在職老齢年金制度


令和2年5月23日更新

「在職老齢制度の見直し」について末尾に記載しています。合わせてご参照下さい。
※人事労務トピックスにある「定年前後の労働・社会保険手続について」「改正高年齢者雇用安定法及び70歳までの就業機会確保に向けてのさらなる法改正の動き等について」「在職老齢年金受給や繰下げ受給に係る見直し案について」もご参照下さい。

これからは、定年後も働き続ける方々が多いと思います。最近、よく話題に上る人手不足の問題、特にサービス業でその度合いが高いとされています。となると、そのような業界で高齢者の活躍が期待されることになるかもしれません。そこで、そのような方々にとって非常に関心が高いと思われる「在職老齢年金」について、確認しておきたいと思います。
これには、三つの制度があります。先ずは、

1. 60歳代前半の在職老齢年金

つまり、60歳から64歳までの老齢厚生年金の受給権者が被保険者*a(つまり厚生年金保険に加入している人)である日が属する月において、その者の総報酬月額相当額*bと基本月額*cの合算額が28万円(これを「支給停止調整開始額」と言います)を超える場合に年金の全部又は一部が支給停止されるというものです。

*a→その前に、ちょっと複雑な説明を要しますので、頑張って下さい。この被保険者には重要な条件があります。それは、「前月以前の月に属する日から引き続き被保険者の資格を有する者に限る」というものです。これは、例えば、ある方が4月に60歳になったとして、60歳になっても、その前月である3月から引き続き雇用されている状態のことを言います。ですから、その方が60歳になって一旦退職し、1箇月だけゆっくりなさって、例えば、5月に再就職して厚生年金保険の被保険者(つまり、資格取得月は5月)になった場合は、再就職後、在職老齢年金の規定が適用されるのは、資格取得月の翌月である6月からとなります。

*b→「総報酬月額相当額」とは、例えば、上記の方が4月から在職老齢年金の規定が適用されたとしたら、先ずは、4月時点でのこの方の「標準報酬月額」と、この方が4月から遡ること前年の5月から当年4月までの過去1年間に受けた「標準賞与額」の総額を12で除して得た額との合算額のことです。なお、この」標準賞与額」については、過去1年間の中で、賞与を受けた月の賞与額が150万円超となった場合には、150万円を上限として計算することになっています。

*c→「基本月額」とは、老齢厚生年金(報酬比例部分+定額部分)÷12(「加給年金額」は除きます)になります。定額部分も含まれます。

定額部分というのは、要するに、原則として65歳以降に支給される「老齢基礎年金」に見合うものなのですが、その計算式は1,628円(平成16年改正後の額)×平成29(30)年度改定率0.998 (令和1年度改定率0.999)(令和2年度改定率1.001)*d(×支給乗率=誕生日によって1.875~1.000までの開きがありますが、誕生日が昭和21年4月2日以後の者は1.000です)×被保険者期間の月数(この中には昭和36年3月以前の20歳前及び60歳以降の期間が反映され、また中高齢者の資格期間の短縮の特例に該当する場合で被保険者期間の月数が240に満たない場合には240とみなして計算します。ただし上限月数は、誕生日が昭和21年4月2日以後の者の場合は480となります)となることから、昭和36年4月1日以後の20歳以上60歳未満の間の厚生年金保険の被保険者期間のみを保険料納付済期間として計算されることになる「老齢基礎年金相当額」との間では、当然乖離が生じます。なお、その乖離を調整するのが「経過的加算」というものです。

*d→1,628円×0.998(令和1年度改定率0.999)(令和2年度改定率1.001)≒1,625円(これは、平成29(30)年度の満額の老齢基礎年金額である779,300円÷480≒1,624円にほぼ見合う額になっています(令和1年度は1,626円(これは、令和1年度の満額の老齢基礎年金額である780,100円÷480≒1,625円にほぼ見合う額になっています))(令和2年度は1,630円)

