雇用保険の追加給付について


令和2年2月16日公開

「毎月勤労統計調査」の不適切な取扱いを端に発した「雇用保険の追加給付」問題。中には、既に追加給付の支給を受けた人も多いのではないでしょうか?ご多聞に漏れず弊職もそのひとりです。過去に、雇用保険の基本手当を2回受給したことがあります。
雇用保険以外にも、労災保険・船員保険・雇用調整助成金にまで影響が生じるなど広範囲に亘っています。ただ、この追加給付については、その仕組みには分かり辛い部分もあり、厚生労働省や追加給付の現場となるハローワークなどに対しては、未だ様々な問い合わせなどが殺到しているとの話しも聞き及んでいます。特に、追加給付の対象になると思っていたのに、その対象にならないのはどうしてかといった疑問もあるかと思います。そんな疑問に応えるためにもその一助になればと思います。なお、弊職の実体験を基に話しを進めるために、雇用保険の基本手当に絞らせていただきますので、ご了承のほどお願い申し上げます。

【弊職の実例】
追加給付の対象になった実例
<当時の雇用保険受給資格者証>

<追加給付の対象>
そもそも追加給付の対象になるのは、改定後賃金日額の下限額未満改定前賃金日額の上限額超である場合、さらに、賃金日額(離職した日の直前6箇月間に支給された賃金の総額を180で除したもの)が低いほど基本手当給付率が高まる賃金日額の範囲(80%から50(45)%まで)内にある場合に限られます。従って、給付率が定率(80%と50(45)%)になる賃金日額の層については、対象外になります。先ずは、下方図表(平成31年3月13日に開催された第135回労働政策審議会職業安定分科会に提示された「毎月勤労統計の再集計値等に基づく雇用保険の追加給付について」とする参考資料(13_1_1.pdf へのリンク)内にある「毎月勤労統計の再集計値等の算出に伴う賃金日額の上限額等への影響」とする一覧表から抜粋したもの)をご覧下さい。

<追加給付の対象になった理由>
弊職が基本手当を受給し始めたのは2007(平成19)年11月からなので、当該開始時期が含まれる2007(平成19)8月から2008(平成20)年7月までが対象になります。弊職の場合は、算定された当時の賃金日額が17,892円ということで、当時の賃金日額の上限額である15,550円(旧)を超えていましたので、基本手当日額としても、その50%(45歳から59歳までの年齢層であるため)である7,775円(=15,550円×0.5)(上限額)が算定されました。そして、その当時の賃金日額の上限額が再集計の結果、15,650円へと改定されました。従って、新旧の差が100円になったことで、基本手当日額の新旧の差としては、その50%(同)である50円(=7,825円-7,775円)が算定されて、所定給付日数150日のうち実際に受給した日数が148日であったため、下方にある「支給決定通知書」にある通り、50円×148日=7,400円(別に、加算額あり)が支給されることになったわけです。
<今回交付された雇用保険の追加給付支給決定通知書>


追加給付の対象にならなかった実例
<当時の雇用保険受給資格者証>

<平成31年3月13日に開催された第135回労働政策審議会職業安定分科会に提示された「毎月勤労統計の再集計値等に基づく雇用保険の追加給付について」とする参考資料内にある「毎月勤労統計の再集計値等の算出に伴う賃金日額の上限額等への影響」とする一覧表から抜粋したもの>

<追加給付の対象にならなかった理由>
弊職が基本手当を受給し始めたのは2009(平成21)年10月からなので、当該開始時期が含まれる2009(平成21)8月から2010(平成22)年7月までが対象になります。弊職の場合は、算定された当時の賃金日額が13,860円ということで、当時の賃金日額の上限額である15,370円(旧)(新➣15,480円)を下回り、かつ、基本手当給付率が定率(50%)となる11,680円超15,370円以下(旧)(新➣11,760円超15,480円以下)の範囲内に含まれていました。そもそも弊職に算定された賃金日額は変わることはないわけであり、しかも、基本手当日額としても、定率(50%)で算定されることから、やはり変わることはないわけです。単に、定率(50%)となる範囲である数値が再集計の結果変わっただけのことで、何ら基本手当日額に影響を及ぼすものではなかったからです。

【賃金日額が低いほど基本手当給付率が高まる賃金日額の範囲(80%から50(45)%まで)内にある場合に追加給付の対象になる理由】
先ずは、下方図表をご覧下さい。

この図表は、賃金日額が低いほど基本手当給付率が高まる賃金日額の範囲(80%から50(45)%まで)にある場合に、ご自身に算定された賃金日額を基に、新旧の賃金日額の範囲を当てはめることで、新旧の基本手当日額にどの程度の差が生じ、結果として追加給付額がどの程度発生するのかをシミュレーションするための表です。
(前段にある59歳までの場合)
・ご自身の賃金日額➣7,000円とします
・定められた新旧の賃金日額を入力後のそれぞれの基本手当日額➣旧=4,786円 新=4,798円
・基本手当給付率➣旧=68.37% 新=68.54%
という具合に、新の基本手当給付率が僅かではありますが、旧を上回る結果となり、従って、新の基本手当給付率に見合う基本手当日額を支給する必要から、基本手当日額の新旧の差である12円が導き出され、ご自身が実際に受給した日数を乗ずることで追加給付額が算定されることになるわけです。すべての場合がこのような結果になるとは限らないかもしれませんが、僅かでも追加給付額が発生する場合が多かろうと思います。このシミュレーションをExcelで作成していますので、是非、ご活用なさって下さい。なお、あくまでも参考値として捉えていただきますようお願い申し上げます。

