年金受給資格期間短縮に伴う変更点等について


1.遺族基礎年金及び遺族厚生年金の支給要件
●遺族基礎年金の支給要件
【死亡した者の要件】
①国民年金の被保険者
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の者で日本国内に住所を有する者
③老齢基礎年金の受給権者(原則として、25年以上※の受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間)を満たしていなければなりません)
④老齢基礎年金の受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間)が原則として、25年以上※ある者
が死亡した場合に、一定の遺族に支給されるものです。
先ずは、前提になることを述べておきます。上記のうち①②は「短期要件」と言い、さらに、「保険料納付要件」というものが必要になります。
【保険料納付要件】
・死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」を合わせた期間が2/3以上あること。
OR
・死亡日が令和8年4月1日前であるときは、上記の要件を満たしていなくても、死亡日(当該日において65歳未満の者に限られます)の属する月の前々月までの1年間に「保険料滞納期間」がなければ「保険料納付要件」を満たすことになる というものです。

<「保険料免除期間」につき、ご留意いただきたいこと>
それは、全額免除の場合は除き、1/4免除・1/2免除・3/4免除いずれについても、免除された部分以外の部分、つまり、1/4免除なら3/4の部分、1/2免除なら1/2の部分、3/4免除なら1/4の部分については必ず納付済でなければならないということです。当該部分を納付していない場合は、すべてが未納扱い(ただし、「保険料の後納制度(平成30年9月までの時限措置)」を使うことで当該未納の(一部)解消に繋がる場合もあります)になる、つまり「保険料未納期間」になり、「保険料免除期間」としてカウントされず、上記「保険料納付要件」を満たせなくなってしまうおそれがあるということです。ご留意下さい。なお、人事労務トピックスにある「国民年金保険料の(特例)免除、納付猶予・特例制度等について」において、当該留意点に係る説明箇所がありますので、ご参照下さい。

本題は以下に述べることになります。
上記のうち③④は「長期要件」と言い、長期要件の場合には「保険料納付要件」は問われません。というのは、長期要件の場合には、原則として25年以上の受給資格期間を既に満たしているからです。

今般の、25年以上から10年以上という受給資格期間短縮措置がこの場合に当てはまるかと言えば、残念ながら、この場合には従前通りの原則として25年以上の受給資格期間があることが受給要件となっています。従って、死亡した者において、原則として25年以上の受給資格期間がなければ、残された遺族には遺族基礎年金は支給されないことになります。つまり、変更点ではありません。
なお、この長期要件の25年以上については、生年月日により加入期間が短縮される特例がありますので、注意が必要です。

【遺族の要件】【遺族基礎年金の年金額】等については、別ページに掲載しています。

遺族厚生年金の支給要件
【死亡した者の要件】
①厚生年金保険の被保険者(在職中)の死亡の場合
②厚生年金保険の被保険者であった間(在職中)に初診日がある傷病により、初診日より5年以内に死亡した場合
③障害厚生年金の1級又は2級の受給権者の死亡の場合
④老齢厚生年金の受給権者(原則として、老齢基礎年金に係る25年以上※の受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間)を満たしていなければなりません)の死亡の場合
⑤老齢厚生年金の受給資格期間(つまり、原則として、老齢基礎年金に係る25年以上※の受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間)を満たしていなければなりません)を満たしている者の死亡の場合

に、一定の遺族に支給されるものです。

先ずは、前提になることを述べておきます。上記のうち①②③は「短期要件」と言い、ただ、「保険料納付要件」に関しては、①②についてだけ問われます。
【保険料納付要件】
当該要件の内容は、遺族基礎年金と全く同じです。

上記のうち④⑤は「長期要件」と言い、長期要件の場合には「保険料納付要件」は問われません。また、③についても同じく問われません。というのは、③の場合には、障害厚生年金の受給権者になる際に「保険料納付要件(当該要件の場合、死亡日を初診日に読み替えていただけば結構です)」が問われているからです。さらに、④⑤の場合には、原則として25年以上の受給資格期間を既に満たしているからです。

遺族厚生年金についても、今般の、25年以上から10年以上という受給資格期間短縮措置がこの場合に当てはまるかと言えば、残念ながら、この場合にも当てはまりません。つまり、変更点ではありません。