※年金給付の経過措置一覧(平成30年度)(5_1.pdf へのリンク)
※年金給付の経過措置一覧(令和1年度)(5_2.pdf へのリンク)

本題に戻ります。この「60歳代前半の在職老齢年金」の支給停止額を算出する方法には4種類ありますが、すべてを説明すると余計に混乱することになると思いますので、代表的なものだけを説明します。
「総報酬月額相当額」=46万円(平成29(30)年度)(令和1(2)年度は47万円)(これを「支給停止調整変更額」と言います)以下、かつ、「基本月額」=28万円(「支給停止調整開始額」)以下の場合
支給停止額=(総報酬月額相当額①+基本月額②-280,000円)×1/2という算式で求められます。例えば、①=24万円、②=10万円とした場合を上記算式に当てはめると、(240,000円+100,000円-280,000円)×1/2=30,000円が支給停止額となり、結果的には、基本月額である100,000円から支給停止額30,000円を控除した残額である70,000円が支給されることになります。そして、例えば、この代表的な算式に、毎月の「標準報酬月額」と当該月から遡って過去1年間に受けた「標準賞与額」の総額×1/12、さらに「基本月額」を当てはめるという作業を毎月行うことで調整するわけです。

2. 60歳台後半の在職老齢年金(平成14年4月1日以後に65歳になる、誕生日が昭和12年4月2日以後の者を対象とする)

つまり、65歳から69歳までの原則支給の老齢厚生年金の受給権者が被保険者*a(つまり厚生年金保険に加入している人)である日が属する月において、その者の総報酬月額相当額*bと基本月額*cの合算額が46万円(平成29(30)年度)(令和1(2)年度は47万円)(これを「支給停止調整額」と言います) を超える場合に年金の全部又は一部が支給停止されるというものです。
この「65歳以降の在職老齢年金」の支給停止額を算出する方法はひとつだけで、
支給停止額=(総報酬月額相当額①+基本月額②-460,000円(令和1(2)年度は470,000円))×1/2という算式で求められます。なお、国民年金の「老齢基礎年金」や「経過的加算額」などは調整の対象外ですから、支給されます。

3. 70歳以上の在職老齢年金

当初は、平成19年4月1日以後に70歳になる誕生日が昭和12年4月2日以後の者を対象(つまり、昭和1241日以前生まれの老齢厚生年金の受給権者には適用されていませんでした)としていましたが、「被用者年金一元化法(共済年金を厚生年金保険に統合)(平成27年10月1日施行)」により、平成27年10月以後はすべての者()を対象としています。

 この場合には、平成27年101日を境にして、途端に、年金の支給停止(全部or一部)が発生することを考慮して、いわゆる「激変緩和措置」があるとされています。
「激変緩和措置」による支給停止額<老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額×1/12+ある月の標準報酬月額に相当する額+当該月以前1年間の標準賞与額に相当する額×1/12>×1/10 となります。これが上限額となり、当該算式で算出された額を超える額が支給停止額にならないとのことです。

厚生年金保険の被保険者の種類のうち、「強制加入」である「当然被保険者」は適用事業所に使用される70歳未満の者を言います。従って、70歳以上になると、「被保険者」ではなく、「70歳以上の使用される者」という表現になります。ただ、その者に対しては、60歳代後半の在職老齢年金の仕組みがそのまま適用されることになります。

この「70歳以上の在職老齢年金」の支給停止額を算出する方法は
支給停止額=(総報酬月額相当額①+基本月額②-460,000円(令和1(2)年度は470,000円))×1/2という算式で求められますが、「総報酬月額相当額」は、「 標準報酬月額に相当する額 」と「その月以前1年間に受けた標準賞与額及び標準賞与額に相当する額の総額を12で除して得た額」とを合算した額という表現に変わります。

