ハラスメントについて


令和2年8月23日更新



令和1年6月5日に公布された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」においては、「ハラスメント対策の強化」も図られることになります。その概要(平成30年12月14日付「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について(報告書)」(45_1.pdf へのリンク)より)は下記の通りです。

なお、下記の各ハラスメントに係る指針(パワーハラスメントに係る指針は除く)には、「雇用管理上講ずべき措置」についての記載しかありませんが、今般の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)(45_2.pdf へのリンク)(令和2年6月1日施行予定)」(なお、令和1年1120日に開催された労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、当該指針(案)が審議され、了承されたとのことです)において、「行うことが望ましい取組」についても示されたことから、下記の各ハラスメントに係る指針においても同様に示される旨の改正がなされています。

ア 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)(45_3.pdf へのリンク)
➣事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(つまり、イ及びウも含んでいます)の一部を改正する件(案)に ついて 【 概要 】➣令和2年6月1日施行予定(45_4.pdf へのリンク)
事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(つまり、イ及びウも含んでいます)の一部を改正する告示➣令和2年6月1日施行分(45_9.pdf へのリンク)

イ 事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)(45_5.pdf へのリンク)

ウ 子の養育又は家族介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との
両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(抄)(平成29年1月1日適用)(平成21年厚生労働省告示第509号)(45_6.pdf へのリンク)

 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針➣令和2年6月1日施行分(45_10.pdf へのリンク)

 参考までに、弊職作成の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針等一覧表」(4種類のハラスメント指針を対比した表)(45_7.pdf へのリンク)を掲載させていただきます。

 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(新旧対照条文)については、こちら(45_8.pdf へのリンク)からどうぞ。

1. パワーハラスメントの定義
優越的な関係を背景として➣職務上の地位が上位の者に限らず、同僚や部下であっても、それらの者が業務上必要な知識や豊富な経験を有して、立場上優位な関係にある場合も含むとされています。
業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により➣大勢の社員がいる前で、業務上の失敗を罵倒するといったこと(弊職はそのような場面に居合わせた体験があります)が代表例だと思われます。また、言動に限らず、挨拶をしても喋りかけても無視する(弊職が体験しています)、本来やるべき仕事をさせない、あるいは、逆に、能力をはるかに超える質量の仕事を命じるというような場合も当てはまるものと思われます。
就業環境を害すること(身体的又は精神的な苦痛を与えること)

2. パワーハラスメント防止対策の法制化
①事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の下記措置義務を新設(施行は令和2年6月1日。なお、中小企業は令和4年3月31日までは努力義務ですが、同年4月1日からは義務化される予定です)
・事業主における、職場のパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化や、当該行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針やその対処の内容についての就業規則等への規定、それらの周知・啓発等の実施
・相談等に適切に対応するために必要な体制の整備
・事後の迅速、適切な対応(相談者等からの丁寧な事実確認等)
・相談者・行為者等のプライバシーの保護等併せて講ずべき措置
②パワーハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とするとともに、措置義務等について履行確保のための規定を整備

 パワーハラスメントに関しては、漸くの法制化となった。職場のみならず、スポーツ界においてもその現場でパワーハラスメントが横行している実態が新聞報道等されている。弊職がある企業に在籍中に体験したことですが、「一社員による仕事上での不手際(あくまでも企業側の主張)を発端に、その一社員の孤立化が深まり、挙句の果てには、その一社員を排斥する意図(これは弊職の見解です)の下、企業内で企画された行事への参加を促す旨を内容とするメールによる一斉送信の際に、その一社員だけには送信しなかった(これは本当です)」という事例がありました。当該事例なども典型的なパワハラスメントであると考えます。悲しい限りですが、世間にはこんなことが枚挙にいとまがないのが現実です。悪質な場合には企業名の公表があるものの罰則規定がなく実効性には疑問符が付きますが、今般の法制化は一歩前進です。これを機に、パワーハラスメントが一掃されることを願ってやみません。

3. セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
① セクシュアルハラスメント等*1に起因する問題に関する国、事業主(労働者派遣の役務の提供を受ける者も含む)及び労働者(派遣労働者も含む)の責務の明確化
② 労働者(派遣労働者も含む)が事業主(労働者派遣の役務の提供を受ける者も含む)にセクシュアルハラスメント等*1の相談をしたこと等を理由とする事業主による不利益取扱いを禁止
③事業主は、自社の労働者が他社の労働者等*2にセクシュアルハラスメント等*3を行い、他社が実施する雇用管理上の措置への協力を求められた場合にはこれに応じるよう努める(「行うことが望ましい取組」とされています)とともに、自社の労働者が他社の労働者等からセクシュアルハラスメントを受けた場合にも、「雇用管理上の措置義務(他社の事業主に対して、事実関係の確認や再発防止に向けた措置への協力を求めることも含む)」の対象になることを明確化すること