【遺族の要件】【遺族厚生年金の年金額】等については、別ページに掲載しています。

2.寡婦年金の支給要件
寡婦年金は、国民年金の「第1号被保険者」である夫が死亡した場合に、当該夫の死亡当時、当該夫によって生計を維持され、当該夫との婚姻関係が10年以上継続していた65歳未満(夫の死亡当時、妻の年齢が60歳未満でも受給権は発生しますが、支給は60歳に達した日の属する月の翌月からとなります。その当時、妻が60歳以上の場合は、夫の死亡日の属する月の翌月からとなります。そして、65歳になった妻には老齢基礎年金が支給されることになるため、この寡婦年金は失権することになります)の妻に支給されるものです。
【死亡した当該夫の要件】
・死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者に係る「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」を合わせて10年以上ある夫が死亡した場合というのが要件のひとつになっています。
つまり、従前は25年以上でしたが、10年以上へと変更されています。
・死亡した夫が障害基礎年金の受給権者でなかったこと、及び老齢基礎年金の支給を受けていなかったこと。なお、法改正により、障害基礎年金については、老齢基礎年金と同様に、その支給を受けていなかったことに変更されます。つまり、受給権を取得したことがあっても、支給を受けていなければいいということになります。施行予定日は令和3年4月1日です。
【寡婦年金の年金額】
・夫が受けるはずであった第1号被保険者期間のみの保険料納付済期間と保険料免除期間に基づいて算出された老齢基礎年金の年金額×3/4相当額 となります。夫の第1号被保険者期間のみで算出することにご留意下さい。

3.国民年金の65歳以上の「特例による任意加入被保険者」の資格喪失
本件に関しては、人事労務トピックスにある 「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)(短縮用)について」において、平成29年8月1日時点で受給資格期間が10年未満の60歳以上の者については、それを10年以上にする方法のひとつとして解説しましたが、ただ、例えば、平成29年8月1日時点で当該期間が10年以上になっている場合には、平成29年8月2日付で「特例による任意加入被保険者」の資格を喪失することになります。というのは、当該制度は、65歳になっても受給資格期間の不足により受給権が得られない者に対する救済措置として設けられたものであり、従って、その受給資格期間の10年以上への短縮措置によって受給権を取得することができたのであれば、やはり、その翌日に当該被保険者の資格を自動的に喪失することになるからです。

4.厚生年金保険の「高齢任意加入被保険者*」の資格喪失
例えば、70歳以上の高齢任意加入被保険者が平成29年8月1日時点で受給資格期間が10年以上になっている場合には、平成29年8月2日付で「高齢任意加入被保険者」の資格を喪失することになります。
また、例えば、70歳未満の一般の被保険者の場合でも、70歳の時点で10年以上の受給資格期間を満たしている場合には、当然、70歳で厚生年金保険の被保険者の資格を喪失することになります。

本来、厚生年金保険の加入については、在籍中であっても70歳に到達すると被保険者の資格を喪失することになりますが、70歳の時点で受給資格期間を満たしていない場合には、満たすことになるまで70歳以上でも厚生年金保険に加入できる制度です。

5.任意脱退制度の廃止
老齢基礎年金の受給資格期間を満たせない第1号被保険者に限って認められきたものであるが、今般の、25年以上から10年以上という受給資格期間短縮措置に伴い、当該制度の存在意義が薄れたことから、平成29年7月31日をもって廃止となったものである。

6.65歳以上の厚生年金保険被保険者に扶養されている60歳未満の配偶者の扱い
●受給資格期間を満たしていない65歳以上の厚生年金保険の被保険者は依然、国民年金の第2号被保険者として扱われます。従って、当該被保険者に扶養されている60歳未満の配偶者は同第3号被保険者となっています。
●ただ、今般の、25年以上から10年以上という受給資格期間短縮措置に伴い、当該被保険者が受給資格期間を満たした場合は、当該被保険者に扶養されている60歳未満の配偶者は同第3号被保険者ではなくなり、当該配偶者は平成29年8月1日付で国民年金の第1号被保険者への「種別変更届」の届出が必要となります。

7.振替加算について人事労務トピックスにある「年金給付の経過措置について」において、その仕組み等につき解説しています。

【夫が年上の場合】参考図はこちら(振替加算の事例①)(7_1_1.pdf へのリンク)から
妻が65歳になるまでその夫に加給年金額が加算されていた場合(夫が年上)で、妻が65歳になった時点で老齢基礎年金の受給権がなく無年金になっていた場合(当然、振替加算の加算もない)で、今般の受給資格期間短縮措置により、平成29年8月1日以後に妻が老齢基礎年金の受給権を取得できるようになると、同時に振替加算が加算されます。