「被用者年金一元化法」が施行されてから・・・
1. 前述した「被用者年金一元化法」が施行されるまでは、この「在職老齢年金」の適用において、厄介な問題がありました。念のため、確認しておきたいと思います。それは、月末退職の場合です。
従来までは→月末に退職すると、被保険者資格の喪失日は退職日の翌日である翌月1日付になります。在職老齢年金というのは、在職中における年金停止であって、退職すれば、年金停止はなくなるというのが本来の姿ですが、そうではなくて、喪失日の属する月分まで年金停止が行われていた関係で、月末に退職したばかりに、全く働いていないその翌月分まで年金停止が行われるという不合理が生じていたわけです。
「被用者年金一元化法」が施行されてからは→上記のような不合理は解消され、退職日の属する月分までが年金停止の対象になったわけです。
2. 老齢厚生年金の受給権者が働いていた場合に、退職するまで納めてきた厚生年金保険料が年金額に反映されるのはいつか?という部分でも、月末退職者には上記したような不合理が存在していました。
つまり、いわゆる「退職時改定」というもので、
従来までは→資格喪失日(つまり、退職日の翌日)から1箇月を経過した日の属する月分から改定すると定められていました。となると、4月30日に退職すると喪失日は5月1日で、5月1日から1箇月経過した日というのは6月1日ということになり、6月分からの改定ということで、1箇月間の空白が生じる結果となっていました。
「被用者年金一元化法」が施行されてからは→退職日から1箇月経過した日の属する月分から改定するという変更がなされました。従って、上記例でいくと、4月30日に退職したとすると、5月31日が1箇月を経過した日ということになり、その日の属する月分である5月分から改定されることになりました。
なお、4月末退職ですので、その場合の厚生年金保険料は4月分まで徴収されることになります。また、年金額の改定は、喪失日の属する月の前月分までを含めて計算されることになります。

※上記1.及び2.いずれも、被用者年金一元化法により、従前の共済年金の制度に倣って導入されたものです。端的に言えば、共済年金制度のほうが優遇されていたということになります。

「雇用保険の給付との調整について」
60歳代前半の老齢厚生年金と雇用保険の給付との調整という部分で大事な制度(失業等給付の中の求職者給付のひとつである基本手当及び人事労務トピックスにある「高年齢雇用継続給付」との調整)があります。
【基本手当との調整について】
(前提条件としての事例)
・離職日➣平成30年3月31日(とします)
・雇用保険の基本手当の受給期間(基本手当の支給を受けることができる期間のことで、原則として離職日の翌日から起算して1年です)➣平成31年3月31日
・求職の申込みをした日➣平成30年4月6日(とします)
待期期間(離職後最初にハローワークに求職の申込みをした日以後7日間のことです)➣平成30年4月6日から12日
離職理由による給付制限(被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合又は正当な理由がなく自己都合により退職した場合が当てはまり、その場合には、待期期間経過後1箇月以上3箇月以内(基本的には3箇月)の間、基本手当が支給されません)➣
平成30年4月13日から7月12日(なお、この間に、ハローワークにおいては、雇用保険受給資格者を集めて雇用保険説明会を実施し、その際に、「初回の失業認定日」を指定することになっています)
・2回目の失業認定日➣平成30年8月8日(とします)➣認定(支給)期間としては、(給付制限満了日の翌日である)平成30年7月13日から(失業認定日の前日である)8月7日までの26日間がその対象となります
・3回目の失業認定日➣平成30年9月5日➣認定(支給)期間としては、平成30年8月8日から9月4日までの28日間がその対象となります
・4回目の失業認定日➣平成30年10月3日➣認定(支給)期間としては、平成30年9月5日から10月2日までの28日間がその対象となります
・5回目の失業認定日➣平成30年10月31日➣認定(支給)期間としては、平成30年10月3日から10月10日までの8日間がその対象となります。つまり、当該受給資格者の場合は、所定給付日数を、一般の受給資格者で「算定基礎期間(所定給付日数を決定するための基礎となる期間のことで、原則として同一の事業主に被保険者として雇用された期間(≒被保険者であった期間)のこと)」が10年未満の場合の90日としています

