化されているものでなければならないわけです。なお、兵庫県のホームページ内にある「処遇改善加算について(介護保険関係)」というページに掲載されている「介護職員処遇改善加算の手引き(平成30年3月)」の中に、【キャリアパス例】(10_1_2.pdf へのリンク)が示されていますので、ご参照下さい。



<平成30年度介護報酬改定について>
処遇改善加算は介護報酬への加算方式という形になっていることから、3年に1度の介護報酬改定の際にその見直しを行うことが原則で、従って、平成30年度介護報酬改定における「処遇改善加算」に関しての変更点は、加算(Ⅳ)と加算(Ⅴ)の廃止ということになりました。ただ、一定の経過措置期間後に廃止する(時期未定)とのことで、その意図するところは、その間に、比較的緩い要件とされている加算(Ⅳ)・加算(Ⅴ)から加算(Ⅲ)以上への事業所としてのキャリアアップが求められたものであると考えられます。
参考までに、下記資料をご参照下さい。

※介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例(介護職員処遇改善計画書や介護職員処遇改善実績報告書など)の提示について(10_1_3.pdf へのリンク)
※「介護職員処遇改善加算」のご案内(10_1_4.pdf へのリンク)

<令和元年度介護報酬改定について>令和元年度10月から施行
冒頭でも述べましたように、近い将来、大規模な介護人材の不足が想定されています。介護人材の職場定着等を促すためには、それら介護人材に対するさらなる処遇改善が必要とのことで、平成29年度において大きな施策が図られたところです。さらに、介護人材確保のための取組みを強化するために、『新しい経済政策パッケージ(平成29年12月8日閣議決定)』第2章人づくり革命 5.介護人材の処遇改善において、「経験・能力のある職員①※5」に重点化※6を図りながら、「介護職員のさらなる処遇改善」を進めることとなりました。
※5→原則として勤続10年以上の介護福祉士(資格取得は求めるものの、勤続期間については、業務や技能等を勘案し10年未満でも対象可とのこと)
※6
→「その他の介護職員(①以外の介護職員)②」や「介護職員以外の職員③」までの処遇改善のために、更なる処遇改善(介護職員等特定処遇改善加算)による収入を充てることができるよう柔軟な運用も認めることを前提に、「経験・能力のある職員①」について月額平均8万円相当の処遇改善を行うというものです。つまり、①を主体とするものの、②や③にも配分することができる仕組み(ただし、①は②の2倍以上、③は②の1/2以下という基準は設定されています)についても認めようとしているものです。

(介護職員等特定処遇改善加算を算定するための前提条件)
1.介護職員等特定処遇改善加算の算定要件
①現行の処遇改善加算ⅠからⅢまでのいずれかを算定済であること
②職場環境等要件について、「資質の向上」「職場環境・処遇の改善」「その他」の各区分において、各々1つ以上取り組んでいること
介護サービス情報公表システム制度を活用して、下記につき公表していること(これについては、令和2年度から算定要件化されます)
・処遇改善に関する加算の算定状況
・賃金以外の処遇改善に関する具体的な取組内容

2.介護職員等特定処遇改善加算区分の確認
ⅠとⅡに区分され、Ⅰは「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ」などの最上位の区分を算定している場合に算定可能となるものです。Ⅰに非該当の場合はⅡになります。

(例)
・訪問介護 「特定事業所加算ⅠorⅡ」
・特定施設入居者生活介護 「入居継続支援加算」or「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ」
・特別養護老人ホーム 「日常生活継続支援加算」or「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ」

3.介護職員等特定処遇改善加算の算定額の計算
ⅠとⅡいずれも、下記の計算式により求められます。

各事業所の介護報酬(処遇改善加算分は除く)×各サービスの介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)or(Ⅱ)の加算率

(弊職の母の実例→令和元年9月までの場合)
・通所介護(リハビリ主体)を利用(要介護1で1割負担)
・利用料請求書(PDF)(10_1_5.pdf へのリンク)に記載された項目名である通所介護(Ⅰ)11(サービス内容略称)から通所介護サービス提供体制加算Ⅰ2(同)までの単位数合計→2,911単位
・1単位当りの介護報酬単価
地域加算→地域区分4級地(神戸市)の場合で通所介護の場合の人件費割合45%×割増率12%×10円=0.45×0.12×10円=0.54円
地域加算を加えた1単位当たりの介護報酬単価→10円+0.54円=10.54円
・通所介護処遇改善加算(Ⅰ)の単位数(加算率→通所介護の場合は、5.9%)
上記単位数合計2,911(処遇改善加算(Ⅰ)は含まない)×5.9%=2,911×0.059=171.749≒172単位
・最終的な介護報酬
(2,911単位+172単位)×10.54=32,494.82円≒32,494円(小数点以下切捨て)
その内、処遇改善加算(Ⅰ)の見込額=172単位×10.54≒1,812円(同)