*1 パワーハラスメント妊娠、出産等に関するハラスメント(いわゆるマタニティハラスメント)及び育児休業等に関るハラスメントについても同様の規定を整備することとする。
*2 パワーハラスメント指針(案)においては、他の事業主が雇用する労働者及び求職者に限らず、個人事業主、インターンシップを行っている者等の労働者以外の者をも含むとされています。なお、求職者のうち就活生については、最近の新聞報道等によれば、社会人が自身の出身大学や勤務先を登録し、学生は志望する企業名を入力すれば検索できる「マッチングアプリ」の利用の広がりもあり、学生が当該社会人と一対一で対面する場合もあり、その際にセクハラ行為を受け、当該学生からの所属大学の相談員に対する相談件数が急増しているとのことである。そのような事態を受け、厚生労働省は、他の労働者という範疇に「求職者」も含めることで、企業等に、就活生へのセクハラ防止対策を促進させるよう指針の見直しを図ったところです。
*3 パワーハラスメント及び妊娠、出産等に関するハラスメント(いわゆるマタニティハラスメント)についても同様の規定を整備することとする。

4.心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正について(45_11.pdf へのリンク)


<当該基準別表1「業務による心理的負荷評価表」の改正内容>
業務による心理的負荷を原因とする精神障害の労災認定については、「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき行われています。今般、職場における「パワーハラスメント」の定義が法律上規定されたことなどを踏まえ、当該基準別表1「業務による心理的負荷評価表」(45_12.pdf へのリンク)の改正が行われたものです。具体的には、
(29)
●『出来事の類型』として新たに、「⑤パワーハラスメント」の追加
●『平均的な心理的負荷の強度』の中の『具体的な出来事』として、新たに、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の追加、そして、それは平均的には、3段階ある『心理的負荷の強度(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』のうち最も強いⅢとされています。
●そして、『心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例』を掲げ、業務による出来事の事実関係が当該具体例に合致する場合には、その強度(「弱」「中」「強」)で評価します。
●上記において、合致しない場合は『心理的負荷の総合評価の視点*4』に示された要素を考慮し、個々に評価することになります。
*4 心理的負荷の総合評価の視点の要素
・指導・叱責等の言動に至る経緯や状況
・身体的攻撃、精神的攻撃等の内容、程度等
・反復・継続など執拗性の状況
・就業環境を害する程度
・会社の対応の有無及び内容、改善の状況
(改正前29➣改正後30)
●『出来事の類型』である「⑥対人関係」のうち、『平均的な心理的負荷の強度』の中の『具体的な出来事』である「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」はパワーハラスメントに該当しない場合で優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせ等を評価するものとして位置づけられています。そして、やはり、それは平均的には、3段階ある『心理的負荷の強度(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』のうち最も強いⅢとされています。
●そして、『心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例』を掲げ、業務による出来事の事実関係が当該具体例に合致する場合には、その強度(「弱」「中」「強」)で評価します。
●上記において、合致しない場合は『心理的負荷の総合評価の視点*5』に示された要素を考慮し、個々に評価することになります。
*5 心理的負荷の総合評価の視点の要素
・暴行又はいじめ・嫌がらせの内容、程度等
・反復・継続など執拗性の状況
・会社の対応の有無及び内容、改善の状況

<その後のフロー>
下方画像にあるように、
① 認定基準の精神障害を発病していること
② 業務による強い心理的負荷が認められること➣原則としては、「強」の評価が必要となります。ただ、心理的負荷としては「中」程度と評価されても、会社が本人からの相談に真摯にかつ適切に対応せず、結果、本人の症状が改善されなかったというような場合には、「強」に格上げされる場合があります。
これら①、そして②による評価を経て「強」となることが前提条件であり、その後、当該基準別表2「業務以外の心理的負荷評価表」(45_13.pdf へのリンク)の中の「心理的負荷の強度」のうち最も強いⅢに該当する出来事*6が認められないこと、かつ個体側要因(既往歴やアルコール依存状況など)がないことによって、漸く、労災認定に達するとされています。
*6 例えば、『出来事の類型』のうちの「①自分の出来事」で『具体的な出来事』として列挙されている中で「離婚又は夫婦が別居した」とか「自分が重い病気や怪我をした又は流産した」といった出来事があった場合には、それは本人にとっては心理的負荷の強度が重く、そのような状況を考慮すると、仮に精神障害を発病したとしても、その要因としては、当該業務外の心理的負荷が多大な影響を与えたのではないかと推察され、業務による強い心理的負荷が認められないということで、労災であるとの認定に結びつかない場合もあると考えられます。



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