認定(支給)期間とは、基本的には、失業認定日の前日までの直前の28日につき失業の認定を受けることになる期間のことを言います。そして、当該28日間すべてにつき認定を受けることができれば、28日分の基本手当が支給されることになるわけです。
(60歳代前半の老齢厚生年金と基本手当の併給調整について)
これらを同時に受給できる場合には、基本手当の支給が優先され、60歳代前半の老齢厚生年金は支給停止されることになります。この支給停止される期間のことを「調整対象期間」と言います。調整対象期間中に、基本手当の支給を受けた日(これには、待期期間や離職理由による給付制限期間も含まれます)が1日でもある月は、年金の全額が支給停止されます。
調整対象期間求職の申込みをした月の翌月(事例では平成30年5月)から受給期間満了日(事例では平成31年3月31日)の翌日が属する月(事例では平成31年4月)又は所定給付日数を受け終わった月(つまり、最後の失業認定日が属する月)(事例では、平成30年10月)までの6箇月間➣年金の支給が停止されます。
(事後精算について)
基本手当の受給期間が経過した日又は所定給付日数を受け終わった日に調整が行われ、遡って年金が支給されることになります。このことを「事後精算」と言います。
支給停止されていた年金のうち、遡って支給できる月数のことを「支給停止解除月数」と言い、次の式で計算します。支給停止解除月数が1箇月以上あれば、その月数分の年金が遡って支給されます。
(事後精算の計算式)
支給停止解除月数=年金停止月数(事例では6)−基本手当の支給対象となった日数(事例では所定給付日数である90日)/30日*=6-90/30=3

事例で言うと、平成30年8月分から10月分まで直近3箇月分が支給停止解除の対象月分となり、当該3箇月分が遡って支給(平成30年12月14日(金)に一括支給されることになるものと思われます)されることになります。そして、平成30年11月分は通常通りの支給(平成30年12月14日(金))になります。

下線部の計算結果に1未満の端数があるときは、1に切り上げることになります。
(最後に)
ハローワークで求職の申込みをしてしまうと、基本手当の受給の有無如何に関わらず、一定の期間、60歳代前半の老齢厚生年金(加給年金額も含む)の全額が支給停止されてしまいます。しかも、待期期間、給付制限の対象になる場合は最大3箇月間についても同じく支給停止されてしまいます。当該年金の受給を希望する場合は、求職の申込みはなさらないようご留意下さい。

【高年齢雇用継続給付との調整について】
人事労務トピックスにある「高年齢雇用継続給付について」の【老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付の併給調整について】において掲載しています。

「支給繰下げ待機期間において在職していた者の支給繰下げ加算額の算出方法について」
原則支給の老齢厚生年金の受給権者で、その受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金の請求をしていなかった者はその支給繰下げの申出をすることができますが、その支給繰下げ待機期間において働いていた者(つまり、厚生年金保険の被保険者)については、繰下げの申出に係る加算額の算出につき、特別な計算を要します。

例えば、65歳になっても継続雇用で働き続けるというケースはこれからはどんどん増えていくものと思われますが、その際に、留意しておきたいことがありますので確認することにします。
【事例】
平成29年4月に65歳になった在職者で、当該月の標準報酬月額が30万円として、前年の5月から当該月までの間に支給された標準賞与額が前年7月に40万円、同12月に80万円、当年7月に同じく40万円だとして、ただ、半年後の9月30日に退職するという場合を設定します。なお、退職時改定については考慮しないものとします。