【夫が年下の場合】参考図はこちら(振替加算の事例②)(7_1_2.pdf へのリンク)から
夫に加給年金額が加算される状況になった場合に既に妻が65歳に到達していた場合(夫が年下)には、本来であれば、夫には加給年金額は加算されませんが、夫に加給年金額が加算される状況になった時点に、妻の老齢基礎年金には振替加算が加算されます。ただ、妻が65歳になった時点で老齢基礎年金の受給権がなく無年金になっていた場合では、そもそも振替加算は加算されません。しかし、今般の受給資格期間短縮措置により、平成29年8月1日以後に妻が老齢基礎年金の受給権を取得できるようになると、同時に振替加算が加算されます。

【振替加算が認められない場合】参考図はこちら(振替加算の事例③)(7_1_3.pdf へのリンク)から
今般の受給資格期間短縮措置により、平成29年8月1日以後に妻が老齢基礎年金の受給権を取得できるようになっても、夫に加給年金額が加算されていない場合((例えば、夫が特別支給(定額部分が支給される場合)の老齢厚生年金or原則支給の老齢厚生年金の受給権を取得した当時に、その妻が夫に生計を維持されていなかったために加給年金額の対象になっていなかった場合)には、そもそも妻には振替加算は加算されません。

●また、65歳より後に老齢基礎年金を受給できるようになった場合の「振替加算の特例」が存在します。老齢厚生年金等の受給権者に加算される配偶者に係る加給年金額について、その対象*になっていなかったとしても、当該配偶者(一般的には、妻)に、65歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合(この時点において、当該配偶者(一般的には、妻)が当該老齢厚生年金等の受給権者(一般的には、夫)によって生計を維持されていることが必要です)に、当該配偶者に振替加算が加算される場合があるというものです。ただ、当該特例はある意味限定的で、当該配偶者に、今般の、受給資格期間短縮措置により老齢基礎年金の受給権が発生する場合には、当該特例は適用されず、その場合にはやはり、当該配偶者が加給年金額の対象*になっていなければなりません。少し分かりにくい特例ですが、参考までに厚生労働省の「リーフレット」振替加算に係る特例(7_1_4.pdf へのリンク)を掲載します。ご参照下さい。

老齢厚生年金等の受給権者がその権利を取得した当時、例えば、特別支給の老齢厚生年金で定額部分の支給もある場合にはその支給開始年齢に達した当時に、報酬比例部分のみの場合には原則支給の老齢厚生年金(65歳から支給されるもの)の受給権を取得した当時に、加給年金額の対象者(配偶者)がいればいいということです。つまり、その当時に、当該受給権者によって生計を維持されていることが必要だということです。これが基本です。ただ、そうではなく、当該「振替加算の特例」の意味するところは、老齢厚生年金等の受給権者がその権利を取得当時においての生計維持要件を求めているのではなく、当該加給年金額の対象者である配偶者(一般的には、妻)が老齢基礎年金の受給権を取得(受給資格期間短縮措置により老齢基礎年金の受給権を取得した場合は除くもので、その場合には、老齢厚生年金等の受給権者がその権利を取得した当時の生計維持要件が求められるというわけです)した当時において生計維持要件が満たされていればいいというものです。

これについては、人事労務トピックス「配偶者の加給年金額について」の中で説明しました「退職時改定」に係る「事例」に関連して追記しておきたいことがあります。それは、
老齢厚生年金等の受給権者に加給年金額が加算されるには、当該受給権者につき、その被保険者期間の月数が原則240以上なければなりませんが、仮に、その受給権を取得した当時に被保険者期間の月数が240未満であったとしても、その後「退職時改定」がなされたことにより被保険者期間の月数が240以上となるに至った当時に、加給年金額の対象者(配偶者)がいれば、つまり当該配偶者が当該受給権者によって生計を維持されていれば、その時から加給年金額が加算されることになるというものです。
なお、弊職が作成した表である「退職時改定等の事例」(PDF)(7_1_5.pdf へのリンク)をご参照いただくと理解が深まるものと思います。

といったことが受給資格期間短縮措置に伴う変更点等となります。ご確認下さい。

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