(弊職の母の令和元年10月以後に予定される実例)
・通所介護(リハビリ主体)を利用(要介護1で1割負担)
・利用料請求書(10_1_5.pdf へのリンク)に記載された項目名である通所介護(Ⅰ)11(サービス内容略称)から通所介護サービス提供体制加算Ⅰ2(同)までの単位数合計→2,925単位(給付の9割を占めるとされる基本報酬である「通所介護Ⅰ 11」の単位が令和元年10月からの消費税率引き上げに伴い、362から364に引き上げられる(改定率=0.39%増)ことにより、9月までの単位数合計と比較して増加することになると思われます)(362×1.0039=363.4118≒364)
・1単位当りの介護報酬単価(予定)
地域加算→地域区分4級地(神戸市)の場合で通所介護の場合の人件費割合45%×割増率12%×10円=0.45×0.12×10円=0.54円
地域加算を加えた1単位当たりの介護報酬単価→10円+0.54円=10.54円
通所介護処遇改善加算(Ⅰ)の単位数(加算率→通所介護の場合は、5.9%)
上記単位数合計2,925(処遇改善加算(Ⅰ)は含まない)×5.9%=2,925×0.059=172.575≒173単位
令和元年10月分の実績で見ると、(2,912+322+448-376+96)×5.9%=3,402×0.059=200.718≒201単位となっています。
通所介護特定処遇改善加算(Ⅱ)※7の単位数(加算率→通所介護の場合は、1.0%)
上記単位数合計2,925(処遇改善加算(Ⅰ)及び特定処遇改善加算(Ⅱ)は含まない)×1.0%=2,925×0.010=29.25≒30単位
令和元年10月分の実績(10_1_8.pdf へのリンク)で見ると、(2,912+322+448-376+96)×1.0%=3,402×0.01=34.02≒34単位となっています。
※7→弊職の母が通う施設については、「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ」などの最上位の区分を算定してしないために、特定処遇改善加算(Ⅱ)の算定になっているものと思われます。なお、令和2年4月からは、「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ」➣「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ」へ、「介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ)」➣「介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)」へ、それぞれ移行するとのことです。通所介護サービスコード表(一部抜粋)はこちら(10_1_9.pdf へのリンク)から。
・最終的な介護報酬(予定)
(2,925単位+173単位+30単位)×10.54=32,969.12円≒32,969円(小数点以下切捨て)
その内、処遇改善加算(Ⅰ)の見込額=173単位×10.54≒1,823円(同)
その内、特定処遇改善加算(Ⅱ)の見込額=30単位×10.54≒316円(同)
令和元年10月分の実績で見ると、
(3,402単位+201単位+34単位)×10.54=38,333.98円≒38,333円(小数点以下切捨て)
その内、処遇改善加算(Ⅰ)=201単位×10.54≒2,118円(同)
その内、特定処遇改善加算(Ⅱ)=34単位×10.54≒358円(同)


4.賃上げを行う単位の決定
賃上げを行う単位を法人全体にするのか事業所ごとにするのかを決定する。

5.賃上げのルールの決定
(賃上げを行う職員の範囲の決定)
・先ず、経験・技能のある介護職員①、その他の介護職員②、介護職員以外の職員③に分ける。
・次に、どの範囲の職員で賃上げを行うかを決定する。
①のみだけでもいいし、①+②でも、①+②+③でもいい。

(賃上げ額とその方法の決定→つまり、配分ルール)
・①の内1人以上は、月額平均8万円相当の賃金増又は年収440万円までの賃金増が必須とのこと。
・①は②の2倍以上、③は②の1/2以下という基準をクリアーすることが必要。

6.資料
※平成31年2月13日開催の厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会での配布資料「2019年度介護報酬改定について」(10_1_6.pdf へのリンク)
※2019年度介護報酬改定について~介護職員の更なる処遇改善~(一部抜粋)(厚生労働省老健局老人保健課)(10_1_7.pdf へのリンク)

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