この方の「総報酬月額相当額」→30万円+(40万円+80万円)×1/12=40万円
この方の「基本月額」→20万円
「総報酬月額相当額」+「基本月額」=60万円ということで、「支給停止調整額」である46万円(平成29(30)年度)(令和1(2)年度は470,000円)を超えていますので、本来であれば、在職老齢年金の規定の適用を受けることになりますが、この方は、66歳になった時点で支給繰下げの申出を行うつもりですので、敢えて年金の支給は受けないという選択をしました。このような場合の66歳以降の支給繰下げ加算額はどのように計算されるのか?
1. 先ず、4月から9月までの在職中については給料だけ、10月から平成30年3月までは、多少の蓄えと後述する「高年齢被保険者」として「高年齢求職者給付金」(一時金)を受給するなどして生活の糧とした。
2. ただ、4月から9月までの在職中において現実には年金の支給を受けないとしても、在職老齢年金の規定の適用を受けたと仮定して、4月から9月まで毎月支給停止額が計算されることになります。支給停止額=(40万円+20万円-46万円(令和1(2)年度は470,000円))×1/2=7万円で、基本月額のうち13万円が支給されていたとします。すると、半年間の仮の年金額合計=13万円×6ヶ月=78万円となります。
3. 10月から平成30年3月までは退職後ということで在職老齢年金の規定の適用はなく、年金額(「基本月額」=20万円)が支給されていたとします。すると、この半年間の年金額合計=20万円×6ヶ月=120万円となります。
4. そして、4月から平成30年3月までの仮の分も含めた年金額総計=78万円+120万円=198万円となります。
5. さらに、4月から平成30年3月までの本来の年金額(原則支給の老齢厚生年金(経過的加算額を含む))である240万円に対する同期間の仮の分も含めた年金額総計の割合、要するに「平均支給率*」を求めると、198万円÷240万円=0.825となります。
*なお、正確に言いますと、「平均支給率」を求める方法は、受給権を取得した月(【事例】の場合だと65歳に達した月である平成29年4月)の翌月(平成29年5月)から繰下げ申出月(66歳に達した月である平成30年4月)までの各月の支給率を計算し、その平均を求めることになります。とすると、平成29年5から10月までは130,000/200,000=0.65、平成29年11月から平成30年4月までは200,000/200,000=1.0ということになり、(0.65×6+1×6)/12=0.825で結局は同じ率になりますが、ここでは上記の通り、分かり易い算出方法としました。
6. 最後に、支給繰下げ加算額というのは、原則支給の老齢厚生年金(経過的加算額を含む)×「平均支給率0.825」×繰下げ待機期間(上記事例だと12ヶ月)×7/1000(0.7%)=240万円×0.825×8.4%≒166,320円という算式で求められることになります。つまり、原則支給の老齢厚生年金(経過的加算額を含む)そのままに対する繰下げ加算額ではないということです(つまり、240万円ではなく198万円→1,980,000円×1.084=2,146,320円)。
7. まとめとして、支給繰下げによる加算を意図して待機していても、その間、在職老齢年金の規定が適用されていたと仮定されてしまうことで、ご自分が思い描いていた年金額とは違うものが支給されてしまうことになりますので、65歳以降在職しつつ年金受給を保留される予定がある場合は、例えば、「支給停止調整額(46万円(令和1(2)年度は470,000円))」の範囲内に収まるよう、在職中の給料の額を設定してもらうなどしてどのような方法が得策になるのか、事前に年金事務所等で待機期間経過後の年金受給額の見込額の照会をした上でご判断されるのがいいかもしれません。

【在職老齢年金制度の見直しについて】(5_3.pdf へのリンク)➣厚生年金保険法附則(昭和29年)第11条第1項 改正(第1項第1号から第4号、第2項、第3項及び第4項は削除)(5_4.pdf へのリンク)
今後益々、生産年齢人口の減少が見込まれる中で、高齢者による社会参加(就業)への需要は高まるものと思われます。ただ、現行の在職老齢年金制度はその就労意欲を阻害しているとの批判もあり、その見直しに向けての機運は高まっているところです。そのような流れの中で、厚生労働省(年金局)は、令和1年10月9日に開催された第11回社会保障審議会年金部会に対して、「在職老齢年金制度の見直し(案)」を提示し、同部会での議論を経て年内までに結論を出し、来年の通常国会で法改正の成立を目指すとのことです。
(65歳以上の在職老齢制度について)
①基準額(現行➣総報酬月額相当額と基本月額の合算額が470,000円(令和1(2)年度)を超えた場合に年金の全部又は一部が支給停止されるというもの)を620,000円*1にまで引き上げる
②制度そのものの全廃
の2案が示されています。
*1 これは、厚生年金保険の保険料額表の最上位の等級(31等級)の標準報酬月額(報酬月額では605,000円以上)と同額であり、同月額から導き出されたものだと思われます。