【参考までに、雇用継続給付に係る追加給付について】
<育児休業給付及び介護休業給付について>
雇用継続給付のうち、育児休業給付(なお、「子を養育するために休業した労働者の雇用と生活の安定を図る」給付として、失業等給付とは異なる給付体系(つまり、失業等給付にある雇用継続給付からは切り離す方向(令和2年4月1日施行予定)です)にするとのことです)と介護休業給付については、厚生労働省ホームページにおいて下記のリーフレットが発出されており、ご参照下さい。
・「現在、雇用保険の育児休業給付、介護休業給付を受給している皆様へ」(13_1_2.pdf へのリンク)
・「最近5年間に雇用保険の育児休業給付を受給した皆様へ」(13_1_3.pdf へのリンク)

なお、追加給付の対象になるのは、賃金月額(育児休業開始前6箇月間の賃金を180で除した額(休業開始時賃金日額)に30を乗じた額)が改定前上限額(令和1年8月1日からの分の場合➣育児休業給付454,200円・介護休業給付500,100円(ただし、のちに499,800円になる予定))を超える場合改定後下限額(令和1年8月1日からの分の場合➣育児休業給付・介護休業給付いずれも75,000円)未満の場合のみとされています。それら以外では、これら給付については、支給率が67%・50%という具合に定率になっているからです。詳細については、弊職作成の「支給限度額等の算出根拠」について解説した書面(13_1_4.pdf へのリンク)末尾にある「追加給付の対象となる場合の事例(育児休業給付の場合)」において掲載しています。合わせて、ご参照下さい。

<高年齢雇用継続給付について>
高年齢雇用継続給付については、現時点では厚生労働省から追加給付に係る方策が示されていませんが、下方図表で示した事例を見る限りでは、高年齢雇用継続給付については、追加給付の対象になるケースは限定的ではないかと考えます。過去、基本手当に係る離職時の年齢層が60歳から64 歳である場合の賃金日額の上限額が再集計により100円上昇(旧14,540円➣新14,640円)した直近の平成22(2010)年8月から平成23(2011)年7月までの期間において、初めて追加給付が発生するものと思われます。

(事例1➣上方図表の前段をご覧下さい)
-前提-
「低下率(後述)」が61%以上75%未満になる場合(この範囲では、「低下率」が低くなるほど高年齢雇用継続給付に係る「支給率」は逆に上昇することになります)
60歳到達時等の賃金月額(原則として60歳到達前6箇月間の平均賃金のこと)が上限額(当該期間の場合 旧14,540円×30=436,200円➣新14,640円×30=439,200円)を超えた(例えば、500,000円)場合➣そもそも、60歳到達時等の賃金月額が当該上限額を超えない場合には、追加給付の対象にはなりません。というのも、その場合には、「低下率」「支給率」いずれも、実際に支払われた賃金を基に算定され、当該上限額の変化に左右されることがないからです。

とすると、結局のところ、60歳到達時等の賃金月額は当該上限額となり、支給対象月に支払われた賃金(原則として60歳以降に実際に支払われた賃金のこと)が60歳到達時等の賃金月額に比してどの程度低下したかを計る「低下率」新のほうが旧より低下することになり、そのことは逆に、「支給率」「支給額」いずれも新のほうが旧を上回る結果となり、最終的には、その差が追加給付額になるわけです。ただ、このような結果になるのは、基本手当に係る離職時の年齢層が60歳から64 歳である場合の賃金日額の上限額が再集計により100円上昇した当該期に限った現象のように思われ、当該上限額が再集計により、次に上昇幅(40円)が大きかった平成27(2015)年8月から平成28(2016)年7月までの期間では、弊職が実証した限りでは追加給付は発生しないことが確認できています。

(事例2➣上方図表の後段をご覧下さい)
-前提-
「低下率(後述)」が61%以上75%未満になる場合(同)
60歳到達時等の賃金月額(同)が下限額(当該期間の場合 旧2,000円×30=60,000円➣新2,010円×30=60,300円)を下回った(例えば、50,000円)場合➣そもそも、60歳到達時等の賃金月額が当該下限額を下回らない場合には、追加給付の対象にはなりません。というのも、その場合には、「低下率」「支給率」いずれも、実際に支払われた賃金を基に算定され、当該下限額の変化に左右されることがないからです。

とすると、結局のところ、60歳到達時等の賃金月額は当該下限額となり、支給対象月に支払われた賃金が60歳到達時等の賃金月額に比してどの程度低下したかを計る「低下率」は新のほうが旧より低下することになり、そのことは逆に、「支給率」「支給額」いずれも新のほうが旧を上回る結果となり、最終的には、その差が追加給付額になるわけです。なお、このような結果になるのは、基本手当に係る離職時の年齢層が60歳から64 歳である場合の賃金日額の上限額が再集計により10円以上上昇すれば、追加給付が発生するものと思われます。

 なお、どんな条件であっても、しかも新旧いずれも「低下率」が61%未満になる場合は、「支給率」は定率の15%であり、その場合には、(新旧に関わらず同じ額になる)支給対象月に支払われた賃金に当該15%を乗じるだけのことであり、それは新旧いずれであっても支給額が同じになることを意味し、従って、追加給付が発生する余地はないと言えます。下方の図表をご参照下さい。


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