なお、参考までに、同省同局から提示された620,000円にまでの当該引き上げ案に対しては、高収入者優遇との批判があり、同省同局は同部会に対して、その修正案(620,000円➣510,000円)を提示(令和1年11月13日開催の同部会に対し)したとのことです。
 なお、同省同局はさらに、上記批判を受け、65歳以上については、現制度(470,000円超)を維持する方向で調整しているとのことです。

(60歳以上64歳までの在職老齢制度について)
①「特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金」は、いずれ厚生年金の支給開始年齢の65歳への引き上げが完了(第1号厚生年金保険被保険者の女性を除く第1号から第4号までの厚生年金保険被保険者の場合は令和7年度*2、第1号厚生年金保険被保険者の女性の場合は令和12年度*3)することもあり自然消滅を待つ
*2 昭和36(1961)年4月2日生まれの、第1号厚生年金保険被保険者の女性を除く第1号から第4号までの厚生年金保険被保険者の場合は「特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金」はなく、「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」となります。当該の者が65歳になるのは令和8(2026)年4月1日で、つまり令和8年度ということになります。従って、「特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金」は令和7(2025)年度までで完了することになるわけです。
*3 昭和41(1966)年4月2日生まれの第1号厚生年金保険被保険者の女性の場合は「特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金」はなく、「65歳からの本来支給の老齢厚生年金」となります。当該の者が65歳になるのは令和13(2031)年4月1日で、つまり令和13年度ということになります。従って、「特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金」は令和12(2030)年度までで完了することになるわけです。
②基準額(現行➣総報酬月額相当額と基本月額の合算額が280,000円(令和1(2)年度)を超えた場合に年金の全部又は一部が支給停止されるというもの)を620,000円にまで引き上げる
の2案が示されています。

なお、参考までに、上記と同じく、同省同局は同部会に対して、その修正案(620,000円➣510,000円or470,000円のうちいずれか)を提示(令和1年11月13日開催の同部会に対し)したとのことです。

基準額を620,000円まで引き上げるとすると、上記した【事例】では年金の支給停止は行われなくなり、従って、支給繰下げ待機期間において在職していた者(例えば、本来であれば65歳から年金の支給がある者が70歳まで働き続け、70歳の時点で年金支給の繰下げを申出た場合)については、その間、在職老齢年金の規定が適用されていたと仮定されて年金の支給が停止されていたものとみなされることで、当該部分については支給繰下げ加算額の対象にならなかった者が、基準額の引き上げにより、その対象になるということになり、支給繰下げのメリットを享受できることになります。
上記下線部分を図表にしたものが下方の図表(同省同局作成の「在職老齢年金制度の見直し(案)」の中から引用)になります。


 なお、最終的には、同省同局は、60歳以上64歳までについては、基準額を現制度(280,000円超)を470,000円超にすることで決着を得て、「年金制度の機能強化のための国民
年金法等の一部を改正する法律案」として第201回通常国会に提出し、令和2年5月14日時点では同国会会期中に可決成立する運びになっています。
となれば、「総報酬月額相当額」+「基本月額」の合計額が「支給停止調整額(との表現になります)」(令和2年度では470,000円)を超える場合には、その月分の老齢厚生年金については調整が行われます。また、算出された「支給停止額(月額)*4」が「基本月額」以上である場合には、その月分の老齢厚生年金の全部の支給が停止されます。
*4「支給停止額(月額)」×12=「支給停止基準額」と言います。
また、「支給停止額(月額)」を算出方法には4種類あると前述しましたが、法改正に伴い、その算出方法は(「総報酬月額相当額」+「基本月額」-「支給停止調整額(令和2年度では470,000円)」)×1/2 のみとなります。

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